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昔のこと
昔から僕の周りにはたくさんの人がいた。
生まれた家は古くから続く旧家というやつで、僕はそこの直系で久々の男児だったらしい。
目も開かないうちから、多くの使用人が付けられ、着替えや食事、風呂や手洗いなど常に誰かが近くにいた。
それが普通でないことを小学校に入る時に知った。
みんなは送り迎えされていないし、教室の隅でいつも授業を見守る人もいない。
友達と遊んでいて、空から迎えに来る人もいない。
周りにいたたくさんの人のほとんどが、人間でないと知ったのは小学五年の時だった。
鬼。
昔話に出てくるような、赤い顔やとんがった角があるものばかりではないけれど。
人間のような姿をした彼らは、僕にしか見えなかった。
それがわかった時、僕は愕然とした。
さっきまで遊んでいたあの子も。
親切に手を引いてくれた女の人も。
飴をくれたあの老人も。
他の人には見えていないとわかった途端、僕は呆然としたあとひどく泣いてしまった。
それから僕は、僕にだけ見えるそれらたちのことが大嫌いになった。
大嫌いだ。
本当に。