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真の大地  作者: 木上冷
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▼五章 〈 作戦 〉 前編

谷の衛兵からの報告があったその日、谷は、大混乱に陥った。

 敵がこの谷を攻めてくるんだって。

 皆殺しにされるらしい。

噂は、たちまち谷中に広がった。首長を始め、谷の有力者たちは、急いで年長者キヌコの家へと集まり、今後の方針を練った。

「谷中がパニックに陥っています。このままでは、さらに危険です。加えて、襲来の際は、我が集落が、一番最初に相手と遭遇するはずです。援軍を要請します。」

そういうのは、谷の入り口に、ほど近い集落の代表、ヒラヌマだった。

「谷中の混乱については、この会議が終わり次第、すぐに全住民の集会を開いて、現状を話そう。援軍についても検討しよう。」

ユタカはそういうと、未だ寝込んでいるキヌコを起こして、話しかけた。

「キヌコ、お前のお告げを信じなくてわるかったと、本当に後悔しているよ。しかし村は危機的状況だ。どうすればよい?」

「ふん、何を今更騒いでおるのじゃ、お告げの通り、この谷は皆、滅びるのじゃ。助かる道など無いに等しい!」

「しかし、このままやられるの待つのでは、あまりにも・・・!」

キヌコとユタカは、そのようにして、長い間、話し合い続けた。

「・・・砂漠と谷を結ぶ、山間の道は、ひどく狭い。軍隊も一列に編成して進行するであろう。あの道の両側は急傾斜の崖になっておる。少数の者で待ち伏せして、よこから不意をつけば、多少相手を驚かすことはできるだろう。」

それは、この谷の地理に精通している者ならではの、考えだった。

「なるほどそれは気づかなかったぞ。それは良いアイデアだ、キヌコ。」

「しかし、そんなことをしても、必ず滅びるのは明白じゃ。無駄なあがきはよしとくれ。」

キヌコはそういうと、また寝込み始めた。

「確かに、その作戦はうまくいきそうですな、首長。」

「作戦を実行する者を選ばなくてはいけないな。すぐに取りかかろう。」



会合のあと、首長達は、谷全員を集めて、集会を開いた。

「皆さん。いま我々の谷は大変な危機に瀕しております。(新天地)軍が、南の方角から、攻めてきている模様です。何もしなければ、この谷はすぐに占領されてしまうでしょう。騒いでいても、なにも変わらず、何も始まりません。だから皆さん、この谷を守るために、立ち上がってください。立ち上がるべき時は、今しかありません!」

谷中の者達は、一様に不安な様子であった。しかし戦わなければ、占領されてしまうことが明白なのは、誰もが知っていた。

ユタカは続けて、さきほどの作戦について、述べた。

「我々は作戦を練りました。南口の道から奇襲する作戦です。この作戦がうまくいけば、相手に相当のダメージを与えることが出来るでしょう。その作戦を実行する者達を、我々が、選ばせて貰いました。危険な作戦ですが、彼らには活躍して貰わねばなりません。その者達は、彼らです。」

その時、首長の娘、マイコは、はっとした。


それだけはイヤ!いかないで・・・



集会後の様子は、様々であった。

不安な様子である者。

自分の家族が、作戦に関わらなくて、ほっとしている者。また逆に選ばれて、悲しんでいる者。



愛する者が、危険にさらされることに、悲しむ者。



それは、谷全体に、暗い影を落とした。



そのあと、作戦を実行する者達が集まり、打ち合わせた。

そこにいる人物は以下のようだった。

ミツヒロ=ヒラヌマ、谷最南の集落の代表。

コースケ=コマツ 谷の農夫の青年。首長の娘の恋人。

カズヤ=ノマ 谷随一の運動能力を持つ男。

マサト=ハエノ 谷の地理に詳しい。


「というわけで、皆さんに集まってもらったわけだが。」

ヒラヌマが、話を切り出した。この作戦チームのリーダーらしい。

「あの〜、あなた方ならわかりますが、何で僕もなんですかね?」

コースケは、皆に問うた。

「お前さん方は、若くて力があるだからだよ。」

そういって、ノマ、コースケをさし、ハエノがいった。

「その点、私は知識しかないからなぁ。皆さんの足手まといにならんよう、せいぜい頑張ります。」

「足手まといなんて、そんな。」

ヒラヌマは、一応、笑って首を振って見せた。

「出発は、今日の深夜0時。敵は朝方、あの場所を通ると思われます。攻撃武器は、銃、その他。質問は?」

「別にねぇよ」とノマ。

「特にないです」とハエノ。

「何時頃、帰れますか?」とコースケ。

「コースケ君。これは訓練じゃないんだ。作戦が終了すれば帰れる、失敗したら、二度と帰れない。それまでなんだよ。」

ヒラヌマはそういうと、そのまま黙ってしまった。

「そーですよねー・・・」

コースケも、この責務の重大さを、今更ながらに感じた。沈黙が流れた。その沈黙を破ったのは、ノマだった。


「でもよ、やるしかねぇんだよ、俺ら、この谷、守るんだろ?」

彼の言葉は、重かった。



またまた二部構成でお送りいたします・・・。

学生にとっての大きな障害、定期テストを完全に超越して書いております・・・。

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