↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プロクラトル  作者: たくち
砂の世界
24/205

ノアの暗躍

「最悪のタイミングだ」


 灰色のローブを纏う男が呟く、序列4位”風帝”ニグル・ウィーゲは自らの配下である風帝隊と最近の情報を交換していた。


「ルイナとダストが殺されたのは誤算です。ですがこのタイミングでの皇帝の死、何かが裏を引いているのは間違いないでしょう」


 共和国への策が王国に破られ敵を増やしてしまった上でのミリス皇国のトップの死。

皇国民から絶対の忠誠を向けられていた皇帝のいきなりの死に様々な噂が皇国中に流れている。


「1番可能性が高いのは第1皇女の差し金か」


 皇国第1皇女ローラの皇帝の暗殺というのがニグル達の見解だ。

最近になって彼女が何か動いているのをニグル達は知っていたからだ。


「何を考えているのやら、今アレクシス皇帝殿下なくして皇国の勝利はありえない」


 皇国最大戦力であるニグル達風帝隊とと皇国の盾、守帝はアレクシス皇帝の手で集められた。

だが彼らが忠誠を誓ったのはアレクシス皇帝自身であり皇国に忠誠を誓ってはいない。


「守帝の隊長は辞任、残ったのは4名ほどしかいませんからね」


 その証拠に隊長を含めた守帝の大半は皇国を離れ守帝は殆ど壊滅と同じ状態だ。


「私達だけでは赤姫に勝つ事は難しいですね、個々に勝つ事が出来ても私達は守りは得意ではありません。大将を狙われては勝ち目はないでしょう」


 敵の殲滅が得意な風帝隊はいつも皇帝の守りをする守帝がいるからこそ敵に攻め入る事が出来ていた。

他国からは無敵のように思われていた皇国軍はかつてない危機に陥っている。


「それに加えウェンズ共和国との同盟、戦力差は一気にひっくり返されたな。赤姫の団長を殺せなかったのは痛い、俺の失態だがあのタイミングで皇帝が死ぬとは思わなかった。焦り、止めを刺す事が出来なかった」


 ユナとの戦闘中に皇帝の死を知ったニグルは顔には出さなかったが焦っていた、そのおかげでユナは死なずに済んだのだが、今の皇国の状況は悪い。

 今までどの戦場でも有利に立っていた皇国が今度は守りを主にした戦闘が多くなる。

 有利な立場しか知らない皇国軍は弱者の戦いを知らなかった。


「ローラ皇女を問い詰めてももう皇帝は戻ってこない、今出来る事をするしかないな」


 近いうちに起こる戦争に備え、風帝隊は準備に取り掛かる、戦う事しか彼らには出来なかった。


*******


 皇国の別の場所では第1皇女ローラ・アリアス・ミリスが話をしていた。

部屋には2人しかいなく人払いを済ませている。


「お告げの通り父上、アレクシス皇帝を暗殺しました、これで皇国は救われるのでしょうか?」


 跪き話をする第1皇女ローラ、彼女が跪き言葉を仰ぐ先にいたのは、異質な存在だ。

 何にも染まらない真っ白な髪をし無邪気な子供にも大人のような落ち着いた顔をした女性、無の神ノアが部屋の中をプカプカと浮いていた。


「ああ、これで皇国は良い方向に進んでいる。あの皇帝はこの先皇国を苦しめる存在だ、早めに始末しなきゃならなかった」


 それを聞きローラは悲しい顔をする、皇国の為とはいえ父親を殺した事に思い詰めてしまっている。


「これしか方法はないんだ、ローラ、君の父親は人知れず皇国の民を苦しめていたからね。もし生かしていたらまた別のどこかで同じような事を繰り返していた」


 こんな話はノアの真っ赤な嘘なのだがローラにはわからない事だ。

 父親のアレクシスと違いローラは平凡な存在だった、だが皇国の民の事を考えるローラは民の為と言われアレクシスを殺すしかなかった、まんまとノアの嘘に騙され皇国の危機を作り出していた 。


