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戦の乙女と戦車の王  作者: るーぶる
4/4

 戦車の居住空間は相変わらず最悪だった。

 

 「草薙が中尉とは、分らんもんだなあ」


 そういって声を掛けてきたのは操縦席に座っている男、同僚のヴォルガである。


 「やっと俺の実力が認められたんだろ」

 「2人ともやめてくださいッスよ」


 俺とヴォルガの軽口をサーシャが嗜める。冗談の、いわゆる挨拶みたいなもんだからそんな目くじらをたてなくても、と思っていても口には出さない。


 「ヴォルガ。このまま革命広場まで前進してくれ」

 「了解」


 戦車はけたたましいエンジン音を響かせながら駆動する。

 武装警備隊本部地下から発進した俺たちはメインストリートを走行していた。後続は2輌。

 俺の最初の指示は3輌による12小隊編成でテルノヴラートの街を偵察することだった。相手の出方が分らない以上、戦域が予想以上に広がってしまった為まずは網を整えることから始めなければいけない。

 通行の邪魔になるため市民には15分ほど前から戒厳令を布いている。

 それにしても。


 「戦車殺しの姿形が分らないなんてナンセンスだ」

 「まったくそのとおりだ。意味わかんねえ」


 ヴォルガが頷く。

 この時点で作戦は見切り発車という他ない。そもそも犯行声明も何もなく戦車殺しが俺たちが探している間潜伏されたら元も子もない。非常に杜撰な戦術だ。恐らく参謀本部も混乱しているのだろう。サリウスが生きていたら絶対に反対した。

 悩んでいても仕方ない。今は自分の出来る事をするべきだか。


 「サーシャ。主砲は装填しなくてもいい、12mm砲の弾数確認してくれ」

 「了解ッス」


 俺たちが今乗っている戦車、正式名称『モルニア』は小型の枠に分類される。

 元々市街地を戦場として想定して設計されたので攻撃力よりも速度と制圧力を重視している。主砲の35mm砲も砲身は長いがそれほど威力はない。しかし暴徒鎮圧なら副砲の12mm砲2門で充分対処できる。そのためモルニアはロマノフカ国内の都市防衛に広く使役されている。テルノヴラートも例外ではない。最も通常の国防軍が使う緑色の迷彩色の車体ではなく武装警備隊は藍色に統一しているが。ロマノフカの地において伝統的に藍色は高貴を表す色だ。武装警備隊の制服も藍色に銀糸を用いていて非常に高級感溢れる作りとなっている。

戦車の役割分担においてもこのモルニアは革新的な変化をもたらした。

これまでの戦車は2人乗りでそれぞれ戦車長、装填手、砲撃手ら操縦手、通信手をせねばならず非常に効率的ではなく、戦車長自ら命令しながら弾を装填して撃たねばならず撃破率が非常に悪かったのだ。

モルニアは居住空間は悪いが3人乗りとすることでその問題を解消した。俺が戦車長、通信手を担当し、サーシャが装填手、砲撃手、ヴォルガが操縦手を担うことで合理化を果たした。戦車長が通信手を兼ねることで横の連携が可能になり、市街戦の様な組織だった戦術が必要となる時にモルニアは当初の想定以上の働きをした。

ロマノフカの誇る、まさに傑作戦車と言えるだろう。


「弾数確認、200発。満タンッス」

「了解した」


俺は後続にも同じ指示をした。首都で戦闘を起こす以上、下手に主砲を撃てば街にまで被害を起こしかねない。それは上層部に俺の首が飛びかねない危険に晒されるのでその手法を使うことはまずないだろう。

同じく首都に展開されている歩兵部隊が戦車殺しを処理するのが一番なんだが……。

現在、この作戦に投入されている歩兵戦力は500人。しかし俺は歩兵を率いる奴の顔を思い浮かべて断念する。

歩兵大隊長、コマリン・シュトゥルマン中佐は筋金入りの差別主義者だ。

間違っても和ノ辻出身である俺と連携などしないだろう。奴はあまりにも行き過ぎた行動をとるため武装警備隊の中でも疎まれている。俺に今作戦の指揮権を任されたことが更にコマリンの怒りを買ったはず。


「俺らだけでやるしかないのか……」


 ハァと息を吐く。


 「いつものことじゃないッスか」


 暗い雰囲気を纏いかけていた俺にサーシャが呆れたように声を掛ける。


 「微力で良いなら俺も力にならんこともない」

 「素直じゃないッスねー、ヴォルガ君は」

 「うっせ」


 目の前のヴォルガとサーシャのやりとりで少し元気が戻ったような気がした。

 2人とは軍学校時代からの悪友だ。共に辛苦を味わい、俺が武装警備隊というエリート集団に所属できるようになったのも2人の力によるところが大きい。俺が和ノ辻人であるということも受け入れ、力を貸してくれたこいつらに感謝してもしきれないな。今もふざけたやり取りをすることで俺を元気付けてくれている。


 「なんか、いつもありがとな」


 俺の言葉に2人は驚いてこっちを見る。

 ……何だよ。

 サーシャとヴォルガは徐々ににやにやし始めた。


 「うんうん、何度聞いてもいい言葉ッスねぇ。ありがププッて」

 「笑ってやるなよサーシャ。草薙が嫌がっているだろ?」

 「口が裂けるほどににやけている人に言われたくないッスー」

 「うっせ」

 「いや、やめてよねマジで。恥ずかしいから、さっきの言葉は気まぐれだからうん。あとヴォルガ、お前は前向いて運転しろ」


 ヘイよ、ヴォルガは気だるげに返事した。

 戦車の内部の空気が明るくなった____そのときだった。

 ゴウンッという音と共に戦車が激しく横揺れした。


 「何だ! 何が起こった!」


 ヴォルガが操縦を止めて叫んだ。

 俺はハッチ……戦車の上部のふたを開けて顔を出し周囲を見回した。


 「ッ___!」


 そこには後続の戦車が1輌炎上していた。

 


 


 

留学関係でゴタゴタしてました(言い訳)

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