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ラフィンツヴァルの魔獣  作者: ここなっと
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プロローグ

はじめまして、そして知っている人はどうも、ここなっとです。別のWeb小説投稿サイトで存在するここなっとと同一人物です、たぶん。そっちは1年近く休止してるけど。(ならなんでこっちにいるねん!って突っ込みはなしで)


今回、小説家になろう!で初投稿させていただきます。更新はぼちぼちやれたらなあ、と思ってます。ちょっと1年間忙しくてろくに執筆なんてやってないから腕は間違いなくなまってるけど(そもそもなかったけれども………!)、アイデアは出てくるんで今回はそのうちの一つを書いてみよう、と思った次第です。拙い文章ではありますが、楽しんでいただけたら幸いです。

「へへっ、姉ちゃん、俺たちと遊ばない?」


曇った夜のラガニアの街の一角、人通りの少ない通りを歩いていた少女に突然、そんな声がかけられる。驚いた少女は思わず立ち止り、正面に立つその男を見た。そのへらへらした男は20代半ばから後半にかけた、いかにも遊んでいます、といった感じの風貌だ。両耳にイヤリングをし、両手には大量の指輪。薄ら笑いを浮かべているその顔は、まさに獲物を見つけた肉食動物だ。少女は思わず、一歩後ろに下がる。本能的な恐怖を感じたからだ。そのまま振り返り、走り出そうとした。


「おいおい、どこいくつもりだよ?」


すると、いつの間にか後ろに立っていた巨漢にその動きを遮られた。2メートルを悠に超えるだろうその長身は、分厚い筋肉で包まれている。頭はスキンヘッドで、素顔はサングラスに遮られていて見えない。だが、一見するだけでその男は少女では到底どうにかできるような相手には見えなかった。すぐさま少女は身を翻し、手に持っていた鞄をへらへらした男に投げつける。それで目くらましをしている間に脇を通り抜けて逃げ出そうとした。


「こらこら、荷物は大事にしないと、なあ?」


それに対するへらへらした男の反応は、単純なものだった。投げた鞄を何事もなく受け止め、そのまま少女の動きを目の動きだけで牽制した。そして鞄を投げ返す。少女はそれに反応できず、体で受けた。


「………何か御用ですか?」


地面に落ちた鞄を拾うことなく、少女は言葉を紡ぐ。その声ははっきりと震えていた。


少女にとって、この道はなれた道だった。人通りこそ少ないものの、それゆえに誰かとすれ違うことなんてなく、自分の家へとまっすぐ帰れたのだから。今回はそれが仇となった。人通りが少ないからこのような男たちが待ち伏せを行い、自分が引っかかってしまったのだから。


「だからさあ、俺たちと遊ぼうって言ってるのよ」


正面に立つ、へらへらした男が態度を崩さず少女に近寄る。


「お断りします」


それに対し、少女は凛とした態度ではっきりと断る。そのまま荷物を拾い上げ、スタスタと男の隣を通り過ぎようとする。が、当然男はそれを遮った。


「いやあ、実際のところそちらの返答わかりきってるのよ?そら断るよなあ」


薄ら笑いをやめず、男が少女の肩に手をのせる。


「だからそちらさんの答えなんてどーでもいいわけ。俺たちが勝手にそちらさんで遊ぶんだから」


それを聞いた少女は男を突き飛ばす。男はあっさりと押し返され、道が開けられた。その道を少女は荷物を放り投げて走る。


「みなさーん、そちら行きましたよー」


すぐさま男が声を張り上げる。すると道の脇から数人の男が現れた。少女は思わず足を止め、反対に走り出そうとする。が、そちらにもへらへらした男のほかに、屈強な男がいる。


「誰か、誰か助けて!」


少女が叫ぶ。それを聞いたへらへらした男はやれやれと言わんばかりに肩をすくめる。


「ここはほとんど人が通らない。それは自分がよく知ってるんじゃないの?」


だから君を待ち伏せてたんだし、と男は何気もなく言ってのける。それはこの襲撃が計画されていたものだと暗に告げていた。その間にも男たちはゆっくりと少女との距離を詰めていた。


「誰か、誰かあ!」


次第に少女の声が涙声になる。その声を聞いた男たちは愉しそうに嗤う。


「誰も助けになんてこないよ」


そしてついに、へらへらした男と少女との距離が零になる。


――オオォォォ


その途端、決して人のモノではありえない雄叫びが場を揺るがした。その声に男たちは驚き、周囲を見渡す。少女は、ほぼ無意識にその場を駈け出した。


「っ!?捕まえろ!」


とっさに男の中の一人が叫ぶ。すぐに別の男が反応し、少女に手を伸ばす。


「オオォォォォォ!」


「がっ!?」


しかし、その手が少女に届くことはなかった。少女と男との間に黒い何かが割り込み、男を吹き飛ばしたから。少女はそのことに気付かず、闇夜へと姿をくらました。


「おい、何やってる!」


へらへらした男は顔つきを変えると、吹き飛ばされた男へと近寄り、思い切り蹴飛ばした。その男の眼には間に割り込んだ影が見えなかったのである。それも無理はない。もともと明りが乏しく、十分な視野が確保されていないのだ。そこに黒い影が突如として割り込んできたことを見逃すのは当然のことである。


