その16
祭を見つめるメイに朱雀が言う。
「答えが欲しければ、自分でたどり着け、小娘」
「もう、たどりついてます。だから答え合わせを」不遜な微笑みを浮かべるメイ。
「たどりついただと? まだ半分にも満たないではないか」
「4割程度はたどりついているのですね?」
「うぬぼれるな! そもそも開くのはミコトに…」
「朱雀!」
玄武に叱責され、黙り込む朱雀。
そこに鈴露とミコトが戻ってきた。
「わあ。かわいいぬいぐるみね」ミコトからぬいぐるみを受け取り撫でまわすメイ。
「まだ、あったのね…」祭も懐かしそうに笑う。
「そうだわ。朱雀さまたちが質問に答えてくださらないようなので、これを渡しがてら、若青龍さまに直接おうかがいしてきます」
「ま、待って、メイちゃん。龍おじさまから、祭壇には近づかないように言われてるの」
「龍の宮殿には、西園寺の人間は誰も逆らえまい」朱雀が言う。
「それは祭ちゃんが言われたことでしょ? 私、言われてないから」
メイは祭をじっと見つめると、祭は戸惑いの表情を見せた。
「俺も言われてない」ニッコリ笑うミコト。
「じゃ、行きましょ。私、まだ翔太さんと紗由さんにご焼香してないし」
メイはミコトの腕を引っ張り、部屋を出ていった。
鈴露が二人の後を追おうとすると、玄武が止める。
「黄龍の若宮殿。あなたさまは、ここに」
「そうだな。追うほどのことではない」白虎が言う。「そんなことより、ネコ缶の時間であろう」
「先ほど食べたばかりなのでは」鈴露が思わず突っ込む。
「羽童以外の物に入るのは消耗するのだ」
“でも、びゃっこちゃんが消耗するわけじゃないから…デブったら、ごめんよ”
「承知しました」
祭がネコ缶を開けると、びゃっこちゃんは大きく、にゃ~んと鳴いた。
* * *
祭壇がある部屋の手前の廊下で、メイは立ち止まった。
「どうしたの、メイさん?」
「ミコトさんは、若青龍さまに何を言うの?」
「ありがとうございます。かな…」
「ありがとう? ミコトさんが清流旅館にいられなくなった諸悪の根源じゃない」
「違うよ」
「何が違うの? みんな、いろいろな形で苦しんで…それを終わらせたいから、私が呼ばれたんでしょ? ミコトさんを開いて、若青龍さまを伊勢に戻す。それが目的なんでしょう?」
「…悪いけど、その目的は、俺が作ったものじゃない」
「え?」
「最初は俺も、祭に何をしたんだって思って動揺してたけど、メイさんといろいろ話しているうちに、少しずつクリアになってきたんだ」
「どういうこと?」
「若青龍さまと話し合いたい」
「何を話し合うの?」
「古の青龍さまが戻ってきた時に、若青龍さまも残って、一緒に清流旅館を守ってもらいたいんだ」
「ま、待って。今までの流れで、何でそうなるの?」慌てるメイ。
「…さっきから、このドラゴンを手にした時から、じいちゃんと、ばあちゃんが、そう言ってる」
「はあ?」
「聞こえるんだ…これが久我家の能力のひとつで通称“耳”っていうんでしょ?」
「ええ、そう。深潮おばさまの得意技」
“ミコト。私の“鼻”も使って”
「…真里菜おばさんの声だ…匂いでいろいろ判別できるんだね」
「聞こえるのね…今の声は、真琴おばさまを介して通信してきてるの。あとは、史緒おばさまに質問すれば、ご宣託を書で下ろしてくれるし、私の調べだと、奏子おばさまは石を使う力が強くて、咲耶おばさまは書に添える印で、書の力を強めたりできたはず」
「メイさんが調べたの?」
「私もミコトさんと同じで外に出されていたし、力を封じられていたし、そういう教育を直接受けてはいないの」
「西園寺に力の強い人が増えると文句言われるから、海外に留学させられてたの?」
「簡単に言えば、そう。弟も幼い頃からアメリカ暮らしだし」
「でもって、教育されてもいないのに、俺のこと開けって言われちゃったんだ…ごめんね」
「ううん。正直、鈴露に頼まれた時は、わけわかんなかったけど、私は自分なりに向こうでブラッシュアップを図ってたから」
「じゃあ、封じられた力が開いてるんだね」
「そうなのかしら…?」
メイは、今の自分の力の質が、西園寺家由来のものなのか、今一つ実感できなかった。
「じゃあ、封印解かれたら、すんごいことになっちゃうのかな」笑うミコト。
メイは“封印”という言葉に引っかかりを覚えた。
“ミコトさん、力がないんじゃなくて、封じられていたんじゃ…? 元々何の力もない人間が、真里菜おばさまのメッセージをすぐに受け取れるものかしら”
「とにかく、話をしに行こうか」
ミコトはメイの手を取り、祭壇のある部屋に入った。
* * *




