漆黒と紅蓮
☆廃工場
ガララララ!
「頼もーーー!」
リョーヘイは勢い良く廃工場の錆びついた扉を開け、中に誰もいない事を確認した。
「よし。誰もいないようだな」
「ここは安全だ!さあ中に入れ!」
少女は両手を前に組み、下を向きながら廃工場の中へと歩いた。
「万が一奴等が現れても、ここでなら対処できそうだな」
リョウヘイは廃工場の汚れた窓から入り込む光を浴びながら、敵の追撃に備えるのであった。
「どうしよう!私のせいでヨルヒサにまで...!」
少女はその場にしゃがみこんだ。両手で顔を覆いながら泣き崩れたのだ。
「お前はさっきから何を言っている!?」
リョウヘイは問うた。しかし少女は泣いているままだ。
リョウヘイはイライラを隠せない。
「チッ、聞いているのか!」
そしてようやく、少女は語りだしたのだ!
「……私達は匿ってもらっていたんです...」
「ならやはりこうしている暇はない!さあ、早くこの街から逃げるんだ!」
「違う。そうじゃないの...」
「何が違う!?」
「匿ってくれていたのはさっきの人達よ...」
「なんだと!?意味がわからん。それなら一体誰に追われているというんだ!」
「それは分らないわ...でも、私達は身を隠さなきゃいけないの...」
「クソッ、お前と話しているとイライラしてくる!」
「私だってどうしたらいいかわからない...!」
少女は顔を上げ、リョウヘイに弱々しい視線を向けた。その瞬間、涙に潤んだ瞳を月光が照らし、キラリーン☆
リョウヘイの頭上にエクスクラメーションマークが点灯した!
「その瞳〈め〉...!」
リョウヘイはものすごいスピードで少女にせまった。
「――!?」
少女は喫驚した。
「まるでステーキの照り......いや、ヒヨリの瞳に――」
「――ちょっと!?近い!!!」
デリカシーの欠片も無いリョウヘイは少女に突き飛ばされた。
リョウヘイはものすごいスピードで吹っ飛んでいった。
廃工場の汚れた壁に激突したリョウヘイは、何事もなかったかのようにすぐさま立ちあがった。
そして少女に駆け寄るのだった。
「おのれ!何をする!」
少女はリョウヘイの怒りの形相に脅え、涙を浮かべた。
その時だ!!!
――「シュジュウウウゥゥゥン(炎が燃え上がる音)!!!」
リョウヘイの頬に業火の熱風が伝わった。そしてそれは、少女の潤んだ瞳にオレンジ色の火を灯した。
廃工場の入り口――そこは一瞬にして巨大な、煙のような炎で覆い尽くされた。中央にはうっすらと人影が見える。
「敵か!?」
リョウヘイはものすごりスピードで体を入口へ向け、声をあげる。
そして同じく、視線を入口に向けていた少女の瞳に浮かぶ涙を、彼は見逃さなかった――
「お前が「漆黒の・リョーヘイ」か...」
「何故俺の名を!?」
真っ赤っかな赤髪の、燃えるような髪型の男――ヨルヒサだ。
「お前、何が目的でレトラを浚った...」
「何故俺の名を知っているのかと聞いているんだ!」
「フッ、どうやらやはり、お前はサンディと繋がっているようだな...」
「サンディだと?まさかお前はサンディの手下か!…いや、さては俺をこの世界に飛ばした張本人だな!」
「何のことだか分らないが...レトラを泣かせる奴は俺が許さない!覚悟しろ!」
「やはりお前か...タワーの残党を殲滅してやる!決闘だ!」
突如として勃発した争い――少女――レトラが遂に声をあげたのだ!
「待って!違うわ!この人は私を助けてくれたのよ!」
「何を言っている!早くこの場から離れるんだ!」
「そうだ!お前はここを離れていろ!ここは間もなく戦場になる!」
「二人ともやめて!」
「「――決闘!」」
彼女の叫びも虚しく、二人の決闘が始まってしまった―――!!!
あたったったった!!!