「これから私はどうしたら良いのでしょう?」


 騙されているとは知らないローラはさらにノアの口車に乗ってしまう。

ノアの人に無条件で信頼される事を利用され操られていた。


「皇子が怪しい動きをしている、この前の無謀な戦争といいいたずらに命を失わせているとしか思えない」


「クラーブは私と違い頭の良い子です、何か理由があるのでは?」


 弟であるクラーブも殺さなくてはならないのか、そんな不安がローラを包み込む。


「いや、誰でも間違いは起こすものだ。ただ少し邪魔をするだけで良い、そうすればクラーブも気付くだろう」


 殺させるのは簡単だ。だがそれをしてはいけない、クラーブとローラにはもっと皇国を混乱させてもらわなくてはならない。


 最後に話をし、姿を消すノア、ノアが消えた後もローラは跪いていた。


「ミアリス様、あなたのお告げ確かに承りました」


 ノアの事をミアリスだと思い込んでいるローラ、その腕に付けた腕輪によりノアの姿をミアリスと間違えて認識していた。


*******


「どういう事だ!戦には破れて俺の評価は下がってしまったぞ!ローラに皇帝を譲るわけにはいかん!」


 同時刻、別の場所でもノアは話をしていた、相手は皇国の第1皇子クラーブ・サラド・ミリスだ。


「落ち着け、まだ完全に決まった訳ではない」


 怒鳴るクラーブに落ち着くよう言うノア、神の名に相応しい威厳にクラーブも黙り込む。


「あの戦はローラが皇帝を暗殺した事で負けたようなものだ。まさか風帝隊と守帝が参加しないとは思わなかった」


 あのスーウェンを利用した戦はノアがクラーブをそそのかし起こさせた戦争なのだが、思ったよりも早くローラが行動した為、風帝隊と守帝は急いで皇都に戻っていた。


「だがあの戦で勝ち、俺が次期皇帝と名乗りをあげるつもりだったのだ!」


 だが皇帝の死を知り絶好の機会とばかりにノアの言う通り戦争を仕掛けたのだ。

 ノアとしてはあの戦で王国のリーグ将軍を殺し戦力を王国と皇国の戦力を均衡させしばらくはどちらも勝つ事がないように仕向けたかったのだが、このクラーブは主戦力がいないまま戦を仕掛け皇国の戦力を減らした。


 さらに言えば守帝がいなくなるのはノアにとって予想外だった。

 砂の世界をミアリスから奪った後自らを信仰させる為この世界の人口を減らしたくないので、皇国軍が弱体化するのは嫌なのだが、シンが証を手にするにはリリアナに王になってもらうしかない。

 さすがにラピス国王はミアリスへの信仰が厚くノアはまだ国王には接触出来ない。


 それでも、ローラに殺させた皇帝もミアリスへの信仰は厚く、接触出来なかったが始末できた。

 この辺りで皇国を動かし王国軍とぶつけリリアナに手柄を立てさせ国王に証の場所を話させるしかない。

 それにミアリスの代行者であろうニグルは皇国軍に所属している、ニグルは同じ代行者のシンに倒してもらうしかない。

 そうしなければ創生のルールを守った事にならずこの砂の世界は自分の物にならない。


(さすがにこれ以上介入するとミアリスが動いてくるだろうが仕方ないな)


「クラーブ、ローラは何かに操られている可能性がある、あの皇女が皇帝の暗殺を企てるとは思えない」


 じっくりと砂の世界の侵略をするつもりだったが皇国の弱体化により事を急ぐ。

 ミアリスと偽ってローラに接触していた事を利用しクラーブを使いローラの尋問をさせ皇国からミアリスの信仰を奪う為動き出す。


「操られていたのならローラは殺す必要はない。裏で手を引いている者を炙り出し、皇国の敵とするんだ、そうすれば皇帝を殺した奴を見つけた功績がお前に残る。もともと第1皇子だ皆従うだろう、そして王国を攻め功績を上げ皇国をお前が纏めろ」


 そう言って姿を消すノア



 翌日、ローラに詰め寄り話を聞くクラーブ、そしてあっさりとミアリスのお告げによって皇帝を暗殺した事を話すローラ、罪悪感を覚えていたローラがそんな事を隠しきれなかった。


 そして皇帝の死が砂の世界の神ミアリスの仕業である事を公表したクラーブは皇帝の無念を晴らす為ミアリスの信仰を辞めノアへの信仰を宣言した。


 皇国民は皇帝を殺したミアリスに憤慨しクラーブと同じくミアリスの策略を見破り真実を伝えたノアへの信仰を始めた。


 熱心なミアリスの使徒達はまだ残っているが大半の皇国民はノアの使徒となった。

 神への信仰など大半の人間は周りがそうしているから合わせて信仰しているだけであり、本気で信仰しているものなど少ないのだ。


 ノアの掌で踊らされているとは知らず皇国民はミアリスへ怒りを向ける。

そしてその代表であるクラーブは打倒王国に向け準備を始める。


「さてミアリスどう出る?さすがにそろそろ動いてくれないと面白くないぞ?」


 何もない世界で神は言う。

 王国の王女リリアナを使徒にし、皇国もほぼ自分のものとした神は勝利を確信しまた傍観に戻る、自分の物となる砂の世界をただじっと見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。