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フリルやレースの付いた服は好きですか? 【後編】

前回の台詞の応えが入れたかったのと、アクセルゼータさんに大暴れしてもらうつもりが・・・あれ?

中編、ネモの回想?

後編しかアクセルゼータさんと会話できない?

あれ? あれ? その上、閑話入ってるし・・・。

もし、アクセルゼータの笑みに何らかの性的なものが含まれていたのなら、いくら嫁き遅れの魔王でも気付いただろう。しかし、狂信者のような崇拝の眼差しと陶酔の微笑みには何も言えない。


これがアクセルゼータの恐ろしい点である。


ただの女たらしと一線を画すその違いは、彼に色気は一欠片もないという点だ。色気がないのに女を籠絡させてしまう。ただの人たらしとも言える能力を持つアクセルゼータが病的なまでに女好きというのは、冗談か何かとしか思えない。


げに恐ろしきアクセルゼータ。


そんな彼に追いかけ回されているにもかかわらず、捕まるどころか気付いていない魔王がすごいのか、守りきっている側近たちがすごいのか、そのあたりはどちらとも言えない。


それにアクセルゼータは待ち遠しいと言うが、魔王の練兵場訪問は日課である。訪問ついでに自身の鍛錬も重ねていく。勿論、この青い髪の将軍は別の場所に隔離され、遠くから魔王の玉体を眺めることしか許されない。

だからといって持ち場を離れて迎えに来るのは完全なる職場放棄である。


「何故ここにいる、アクセルゼータ将軍」


無表情のまま赤毛の青年将軍が鋭い眼差しを向けて詰問すれば、


「我が君のご尊顔を拝見したくなりました、ヘブンリー将軍」


と、将軍というには似つかわしくない青年はのたまう。


「練兵場で待てないのか? お前がこんなことでは部下たちに示しがつかないだろう。もう少し立場を考えて動けないのか?」


中年将軍が黒髪の頭を掻きながら、しかし警戒するような色を宿した目付きで言えば、


「そんな不心得者の部下はおりません。皆さん、大変聞き分けの良い方たちばかりですから。クレス将軍のところはそうでもないのですか? うちはしっかり者のデュラがいますからね。そうだ、デュラを副官に如何ですか、クレス将軍。軍規が引き締まって非常に良くなりますよ」


と戦略魔法の天才は笑顔で答える。


彼が一番得意とするのは魔法を使う順序や組み合わせである。地理や天候、相手の力量やこちらの力量、状況や条件が厳しければ厳しいほどアクセルゼータの才が冴え渡る。

人間で言えば軍師、という言葉が相応しいのかもしれない。但し、魔法を用いたものに限ってだが。


聞き分けを良くしているのが人道的ではないことは二人の将軍と魔王にはよくわかっていた。それをやめさせるためにデュラを副官につけているくらいである。


「いらん。デュラは今は副官だが将軍になっていてもおかしくない実力の持ち主だ。今更別の将軍のとこで副官をする必要はない」

「なら、独立してもらわないといけませんね」

「将軍は四天王の四人だけだということはわかっているだろう、アクセルゼータ」

「では、誰かがいなくなればいいんですね。―――クレス将軍、辞めません? あなたはいい歳なのにまだ独身ですし、扶養家族もいなければ別の職業でやり直すのもたやすいでしょう?」


クレスがやり込められているところをヘブンリーが口を出す。


「アクセルゼータ将軍」

「それとも、あなたが辞めますか、ヘブンリー将軍? どちらにしろあなた方がお辞めになるのなら、我が君の警護は私に任せてもらえますよね?」


外見通り、アクセルゼータは温かみの一切ない笑みを浮かべ、言外に闇討ちを匂わせて言う。


アクセルゼータの体格も筋肉量も魔王の警護に就いている二人の将軍よりはるかに劣っている。新兵よりは上だが、完全に魔法使い系である彼は兵士たちに囲まれると華奢と言ってもいい。

その分、圧倒的な魔法のセンスがある。


宰相もアクセルゼータ同様、魔法の才があるが彼は大魔法も楽々こなせる魔力を持つ魔法剣士であって、魔法だけで将軍になれるほどのセンスはない。逆にアクセルゼータは魔力がそれほどあるほうではないのに魔法の使い方が抜群なのだ。


