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Sirence is Mine  作者: そふらまる
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鼓動

 自分の眼前には頭が裂けそこから綺麗なピンク色の脳味噌をドロッと垂れ流しながら時折細かく痙攣する野良猫が周辺のコンクリートを真っ赤に染めながら死んでいる。自分は猫の死体を右手に猫の頭をカチ割ったトンカチを持って見ている。だが、不思議な事に全くと言ってもいいほどに罪悪感は無く、あるのは清々しい程の爽快感と恍惚感だった。


◆◆◆◆

 

 人は幼い時に自己を確立する。確立した自己は精神構造に多大な影響を齎す。なら、その確立された自己を二十数年間生きてきた男に捨てろと言って捨てられるだろうか。答えは簡単、到底不可能だろう。例えどんな薬を使おうと無理だろう。無理ならばどうすれば良いか。簡単だ楽しめばいい。私のように。

 

 尻軽な女の素晴らしい魅力に気づいたのはつい先日だ。彼女らはこちらが顔に純朴そうな好青年の笑みを貼り付けて近寄っていけば面白いように釣れる。彼女らはきっとファックをすると信じて疑わない。彼女らの心はボロボロで脆弱で壊れやすい。だから侵入しやすい。彼女らは疑う事を知らぬ盲目の子羊のようにその命を弄び殺すのは容易い。


今回の標的は金を貰う事によって身売りをする高校生の援交少女とした。少女の名前は確か楓、彼女はラブホテルが立ち並ぶエリアでブラブラとしていたため笑顔で近寄より直ぐに『行為』の了承を得た。行為をしても別に良かったが誰のブツが入ったか分からない所に入れるのは想像しただけで吐きそうになった。だから手っ取り早く『過程』を楽しまず『結果』を楽しむことにした。


◆◆◆◆


「ねぇ、お兄さんはどんな仕事してるの?」


猫撫で声の甲高い声でこれで何度目の質問か分からない(途中から数えるのを止めた)下らない雑談を併せた質問をしてくる。気分が狂しくなりそうだが何とか堪え笑顔を貼り付け答えるのを拒絶する。彼女は察したのか押し黙る。

今、居る場所は浮浪者も通行人も誰もいない公園。そこで自分と楓はベンチに座っている。腕時計を見ると既に時間は深夜の十二時を過ぎている。


「お兄さんには何か夢はある?」


「無いね。強いて言えば心の平穏かな」


「ふーん」


意味が分からないのか適当な返事が返ってくる。


「私はねあるよ!! それはねお金持ちになる事」


聞いてもいないのに自分の夢を語り出す。それも子供の夢のように単純な。聞いているこちらの身にもなって欲しい。下らない夢、それも到底叶わない夢を聞かされるこっちは目眩がしそうだ。面倒だ、殺そう。


「すまない、あったよ。僕にも夢があったよ 」

「どんな夢?」


彼女は金を掴ませている為か率先して聞きたくもない無いような事にも喰いついて来る。だが、丁度いい。


「君の体から飛び散る血で遊びたいよ。この淫売女」


自分でも素晴らしいと思うような笑顔を貼り付け聞こえるように少し大きな声で言う。彼女は理解出来ないのか顔を顰め首を傾ける。


「お兄さんそれってどういう意…」


最後まで言わせる前に素早く裾に隠し持っていたナイフで彼女の心臓を突き刺す。彼女は痛みで声が出ないのか発さない。彼女の胸から赤いシミが出来上がっていく。気分が楽しくなってきて何度もナイフで刺す。とっくに死んでいるだろうが手が止まらない。既に彼女の服は血で真っ赤に染色されている。それもまた気分を愉快にさせる。


幾らか時は経ちナイフを胸に刺すのも飽き止める。時間が気になり時計を見ると既に時間は一時だ。立ち去ろうとベンチを立ち歩こうとした瞬間に後頭部に衝撃が走る。

衝撃が走った瞬間に体は重力に引かれるように倒れる。頭から血が流れて血だまりが出来上がっていく。意識が薄れていき五感が遠くなっていき視界が霞んでいく。

 誰が殴ったか見れば浮浪者だろう。汚い服に身を包み手には鉄パイプを持っている。思考が鈍っているためなぜ細かに震えているのか考えられない。

 浮浪者はまた鉄パイプを振り上げている。次の一撃で確実に自分は絶命するだろう。だが、不思議な事に恐怖も神に対する懺悔も後悔も一切無い。あるのは殺し足りないもっとあそびたかったという物足りなさだった。

 





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