閑話:その頃の練兵場
アクセルゼータの登場の裏で・・・
練兵場に音もなく飛び込んでくる小さな人影。ケットシーだった。
「にゃー!! アイツがいないニャ―!! 誰か見てにゃいかー?!」
セントール(ケンタウロス)が、リサードマンが、獣人たちがケットシーに注目する。
「何?!」
「アクセルゼータ将軍のことか?!」
「ストーカーが?!」
「なんてこった!」
異口同音の声が上がり、辺りは慌ただしくなる。
「誰だ、この時間の当番は?!」
「そんなこと言っている場合じゃない! 奴はどこにいる?!」
「デュラ副官には報告したのか?!」
「おい、まさか」という声が他の兵たちからも上がる。
魔王城の勇者と呼ばれ、恐れられている練兵場の主、それが魔王軍の将軍の一人であるアクセルゼータ。別名、魔王を追いかけ回すストーカー。ストーカー故に練兵場に隔離されている存在。
アクセルゼータが城内で見つかれば、宰相を始め、他の将軍たちからすら叱責を喰らいかねない。
「オレ様はすぐに奴の臭いを追う」
獣頭の獣人は言うと、練兵場を飛び出していく。
ケットシーは涙目だ。
「副官にはまだにゃー。これから報告だにゃ―」
「ネモ陛下のところに向かう」と、セントール(ケンタウロス)が、リサードマンが、獣人たちが練兵場を出て行く。
「ガンバ☆」「頑張れ☆」他の兵士たちの生温い応援を背に、ケットシーは練兵場を出て付属の施設に向かう。
泣きべそをかきながら、ケットシーはアクセルゼータの副官であるデュラに報告する。
「デュラ副官ー!」
「あ゛あ゛? カレンと呼びなさい、カレンと。何かあったんですか、パルファン」
「アクセルゼータ将軍の姿が見つかりませんにゃー!!」
「あ゛ん? も一度言ってみ?」
深緑と橙の髪が混じった美女の顔が半眼になり、口元に獰猛な笑みが浮かぶ。
魔王ネモの練兵場訪問10分前の出来事である。