だからこそ、直接攻撃に不向きな体格をしていてもクレスやヘブンリーの代わりに魔王の警護をすることは可能である。


「・・・」


赤毛の青年将軍は視線だけで答える。

魔王は溜息を付く。


「アクセルゼータ。クレスとヘブンリーをイジメるな」

「苛めるだなんて、我が君。役に立たないなら役に立つ人材と入れ替えるべきだと申し上げただけです」


黒髪の中年将軍は「はん、狐が」と小声で悪態を吐く。


魔王がアクセルゼータに対して口を開こうとしたその時、空気を切り裂くような大きな音が辺りに響く。


「ネモ陛下!!」


廊下には魔王と三人の将軍以外しかいなかった筈だが、剣を手にした文官の服を着た麗人とその後ろに獣頭の獣人、セントール(ケンタウロス)、リザードマン、獣頭以外の獣人たちがいる。


「ゴールド! それにアラミス、ジャン=バル=ジャン、グロウラスにブラックモアとヨルンまで。どうしたんだ?」


練兵場にいるだろう幼馴染たち (+1)を、予想もしていないところで見かけた魔王は喜びの声を上げる。

剣を手にした麗人は剣で自らの肩を軽く叩きながら、汚物でも見つけたような目付きでアクセルゼータを見る。おかげで美しい顔立ちの彼女にそんな表情をさせた冷たい容姿のアクセルゼータが悪者にしか見えない。


「アクセルゼータ将軍。あなたを城内で見かけたと聞いて探していたのですが―――城内で勝手に結界を張らないで頂けませんか」

「相も変わらず剣を片手に走り回るとはとても文官とは思えませんね、ゴールド。弟さんと同じ武官になっては如何です?」


次の瞬間、深緑と黄色の髪が混じった美女の剣はアクセルゼータの首に添わされていた。

魔王と同じくらいの身長はあるスラリとした美女はニッコリと笑う。笑顔なのに何故かプレッシャーがかかって怖い。


「弟ではありません。カレンは兄です」

「どっちでも構わないじゃないですか。そんな顔をしているのに、どうしてあなた方は男なんでしょうね? 性別間違っていませんか?」

「男で良かったと思っていますよ。あなたに嫌われる程嬉しいと思うこともありませんから。そうそう、文官でいるのはあなたのような聞き分けのない武官にいうことを利かす為なんです。少し死んでみません?」


二人の会話で辺りの空気は確実に氷点下に下がった。

この口の挟めない会話は、深緑と橙の髪の武官が現れるまで続けられたという・・・。

・ネモ

幼くして父親を倒し、引退させた魔王。

冴えない茶(ミルクティー)色の髪にカカオのような焦げ茶色の目。

男の平均身長並の長身(人間の基準で180強)で断崖絶壁の寄せるものすら無い胸。

現在、嫁き遅れ予備軍の年齢。


・ノーチラス

ネモの幼馴染で側近(秘書か近侍)のインキュバス。下級魔族。

蜂蜜色の金髪にサファイア色の目の優男。

母親同士が仲が良く、他の幼馴染よりもネモと親しい。

魔王への忠誠を誓っている為、魔王に対してインキュバスの特殊能力は使えない。

ネモを心配するあまり、狂犬と呼ばれる状態にもなる。


・エレク

ぬばたまの黒髪に金の瞳の宰相。

上級魔族。

大魔法も楽々こなせる魔力を持つ魔法剣士。


・クレス

黒髪の中年将軍。

爽やかなイケメンで気のいい性格。

魔王ネモの就任時には将軍だった。


・ヘブンリー

赤毛の青年将軍。

精悍なイケメンで口数が少ない。

魔王ネモの就任時からしばらく護衛を務めた。


・ゴールド

深緑と黄色の髪の文官。カレン=デュラの

スラリとしたネモくらいの長身の美女にしか見えない。

常に帯剣しており、剣豪で武闘派文官。切り込み隊長という別名がある。


・カレン=デュラ

深緑と橙の髪の武官。アクセルゼータの副官。ゴールドの兄。

顔は美女だが将軍に値する実力の人物。

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