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プロクラトル  作者: たくち
砂の世界
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王都ラピリア 3

 ラピリア城

 王都の中心に建つこの白亜の城は周囲をオアシスに囲まれている。

 城へ入るには南側にある関所に入城料を支払い、オアシスにかかる橋を渡り入城する。


 ラピリア城には王族が住んでいるが、城の1階の1部は一般開放されており、記念品などの売場などが設置されている。

 地下1階と開放されていない1階部分には兵士が常駐し、事務仕事をし地下では練兵場で訓練をしている。

 そんなラピリア城に入城しようとする若者が1人


「いやー、近くで見るとホントデカイな」


 黒髪の青年シンである、レベッカから聞いたミアリスの指輪を求めてやって来たのだ、入城料を払い橋を渡っている。ちなみに入城料は酒場での仕事が終わりレベッカさんにお礼とお別れをする時に「持ってきな、大事にするんだよ!」と言われ銀貨10枚も貰えたのでそれで支払いをした。


(レベッカさんには世話になってばっかだな)


 大柄だが優しいレベッカさんに感謝しつつ、ラピリア城へ足を進める。王城だけあって身体検査などを受けつつ城の中に入り、目的の店舗を探す。


(王城って言うから堅苦しいとこを想像してたけど、結構雰囲気は明るいな、ラピス人の特徴なんだろうか?)


 しばらくは歩き回るとそれらしき店舗を発見する。

 見つけた店舗には黄金色に輝く指輪が並べられていた。指輪には宝石は付いておらず、少し歪な形をしていた。


「ミアリスの指輪ってのはこれの事か?」


「観光の方ですか?そうです。こちらがミアリスの指輪でございます。お1つで金貨5枚になります。材料にはラピス特産のアルツ鉱を使用しているんです。」


「そうなんですか、ちょっとさわらせてもらっても良いですか?」


 許可を貰えたので、手にとってみるシン、本物かどうかわからないので、ノアに確認をしてもらう。


「ノアどうだ?これがミアリスの指輪らしい」


(ふむ、確かにこれは砂の証で間違いなさそうだ、でもおかしいな、この指輪何か足りない気がする)


「何か足りない?どういうことだ?」


(なんだろう、はっきりはわからないけど形から察するにもう片割れがあるんじゃないかな?)


 このノアとの念話だが、ノアからは頭の中に直接語りかけられるが、シンからは口に出さなくてはならない、その為店員から変な目で見られてしまう。だが店員はシンの言葉からシンの知りたいことを答えてくれる。


「お客様、ミアリスの指輪は2種類ございます。この販売されている指輪はこの砂の世界共通ですが、もう1つの指輪は王族に認められたものが褒美として送られる物になります。」


 何てことだ、証として機能させるには王族に認められないといけないらしい。当然シンは旅人なので王族の知り合いなどいない。


「まずいな、ノア何か他の方法ってないのか?」


(いや、ボクは知らないし、多分だから他の方法はないだろう)


「仕方ない、王族の方は後回しにして取り敢えずこの片割れを目標にしよう」


(そうだね、少しずつ手に入れていこう)


 そう結論を出し、店員に指輪を返し王城を後にするシン、しかし周りからは1人でブツブツと何かと会話をしているようにしか見えない怪しい男シンは店員から怪しまれ、通報を受けた城の兵士に連行されてしまったのだが、尋問や身体検査でも何も危ないことはなかったので開放されるが、場内の者からは可哀想な目で見られてしまっていた。


*******


 王城から出てきたシンはベンチに座りこの後の行動に付いて考える。


(しかし金貨5枚かどうやって稼げば良いんだか、地道に仕事したんじゃ、時間がかかり過ぎるが、高額の討伐依頼をこなしていくのが1番早いんだが酒場で見た限りは、良いやつがなかったな)


