その11
メイは、自分が書きつけたメモを見て言葉に詰まった。
「これは…」
「メイさん?」
「史緒さんのお力で、メッセージを下ろしていただいたんです」
「おばあさまの?」
驚くミコトにメモを差し出すメイ。
“箱は隠せ ミコトが開くまで開けてはならない”
「鍵はどうしたらいいんだろう」
「我が底に押し入れろ」
羽童が再び胸ポケットから姿を現した。
「底?」
「足側から鍵を入れろ。預かっておく」
言われたままに、鍵を羽童の足側から押し込むミコト。
なぜか、ずぶずぶと中に鍵が入っていく。
「うわあ…物理法則、まるっと無視してるんですけど」
「量子物理学的な何かかなあ」
「箱は宝物入れに隠そう」
「あ。祭ちゃんだわ。私たちを探してる」
「じゃあ、祭の気を引いて置いて。隠してくるから」
「わかったわ」
メイは祭に向かって走り出した。
「祭ちゃーん!」
「メイちゃん! どうしたの、いったい…」
「それが…」
言葉が続かないメイ。
“どうしよう。やたらなこと言ったら、ミコトさんの言うこととちぐはぐになるかも…”
“メイちゃん。真里菜よ。深潮の“耳”を貸すわ。声をよく聞いて、そのまましゃべって”
“…はい”
「どうしたの?」
“箱を盗まれたようなの”
「箱を盗まれたようなの」
「盗まれた?」
“ミコトさんと二人で後を追ってきて…”
「ミコトさんと二人で後を追ってきて…」
「おにいちゃんは?」
“向こうを探しているわ”
「向こうを探しているわ」
その時、ミコトがこちらに走ってきた。
「メイさん! 祭!」
「おにいちゃん!…どういうこと、箱を盗まれたって」
「部屋に戻ったんだけど…男女二人が箱を持って外へ走り出して…」
「そ、それでここまで来たの」メイがうなづく。
「何でそんな…」戸惑う祭。
「私、もうちょっと探してみるわ」
「うん。そうだね」
「じゃあ…私は鈴露さまにお伝えしてきます」
「わかったわ。また後で」
丘を駆け下りていく祭。
ミコトはその後姿をじっと見つめる。
「ミコトさん…」
「あ…すみません。祭に嘘ついちゃったなって…」
「ごめんなさい!」頭を下げるメイ。
「メイさんのせいじゃないです。ただ…ばあちゃんの言葉を思い出しちゃって」
「紗由さんの?」
「はい。子供の頃、テレビで“嘘ついたら針千本のーます”っていうのをやってた時に、ばあちゃん言ったんです。“私は何万本飲むのかしら”って」
「何万本? そんなに嘘をついたってことですか?」
「僕もそう思って聞いたんです。ばあちゃんは笑って僕をぎゅってしてくれて…でも、何となくその時、僕のせいかなって思いました」
「そうだったんですか…」
「僕は祭のためにそこまでできるだろうかって…」
「できるんじゃないですか」
「メイさん…」
「今、私たちがついた嘘は、きっと祭ちゃんを救います」
「それも、おばさんたちの力が伝える言葉なんですか?」
「…ミコトさん、それがわかってるんですか?」
「ええ、まあ」
「だって、ミコトさんは力が開いていなくて、それで若青龍さまに体を使われて、だから東京に行ってたんですよね?」
「あ…はい」
「力、あるじゃないですか。それとも、ここ何時間かで開いたんですか?」
「いえ。子供の頃から、4年に一度はいろいろ聞こえたり、見えたり」
「もう少し、詳しく聞かせてください」
メイは、ミコトににじりよった。
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