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Sirence is Mine  作者: そふらまる
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Under the Control of the Black

悲鳴と懺悔を闇が包みこんでいく。

混沌とした夢を見る。いや正確には夢では無く現実で体験しているのかもしれない。クライン・レビン症候群の患者のように夢と現実の境界は最早無くなっている。


夢か現実の内容は簡単だ。自分が空を飛んでいる、雲一つ無い爽快な空を背中に生えた真っ白な翼を使って飛んでいる。

何故背中に翼が生えているかの疑問などどうでもいい。最初から生えていなくてもそんなの問題じゃない。最高の瞬間じかんにわだ。


どこまでも続く青空を自分は飛行している。どこまでも続く蒼は心を高揚させ愉快にさせる。出来る事なら永遠に続いて欲しいと願う。


だが夢も現実も願いなど叶わず気付いた時には悪夢にまっしぐらだ。


どこまでも続く青空はいつの間にかドス黒く濁った黒に変わっていく。後ろに引き返そうとするが引き返せない。ただ前に進む事しか出来ない。

恐怖で心臓が高鳴り脳から様々な物質が分泌され感覚が鈍る。楽しさで高揚した気分は恐怖で破裂しそうだ。


背中の翼を『何か』が触れる。その瞬間に悪寒が体に駆け巡り一つの『最悪』が頭の中で浮かび現実となる。


翼を引き千切られる。白い無数の手によって無遠慮に。

筆舌尽くし難い激痛が背中に発生し狂いそうになる。発狂しそうになると無理やり正気に戻され正気と狂気が自分を取り合う。

この苦痛から解放されるのなら自分など消えて無くなれば良い。


『自分?』


自分が誰なのか理解できない。記憶は未完成のパズルのように所々欠落し己の情報を失っている。

訳も分からず絶叫する。神に救済を求める信者のように。死を宣告され発狂した罪人の如く。現実と狂気の境で男は叫び続ける。

憎悪と哀しみに満ちた叫びが自らに変化を齎すとは知らず。


◆◆◆◆

「これはどういうことなの?」


秩序の神コスモスは現在巻き起きている事に戸惑いを隠せずにいた。

浄化のために静寂に包まれていた『彼』が突如として苦しみ出し静寂を突き破ろうとしている。本来静寂に包まれれば完全に目覚める事は無い。なのに『彼』は目覚めようとしている。幸福な夢から目覚めようとしている。


彼を苦しませる元凶は何だ。溺れる夢から彼を引き上げたのは。


コスモスはそこで取り返しの無い失敗をする。早送りのように高倍速で変化する中でコスモスは思考の海に沈んだ事だ。


彼はコスモスが見ている前で霧の如く消えたのだ。コスモスの届かぬ場所にえと。


◆◆◆◆


深海に沈む。重力に従い下へ下へと光明届かぬ暗黒へと沈んでいる。自分には既に純白の翼は無い。翼は抉られ、引き剥がされ跡形も無い。


暗黒が全てを包み込む。まるで我が子を抱く『母親』のように。


母親‥‥?


機能停止寸前だった思考が再起動する。母親とは何だ。私に母親はいたのか。

疑問の濁流が思考を襲う。濁流が思考を滅茶苦茶にする。だがその中で一つの疑問が渦になっていく。


自分は何者だ?


体が沈む。暗黒の暗黒えと限り無く沈む。暗黒は思考を奪いさっていく。賢者に真実を歪まされた愚者のように記憶を思い出せない。


恐怖が全身を支配する。闇よりも深い暗黒が自由を奪い、絶望が心を染めていく。


毒林檎を食べた白雪姫の如く冷たい眠りが訪れる。


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