 そう酒場では、依頼があるにはあるがこの王都の周辺は基本的に安全地帯なので、魔獣の類いはほとんどいないのだ。

 いても、デザートラットなどの小型で大した脅威ではない魔獣のみであり、その程度ならば王都周辺の衛兵たちが処理してしまう。


(赤姫は確か多額の報酬で、この国に雇われてんだよな、俺も傭兵やるか?いや、赤姫は有名だから報酬も多いのか、俺は無名だし戦場でも使い捨ての扱いをされそうだ、戦功も上げづらい上に死ぬ可能性があるやめとこう)


 一瞬妙案だと思ったが、この考えは止めておく考えているうちに夜になってしまったのでこの日は宿に泊まることにした。


*******


 次の日、今だどの様に金を稼ぐか考えながら路地を歩いていると、深く考えていすぎた為、適当に道を歩いてしまった。

 気付いた時にはもうどこにいるのかわからなくなっていた、そう迷子になってしまったのだ。


(まずいな、完全に迷った、しかも人がいない裏路地ってやつか?)


 道に迷っているのがわかりながら、またも適当に歩いてしまう、基本的に楽観的な思考をしている為、何とかなるだろうと考えてしまうシンなのだ。

 しばらく歩いていると、人影を発見する、しかし路地の奥に向かってしまう、慌てて追いかけて行く


「ちょっと待ってくれ!道に迷ったんだ」


 急いで追いつき肩を掴むシン

 姿を確認するとそこにいたのは茶色い短めの髪を後ろで纏めていた少女だった。


(子供だったか、まずい力を入れ過ぎだ)


 焦りもあって強く肩を掴んでしまっていた、子供にはやり過ぎてしまっている。しかしシンはすぐ違和感に気付く。


(何だ?強く掴んでしまったのにびくともしない?)


 強く掴んでしまったがこの少女は少しも姿勢が変わらずそのまま立ち止まっている。違和感があったがシンはそのまま話しかける。


「すまない、無理矢理引き止めてしまって、痛かったろう?道に迷って焦っていたんだ」


 謝るシンであったが、少女は振り返り眠そうな琥珀色の瞳を向け、小さな声で呟く。


「私の邪魔をしないで」


 先ほどから感じる違和感を疑問に感じつつ、返事をしようとする。


「ああ、悪い邪魔をしたな、君はこの辺りに詳しいか?ちょっと道を教えてくれないか?」


 しかし、少女の返答はシンの聞きたかったことではなかった。


「邪魔しないで」


 短い返答の瞬間、少女の雰囲気に異変を感じるシン、身の危険を感じバックステップで距離を取る

 

「ッなんだ!」


 バックステップした瞬間少女から光が走った

(なんだ何が起きた?)

 距離を取ったシンは頬に痛みを感じる

(頬が切られてる?どういう事だ?)

 落ち着き、再度少女と対面するといつの間にか少女の右手には身の丈以上の片刃の大剣が握られている


(あんな大剣さっきは持ってなかったぞ、いつの間に取り出したんだ?しかもあんな大きな剣使えるのか?)


 目の前の光景に違和感を感じるシン


(これは、まずいな声を掛けるんじゃなかったな、街中で戦闘はしたくない、さてどうやって逃げるか)


 逃走を決め頭の中でシュミレーションをする。


(あの大きな大剣じゃこの路地では上手く戦闘は出来ないはず!後ろに逃げるんじゃなく、向かって行きながらだな、あの大きさなら1度攻撃をかわしたら隙ができるはずだ)


 そう考え少女に向かう、シンが向かってきた事に少女は驚いたのか、眠そうにしている目が少し開く。


「ん」


 やる気の無いような声を出し、右手には持つ大剣を横に振る、小柄な体からは想像できない速さの振りに驚くが、高くジャンプする事で回避をする。

 ジャンプの落下の勢いで振り切られた大剣を蹴り飛ばし、更に蹴りの勢いで少女の側面に回り込む。

 大剣を蹴り飛ばされた少女は体勢を崩し、蹴られた大剣に振り回され回転する


(よし!このまま走り抜ける!)


