追撃者
☆チャヤアリマスヨ町の路地裏
月明かりを遮る入り組んだ路地裏を二つの影が急ぎ走る。
何者かに追われているようだ。
「まって!放して!」
リョウヘイは少女の手を引っ張りながら走っていた。
「何を言っている!お前は追われているんだぞ!」
「痛いっ!」
リョーヘイは走るのを止め、手を離した。
「お前は奴等に捕まりたいのか!」
「そうじゃない...。でも、ここを離れるわけにもいかないの!」
「クソッ、意味がわからん!」
その時だ!入り組んだ路地裏に何者かの足音が響いた!
ダッダッダッダ!
「キャッ!?」
リョウヘイはすぐさま少女を抱え樽の陰に身を隠した。
「静かにしろ!敵だ!」
リョウヘイは足音のする辺りを睨みながら怒鳴った。
ダッダッダッダ!
「この辺りから声が聞こえたぞ!」
「何を言っている?誰もいないぞ!」
「クソッ!お前はそっちを探せ!俺はあっちを探す!」
ダッダッダッダ!
走り去った敵を睨み確認すると、リョウヘイは少女に問うた。
「お前はどうしたいんだ!」
少女は一瞬リョウヘイに視線を向けて何か喋りかけたが、しかしすぐに話すのをやめ、黙り込んでしまった。
リョウヘイは舌打ちした。そして辺りを見渡すと、何かをみつけたようだ。
「あそこだ!付いて来い!」
リョーヘイは指をさした。どうやらもう使われていない廃工場のようだ。
リョウヘイは廃工場めがけて走り出した。勢いにつられた少女は、嫌々ながらリョウヘイの後を追うのであった――
宿屋
ヨルヒサはリョウヘイを探すために宿屋を目指していた。
((ん!?何故ステーキ屋の連中がここに!?))
ヨルヒサは宿屋近くの路地裏からステーキ屋の下っ端が出てきたのを目撃した。
「どうする!?こっちにも来ていないようだが」
「どうするったって...店主からの報告はまだなのか!?もうすぐここに奴が来ちまう。その前に女を奪い返さなねぇと」
「――!?」
ヨルヒサは下っ端の一人に殴りかかった。音も無く忍びより、音速でパンチしたのだ。
「お、お前はヨルヒサじゃねか!」
「――!?」
次の瞬間、もう一人の下っ端も音速でパンチしたのだ。
そして先に倒れ込んでいた下っ端の胸倉をを掴むと、問いだした。
「お前達はレトラの監視を任されていたはずだ。何故ここにいる...?」
「なっ、なんでって、グフッ、そりゃ...」
「ハッキリと答えろ!」
再びの音速が下っ端の腹に突き刺さる!
「グハッ!......わかった...話すよ...。話すからもう殴らないでくれ...それ以上音速でパンチされたら死んぢまう...」
「……俺達は第2倉庫でレトラの監視を任されていた...」
「第2倉庫だと?倉庫になんの用がある?」
「もしお前がリョウヘイに負けるような事があった場合、万が一の時だ、その時はお前のもとにレトラを連れていけと、その為にレトラを第2倉庫で待機させていたんだ」
「そういうことか...クズの考えそうなことだ」
「俺達は言われた通り、その時に備えてレトラを監視していた。すると、奴が現れたんだ...!」
「奴だと!?」
「『漆黒の・リョウヘイ』――お前のターゲットだ」
「レトラはリョウヘイに浚われたんだ!」
「……もういい」
ヨルヒサは普通のパンチをあびせ、すると下っ端は眠るように気絶したのだった。
「第2倉庫の裏口は路地裏に繋がっていたはず...奴が裏口から抜けたとして......奴の居場所は廃工場か...!」
ヨルヒサは早々にリョウヘイの居場所を断定した。
((――リョウヘイ...何故奴がレトラを...?まさか...
リョウヘイに忍び寄る不穏な陰...
二人の運命が再び交差する――! つづく
あたっあたたっあたたたた!!!