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その12

 メイはミコトの話を聞きながら、どんどんわけがわからなくなっていた。

「つまり、ミコトさんは、4年に一度の“赤子流怒”の際には当主のお手伝いで、舞を舞っていたんですね」

「はい。清流んちの子供は、祠で当主と一緒に踊ることになってて、6歳くらいから踊ってました、じいちゃんと父さんと僕と祭で」

「で、踊っていると、いろいろ聞こえたり、見えたりしていた」

「今にして思えば、四神ですね。青龍さまは難しい言葉をしゃべっていて…祝詞なのかな、そんな感じの」


「それがわかるって、力が開いてるってことなんじゃないんですか?」

「そうなんですか?」驚くミコト。「でも、家の者はみんな、じいちゃんやばああちゃんの不思議な力について聞いても、はぐらかすだけで答えてもらえませんでした」

「それはその…夢遊病みたいな症状が出る前からですか?」

「はい」


「うーん…じゃあ、私に開いてくれと頼んだ力って何なのかしら?」

「うーん」

「何か特別な力なのかしら。今までの能力者たちとパターンが違うというか」

「うーん」

「でも、ほとんどの種類の力を清流旅館の方たちは持ってるのよね…“写”の一門である西園寺家の力を色濃く継いでいる紗由さんがいたわけだし、久我や九条の血も入ってるし。そもそも、翔太さんは旅館の当主としては最上級クラスの力なわけですよね。何が足りないって言うのかしら…」


「メイさん、誰に頼まれたんですか?」

「鈴露ですけど」

「じゃあ、鈴露に聞きましょう」

「でも…」

「メイさん、鈴露のこと、なんかおかしいと思ってるんですよね」

「ええ…まあ」


「鈴露の目的は、祭と結婚することですよね。僕が若青龍さまに乗っ取られないようになって、旅館を継いで、それで祭を嫁にもらうこと。だったら、僕が困るようなこと、しないと思うんですけど」

「…そうなんですけど」

「何が疑問なんですか?」

「ちゃんと話してくれないっていうか…そう。そうです! ミコトさんに対して、不思議な力のことを話してくれなかった清流の人たちみたいというか…」


「だったら、ミコトが言うように直接俺に聞けばいい」

「鈴露!…あなた、清流旅館を出られたの?」

「え?」

「だってさっき、若青龍さまに入られてたじゃない。それだと旅館の外に出られないんじゃ…」

「追い出した」

「はあ?」

「グループが違うからな。間違えてますよって感じだな」

「ふーん」呆れるメイ。「じゃあ、あなたに聞くわ、直接。全部ちゃんと説明して」


「ムリだ。言ったろ? グループが違うんだ」

「ミコトさんの何をどう開くのかわからないのに、開けないわよ」

「誰にもわからないんだ。あるのは西園寺華織の宣託のみ。わかるんだったら、龍の宮さまをはじめとする“命”たち、その奥方たち、そして翔太じいちゃんや、紗由ばあちゃん、悠斗さんや、華音さんたちがやっている」


「ミコトさんが、西園寺華織の宣託どおりに開いたということを、どうやって確認するの?」

「ミコトがそう感じれば、開いたということだ」

「わかるかなあ…」首を傾げるミコト。

「これ、若青龍さまからの伝言だ」

 鈴露が半紙を差し出すと、メイがそれを取り上げる。


「これって…」

 戸惑うメイに、にっこり笑う鈴露。

 ミコトはメイの手から半紙を取り、じっと見つめた。

「跡継ぎが死ねば、解決するんだ。それってつまり…」

 ミコトが鈴露を見ると、鈴露はただ、こくんとうなづいた。


  *  *  *



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