「オオォオ!!」


「な、何か、いる………」


吹き飛ばされた男がとぎれとぎれにそれだけを告げる。それを告げるだけでひどく苦しそうだ。それを確認した男は表情を消し、少女が逃げた方向を睨む。その際に小さく、悪い、と謝った。どうやら蹴飛ばしたことに対する謝罪らしい。


「オオオォォォ………」


そしてそれを見た。闇にまぎれ、ほとんど視認できないそれを。唯一、闇夜に輝く緑色の相貌を確認して。


「魔物、か?なんでこんな町中に」


男は懐からナイフを取り出して構えながら呟く。他の男もそれに倣う。


魔物。それは生命が魔力を帯びて進化をした結果、生まれたと言われる生命体だ。その様式は多岐にわたり、すべてを把握しきれてはいない。そもそも魔力とはなにか、すら解明されていないのだ。それがわからずに魔物の解明が出来るはずもない。なお、人間も分類上は魔物に入る。魔力を変換し、魔術を扱うことが出来るのだから。


もっとも、魔術はそこまで使い勝手のよいモノではない。複雑な手順を踏んで、ようやく発動させることが出来る奇跡なのだから。一部の魔術ではその手順を省けるための魔道具が発明されているため、日常的に使われているものではあるのけれども。


それに対し、魔物は人間には必要な複雑な手順を踏むことなく、魔術に等しき力を発することが出来る。等しき、というのはほぼ間違いなく魔物が発動した魔術は人間の扱うそれに大きく劣るからである。ほぼ間違いなく、なのはごく少数ながら例外も存在するからである。それでも即座に発動させる魔術は人間にとって脅威にしかならない。男たちもそのことを理解していて、視線を通わせ同時に魔物へとナイフを投げる。これなら魔術を発動させたところで何発かは当たる。そう確信して。


「オォ」


その確信は正しかった。突如現れた魔物は一切の回避行動や、魔術を発動させることもなくすべてのナイフを受けた。


「やっぱただの獣じゃねえか」


最初に少女に話しかけた男が再び薄ら笑いを浮かべる。この魔物は脅威ではない、そう判断して。


カランカラン


その音でその笑みは凍りついたが。理由は単純。投げたナイフが一本たりとも魔物には刺さらず、すべてその体表で弾かれた。魔物は傷一つ負うことなく、悠然とそこにいる。


「オオオォォォォ!」


その魔物が雄叫びをあげる。その途端、雲の切れ間からわずかに月光が差し込み、その魔物の姿を露わにした。体長3メートルほどの、漆黒の鱗に覆われた蜥蜴。ただし、その背中には蝙蝠のような翼が生え、頭には2本の鋭い角がある。それは蜥蜴ではなく、もっとふさわしい名があった。


「ドラゴン………!?」


男の中の一人が悲鳴のような声を出す。それもそのはず、魔物の中でもドラゴンは最悪、と呼ばれているのだ。魔術の威力は人のそれを軽く凌駕する例外であり、肉体も堅牢、知能も人を超えるとまで言われている。唯一の救いはその数が非常に少ないことだろうか。それ以外の弱点らしき弱点が存在しない、生態系の頂点と呼ばれる魔物、それがドラゴンである。


「オオオオォォォォォォ!!!!」


男の悲鳴に応えるようにドラゴンが大きく吠える。その瞳はまさに、狩人のそれだ。


「逃げろおぉぉぉ!」


誰かが叫ぶ。その声に反応したドラゴンは、他の誰かが動くより先に、一瞬で声を出した男との距離を詰め、吹き飛ばした。それを見た他の男は身動き一つできない。動いた瞬間、今度は自分の番だと本能的に理解させられてしまったから。それに対し、ドラゴンは緑色の相貌を爛々と輝かせ、再び吠える。


――その日、ラガニアのスラム街を牛耳っていた組織の幹部の1人が5名の部下と共に街の自警団に捕まった。全員、裏路地で大怪我を負い、倒れていたところをたまたま通りかかった人が通報したのだ。そこに現れた自警団の人がその男たちの顔を確認、逮捕へと至った。その中で、自警団はどうして倒れていたのかと訊問したところ、全員がドラゴンにやられたと答えた。その答えを自警団は全員、首を傾げて聞いた。ただの冗談として受け止めたのだ。


なぜなら、ドラゴンと対峙したのにも関わらず、怪我人6人に対し、死者0人となったから。本当にドラゴンと対峙したのならば、怪我人0人、死者6人になったはずだと。第一、山奥を住処とするドラゴンがこんな町中に現れるはずないと。最初は誰もがそう思った。


同じ証言をする人が何人も現れなければ。しかも、その全員が何かしらの犯罪歴を持っていて自警団が追いかけていた人ばかりだった。

とりあえずプロローグはこんなもんです。ちょっと短い気もするけれど、まあ最初だしいいか。修正個所や補足部分があれば更新します。更新は常時未定、前書き後書きは書いたり書かなかったりします。

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