 少女の体勢が崩れたのを確認し、前を向き走り出す。


「ッうぉ!」


 しかし走り出そうとするシンの目の前のにはいつの間にか出現した、様々な形をした無数の剣が宙に浮きながら、シンの行き場を無くしている。

 慌てて横に飛び、剣から離れるシンであったが、その飛び込んだ先には体勢を整え大剣を振り抜こうとする少女がいた、シンは振られてくる大剣に反応出来ない。

 死んだ、そう思った瞬間思いもよらない音が聞こえる


「グゥゥー」


 何があったのか、シンは理解出来ない、目の前にいる少女は大剣を振りかぶったまま、固まっている、同じく固まってしまっているシンに少女は小さな声でポツリと呟いた


「・・・おなか、すいた」


「・・・ごはん奢ろうか?」


「うん、食べる」


 冷静になったシンの目に入ったのは、少女の左手首に刻まれた大剣をモチーフにし8と刻まれた紋章だった

 これが、無の代行者シンと赤姫副団長序列8位ナナ・イースヴァルの出会いであった。

  

 ナナとの戦闘の後ご飯を奢ると約束したシンだったが、もともと道に迷っていたのだ、どこに飯屋があるのかとまた迷っていまっていたが、途中からナナの「匂いがする」と言う言葉を信じその通りに道を進む。

 すると本当にいい匂いがしてきたので急いで進むと記憶にある建物が見えてきた、そしてそこにはレーベル亭と言う看板が立ててあった。


「おや?シンじゃないかい、しかもこりゃまたすごい子を連れてるもんだ、国滅のナナじゃないか」


 どうやらこの茶髪の少女は国滅のナナと言うらしい、その戦闘では魔術により剣を作り出し戦う魔戦士だそうだ。

 なるほど、いきなり剣が出てきたのは、剣をその場で作っていたのか。

 しかし魔術を使えるのか


 この世界にも魔術を使えるものは存在するが、ほとんどの人は魔術を使えない。

 正確には使えるが実戦レベルで使用できるものは少数しかいなく、実戦レベルで使用できるものはかなり貴重で火の玉を生み出す程度の魔術師でも軍隊などでは重宝される。


「レベッカさん、俺もこの子も食事しに来ました、今日のオススメはなんです?」


 奢ると約束したので、今日のメニューを聞いてみる。


「そうだね、今日はラピ鳥のから揚げだよ、たくさん仕入れたからねいっぱい食べな!」


 オススメの料理を注文する、女の子なのであまり食べないだろうと勝手に決めつけていたが甘かった。横にいる少女は小さい声で「5人前」と宣言していた気がするが気にしない


「ごちそうさま」


 宣言通りに、ディナーメニュー5人前にデザートを3品完食し、満足そうにするナナを見ながら、財布の中身を確認するシン。

 おかしい確か今日の朝1週間分くらいの金はあったはずだ、いやおかしくない。

 この少女は食べ過ぎなのだその小さな体のどこにあの量の食べ物が入るんだ、軽く頭痛を感じながら支払いをする。すると少女が上着の袖を引っ張ってくる。少女に向き直ると


「あなたいい人だね、ご飯ありがとう」


 さっきまで文句を言いたかったが、その少女の笑顔を見てそんな気は失せてしまった。だが正直もうこの子には奢らないと誓いたい。


「私はナナ、あなたなんて言うの?」


「ん?俺はシンだ、まあこれからも仲良くしよう」


「シンくん、シンくんは友達?」

首を傾げながら問いかけてくるナナ、さっきシンを殺そうとしていた事などさっぱり忘れている


「そうだな、友達だ、よろしくな」


「うん、友達・・シンくんは友達」


 笑いながら繰り返し呟くナナ、その顔は戦闘中とは全く違い、可愛らしい表情をしている。

 この笑顔が見れ、少しうれしいシンであった。

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