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ルネ・デフォルト氏の第六十感【第5感】木下悠歩のサンストラーダ01

作者: 天派

日本お仕事今昔今後話3作、ルネ・デフォルト氏4作でいろいろな挿絵あり電子小説をテストしてみた結果、ようやく「小説家になろう」バージョンに適したスタイルの(スマート本)形式が出来ました。

挿絵(By みてみん)

     SIXTY60SENSE

挿絵(By みてみん)

 新神戸駅高架下トンネルを抜け、い

さご橋を渡り、急な階段を上ると布引

の滝。

 そこからさらに山道を上がっていく

と布引の貯水池に辿り着く。

 木下悠歩が勤める六甲ホーム布引営

業所は、その布引の貯水池脇にある。

 ロッジふうの煉瓦作りの営業所内で

は別荘販売の交渉が行われていた。

挿絵(By みてみん)

「七千百二十万です」

 尾根江"オネエ"部長がモニターに映

った別荘を指して言った。

「これにしましょうよ」

 ちょっと肥えたTシャツの男に寄り

添っていた奇麗な女性が言った。

「よし、決まり」とTシャツの男。

「では、ローン契約を……」と部長。

「いや、キャッシュ一括で払うよ」

「七千百二十万を即金でですか?」

 尾根江部長が目を丸くした。

「失礼ですがご職業は?」

「コンピュータゲーム会社の社長。ゲ

ームが世界的に大ヒットしてね。そろ

そろ引退して、のんびりと別荘暮らし

しようかなと思ってるんだ」

挿絵(By みてみん)

「その若さで? 勿体ない」

「この業界は、三十五歳が限界。それ

以上になると、コンピュータの開発ス

ピードに付いていけなくなるんでね」

「しかし、この先の人生は倍以上。

 無職のままで生活してはいけないの

では?」

「五十億、手元にあるので充分でしょ

う。それに有事の際を見越して金塊も

同額持ってますし……」

挿絵(By みてみん)

 Tシャツ男の桁違いの自慢話にパー

テーションの裏で聞き耳を立てていた

木下悠歩と緑沼課長、太田さんはずっ

こけてしまった。

挿絵(By みてみん)

 四人総出で百億カップルをお見送り

したあと緑沼課長が言った。

「現金と金。仮に年、一億ずつ、二億

円使っても五十年間は遊んで暮せるん

だぜ。畜生、うらやましいな」

「でも、五十年も仕事しないで遊んで

暮すのは私には無理」

「太田さん、オレなら十年で使い切っ

てみせるよ」

 尾根江部長が立ち話を続ける三人に

向かって叫んだ。

「緑沼課長、以下二人! いつまで他

人の懐の計算しているんですか、

仕事! 仕事!」

挿絵(By みてみん)

     SIXTY60SENSE

挿絵(By みてみん)

 営業所に戻ろうとした時、木下悠歩

は背広姿の男が山道を歩いていくのに

気付いた。

 真夏の炎天下、水筒も持たずに背広

姿で山道を行く男に木下悠歩は不安を

覚えた。

「木下君、あの人、どうかしたの?」

 と太田さん。

「深刻な顔してるのが気になるんだ。

跡つけてみるよ」

 木下悠歩は仕事用リュックを背負う

と急ぎ足で男を追った。

 男は天狗道を登り始めた。

 男は頂上付近の岩場でようやく一息

つく気になったらしい。

挿絵(By みてみん)

 男は山道をそれて岩場の先端に立ち、

眼下に広がる神戸市を見渡した。

 と思ったら、男の身体がグラリと揺

れて、崖の向こうに倒れ始めた。

「落ちる!」

 悠歩は岩陰から飛び出した。

挿絵(By みてみん)

