主任がゆく(千文字お題小説)PART9
お借りしたお題は「ブログ」です。
松子は愛に後押しされ、ようやく住之江博己と向き合う覚悟を決めた。
しかし、その夜は住之江が酔い潰れてしまい、持越しとなった。
愛の店を出て携帯を取り出すと、以前病院で再会した瀧本ななみからメールが来ていた。
『今度の土曜日、フレンチ如何ですか?』
松子はななみなら相談できそうだと思い、承諾のメールを送り、ウイークリーマンションへと急いだ。
翌日、松子は誰よりも早く出勤すると、事務室で住之江が来るのを待った。
「あ……」
やがて住之江が来たが、二人きりのため気まずい空気が流れた。
「あの……」
お互いにその嫌な雰囲気を打開しようと口を開く。
「どうぞ」
住之江が松子を促した。松子は意を決して、
「昨日は失礼しました。あまりに急なお話だったので、動揺してしまって……」
住之江に抱きしめられた事を思い出してしまい、顔が火照る。住之江も恥ずかしそうに俯き、
「こちらこそ、申し訳ありませんでした」
「それで、少し時間をください」
松子は頭から湯気が出そうになりながら、何とか言う事ができた。
「は、はい。お待ちしてます」
住之江が応じた時、唐揚げ部隊のイケメン達が入って来た。
松子と住之江は慌てて作業をしているふりをした。
イケメン三人は、実は愛から二人の事を聞かされていたので、顔を見合わせてクスッと笑った。
土曜日になり、松子はななみと駅で待ち合わせ、レストランに行った。
「瀧本さんに相談したい事があるんだけど」
席に着くなり松子は切り出した。ななみは微笑んで、
「何ですか?」
松子は住之江の名前は出さず、事情を説明した。
「わあ、いいなあ。憧れるなあ。私も男の人に後ろから抱きしめられたいなあ」
妙な事を羨ましがるななみに松子は苦笑いした。
「どうすればいいと思う?」
「もちろん、進むしかないですよ」
ななみはニヤリとして言った。
「やっぱり……」
そう思っていた松子であるが、躊躇いの気持ちが強かったのだ。
愛に応援され、ななみにも後押しされた事で、ようやく松子も決断できた。
やがてコースの前菜が運ばれてくると、ななみがスマホを取り出して写真を撮り始めた。
「食べ歩きのブログを書いているんですよ」
ななみが自分のブログを見せてくれた。たくさんの料理の写真が掲載されており、若い女子らしく絵文字も踊りまくっている。
(え?)
松子はななみのブログのタイトルを見て凍りついた。そこには、
「住之江ななみんの食べ歩きブログ」
と書かれていた。
さてどうなりますか。