その14
メイは、丘を降りながらミコトに尋ねた。
「ミコトさんはこの後、若青龍を自分の体に入れて伊勢に行くつもりなの?」
「そう思ってたんだけど…やめる」
「どうして?」
「若青龍さまに納得してもらわないと意味ないのかなって。ちゃんと話を聞いて、どうすればみんなが幸せになれるか考えたいっていうか…」
「やっぱりミコトさんは翔太さんと紗由さんの孫ってことね」笑いだすメイ。
「う、うん」
「ミコトさんが言う“みんな”の中には、若青龍さまも入ってるってことよね」
「60年はうちを守ってくれてたらしいし…」
メイは思った。
“ミコトさんなら、若青龍さまを説得できるのかも…でも…それって、翔太さんと紗由さんにも出来なかったことなのよね…長年、付き合いのあったお二人にも出来なかったこと…”
「どうした、メイ。考え込んで」
鈴露が尋ねると、メイは少しごまかしたように返事をした。
「え…あ、うん…ミコトさんが伊勢に行かないとしたら、ジェット機の人たちって…」
「俺のこと追いかけてったんだっけ…呼び戻した方がいい?」
メイに聞くミコトを見ながら、鈴露はくすりと笑った。
「何がおかしいのよ、鈴露」
「ジェット機じゃなくて…いや、いい。大丈夫だろ。着いたら連絡あるさ」
“僕が俺になってるんだよなあ”
「怒ってるかなあ…」声が小さくなるミコト。
「駆おじさんも深潮おばさんも心配してたからなあ」
「いや。そうじゃなくて、若青龍さまだよ」
ミコトの言葉にメイがため息をつく。
「ミコトさん。そもそも、若青龍さまを清流旅館から追い出したがってたのは、あなたじゃなくて、周りの能力者たちなのよ」
「俺が体と心を乗っ取られずにいたら、よかったっていうか…」
ミコトの言葉に、さらにため息をつくメイ。
「だったら、いっそ、ミコトさんが若青龍さまを乗っ取って、やんちゃをやめさせればどう?」
「そっか! それがいいよ、メイさん! 俺がそう出来るようにして」
「え?」
「メイさん、顔がキレイなだけじゃなくて、頭もいいんだなあ」
「…本気で言ってるの?」
「うん。西園寺の女性はもれなく美人だよ。なあ、鈴露」
「えっと…」困り顔のメイ。
「その発想はなかったよ」笑う鈴露。
「祭だって西園寺の血を引いてるんだぞ。美人だぞ」
「だから、そっちじゃなくて、おまえが青龍さまを乗っ取るって話」
「“命”さまたちは、そういうのできないのか?」
「聞いたことないな」答える鈴露。
「でも…ミコトさんの体に入った時に、意識を乗っ取られないようにして、逆にこちらの考えを相手にインストールするとか…」
「インストールか…」
「あー、でも、相手が納得してくれてということになると、洗脳…かしら」
「俺、洗脳なんて、したことないなあ」
「普通、ないよ」
「そうだわ。祭ちゃんに泣き落としてもらえばいいんじゃない?……あー、ダメだわ。相手は筋金入りのストーカーなわけだし…」
そうこう言っているうちに、清流旅館の玄関に到着する3人。
玄関を上がろうとする鈴露にメイが問う。
「鈴露。今日、これからミコトさんがどういう一日を過ごすか、読んでくれない?」
「え?」足が止まる鈴露。
「清流旅館がどうとかじゃなくて、ただの占い。どう?」
「…“命”の力は、そんなことのために使うものじゃない」
「そうよね…。“命”でない人に聞けばいいんだわ」笑顔で玄関を上がるメイ。
「誰に何を聞くの?」
ミコトの問いかけに、メイはニヤリと笑った。
「その前に、直接、四神さまたちに、3つ質問をするわ」
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