 男は運良く、腰が砕けて尻餅をつく

ようにしてその場に崩れ落ちたので崖

下への転落を免れた。ほっと胸を撫で

下ろしながら悠歩は男に声掛けをした。

「大丈夫ですか」

 反応が無い。

 男の身体が異様に熱かった。汗もか

いていない。

 答えはひとつ。

「熱中症だ!」悠歩は焦った。

「木陰で体温を下げてあげなきゃ!」

 悠歩は引き摺るようにして男を岩場

から移動させた。

 悠歩は男を山道脇の木陰に寝かして

から背広を剥ぎ取り、ズボンを脱がせ、

下着状態にして、太い血管の通ってい

る股間や腋の下、首筋に水筒の水を掛

けていった。

 暫くすると男は無意識のまま、もぞ

もぞと身体を動かし始めた。

挿絵(By みてみん)

 突然目覚めた男はずぶ濡れの下着姿

の自分と、それをした悠歩に気づいた。

「私に何をした? 私の上着や鞄をど

こにやった!?」

 男は怒鳴った。

「あなたは、あの岩場で熱中症になり、

意識を失ったんです。

 その応急処置であなたの身体を冷や

していたんですよ」

「そうだったのか。怒ったりして済ま

なかった」

「いえ、それだけ元気でしたら、もう

大丈夫でしょう」悠歩は笑った。

 それから質問した。

挿絵(By みてみん)

「この炎天下、水も持たずに何故山登

りを始めたのですか?」

「私は舛下電業のコンピュータ開発部

に勤めていてね……」

「舛下電業って超一流企業じゃないで

すか!」

「その舛下を辞めるかどうかで迷って

るんだ」

「仕事上の問題で?」

「いや。息子のことでだ。息子が学校

でイジメにあっててね。

 イジメから逃れるには遠くの学校に

転校するのが一番。そんな思いを抱い

ている時に呉の関連会社に出向辞令が

出てね」

「いいタイミングじゃないですか」

挿絵(By みてみん)

「でも、呉の関連会社はレジャーラン

ド。コンピュータとは無縁の仕事なん

だ。私はまだコンピュータの仕事をし

たい。が、意志を貫けば、私は会社を

辞めるしかない。

 けれど、この歳で同業種への再就職

は難しい。どっちを選ぶのが正しいん

だ? 私は高いところからなら自分の

行く末が見えるような気がして摩耶山

に登ることにしたんだ。

 でもそれが見える前に熱中症……」

「そろそろ上着も乾いたようだな」

 男は木の枝にかけてあった背広類を

見た。

「その格好からすると君は学生かい?」

挿絵(By みてみん)

「いえ、別荘の販売管理の仕事をして

います。山の中を歩き回るのでこの格

好なんです」

「なるほど」

「で、今日、コンピュータで成功した

人が別荘を買いに来ました。その人三

十五歳で引退するんだそうです」

「ほう、どうして?」

「コンピュータの開発スピードに付い

ていけるのは三十代までが限界だから

だそうです」

挿絵(By みてみん)

「私は四十五歳。言われてみればその

通り……コンピュータの仕事を引退す

る時が来たのかもしれない……」

「呉に行こう……」

「やはり、高いところからだと自分の

行く末が見えるようだ」

挿絵(By みてみん)

「君に出会えてよかった。ありがとう」

 男は下山し、新幹線に乗って広島、

呉に向かった。

□木下悠歩のサンストラーダ01・了□

挿絵(By みてみん)

     SIXTY60SENSE

挿絵(By みてみん)

   単行本レイアウト参考例





「小説家になろう」バージョンの(スマート本)いかがだったでしょうか。

これでやっと(スマート本)の無料公開版は「挿絵が少なく単純なレイアウト」、有料電子・紙書籍版は「挿絵が多く多様なレイアウト」といった具合に無料版と有料版で明確な差別化を図ることが出来ました。

なので(スマート本)小説家になろうバージョンが仮に電子・紙書籍化される場合、有料なのに中身は無料公開版とほぼ同じという気恥ずかしい売り方をしなくて済みます。

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