魔法少女は男の娘?
私は見てしまったのです。あの、忌々しい○○○を。
事件が起きたのは、ただの当たり障りない一日でした。
今の時代は正義の味方と悪役が実際に戦っています。テレビ局なども駆けつけ、大型の戦隊アニメのような感じです。
しかし、ただのアニメと違うのは、ヒーローが沢山いることです。
よくある全身スーツの五人とかとか、可愛い顔して悪役相手に怯むことなく蹴りをいれる女の子たちとか。目つぶししてくる女の子とか。
その中でも一際目立つのはやはり、彼女達でしょう。
彼女達は、今時珍しい和服をイメージした戦闘服で身を包んでいるのです。
一人は獣耳の巫女さん。彼女はお札を使って獣を呼び出したり、雷を落としたりと色々危ないです。可愛い顔して残虐です。縄なんかも使います。近づいてはいけないのは我ら悪役の中で暗黙のルールとなっております。
もう一人は町娘さんです。こう、裾の短い着物でフリフリです。ふとした瞬間にパンチラでもしそうです。それを狙ってうちの団員達も競うように襲いかかりました。が、誰一人、記憶を持って目覚めたものはおりません。初めは、それでも挑戦する命知らずな方もいましたが、その数は次第に減っていき、最近は、生き残ることが最優先です。遠目から見ただけですので、よくはわかりませんでしたが、手に持っていたのはフライパンのような物だった気がします。彼女達はチームを組んでいるようです。
そして私は悪の組織の五大幹部の一人、くノ一乙女です。彼女達と示し合わせたように和服なので、彼女達担当です。ふざけないで欲しいです。私も挑みましたが惨敗でした。縄で縛られました。首もとに私のクナイを当てられました。恐かったです。死を覚悟しました。
ですがその時は部下に助けられました。九死に一生を得ました。ありがとう。元名もなきザコキャラ現準幹部殿。
まあ、それでですね、出来ればあまり近づきたくないんですけど、最近あれなんですよね。悪役の人気が落ちてきてるんですよね。そこでボスが考えたのはよくあるあれです。悪役が正義の味方の仲間になるというあれなんです。そこで選ばれたのは幹部の中で最弱と言われるこの私です。私なんです。勿論、派遣先は彼女達のところです。きゃー!!!
と、いう訳で、逝ったんですよ。でもテレビ局がいないところでやったって意味ないんで、いつも通り襲いかかりました。勿論惨敗しました。部下は誰一人、残ってはいません。皆、夜空のお星様となりました。私もいつも通り縛り上げられ、首もとにクナイを当てられました。助けて準幹部殿!!でも、今日は有休とってるんですよね。ふふ…。ボス、仲間のなる前に殺されちゃいます。確実に。
で、でも、ここで負けるわけにはいきません。
「くっ…とうとう…約束…果たせなかったなぁ……ごめんね…龍哉…」
弟との約束…それは、戦いの無い世界にすること。くノ一乙女はその約束の為に、今まで懸命に戦っていたのです!そして、それを哀れに思った彼女達がチームにいれてくれて、三人で戦いの無い世界にしよう!なんてなればいいなっていう。話は全て嘘っぱちですけどね!!弟なんていませんけどね!!そう!これこそが、ボスの考えたお涙頂戴作戦なのです!!
すると、首もとにあったクナイが場所を変え、頬にはりつきました。何故だかわからないけど、顎も持ち上げられます。予想外の反応に、うまく頭がまわりません。そして、そんな私に町娘さんは今までにない冷たい目をして言いました。
「……りゅうやって…誰」
それは問いかけではなく、脅迫でした。クナイ先から赤い汁が流れ落ちました。鈍い痛みと、するどい恐怖に襲われた私の頭は上手く機能していなかったようで、何を問われているか全くわかりませんでした。
町娘さんは黙り込んだ私を見てどう思ったのか、私を繋いでる縄を持ち、歩き出しました。当然、私は引っ張られ、引きずられてで最悪でした。
止まったところは戦場となっていたところから、それなりに離れた廃墟のビルのようなところ。
小さくも大きくもない爆発音が聞こえます。
もしかして、ここが基地なのでしょうか?
町娘さんは私に視線を合わせるためか、しゃがみます。いや、本当にパンツ見えちゃいますよ。
「ねぇ、りゅうやって誰?」
町娘さん怖いです。今度はきちんと問いを理解することが出来ました。龍哉ですか?
「……お、おと……弟」
空想の…ですけど。
「……嘘だ」
うぇっ!?ば、ばれてる!?ボスー!!これが死亡フラグなのですね!?私はまた一つ賢くなりました!!じゃねー!!!こここここ殺される!!
「うううう嘘ですけど嘘じゃないです!!じゃないです!!嘘じゃないです!!違うんです!!」
あああああ何言ってるんだろ私。つか殺気が半端ない!!!目が目が!いったいどこを見ているの!?
町娘さんの瞳は普段の半分以下になっています。怖いです。ここが私の墓場になるのですね。短い人生でした。うう、ボス。怨みますよ!
「…ねぇ、今、何考えてるの?」
町娘さんは素敵な笑みを浮かべ、聞いてきました。……喉にクナイを当てて。怖いです。ボスを怨んでました。貴方に怯えてました。……なんて言えるわけないじゃないですか!!ボスの存在はトップシークレットなのですよ!悪役が正義の味方に怯えてちゃダメじゃないですか!!ああ、もういっそのこと気絶できたら…!
「……………ふぅん。……言わないんだ」
町娘さん!それ以上クナイを近づけたら危ないですよ!!私、本当に殺されるんですか!?
「大丈夫、殺さないよ」
ほっ……死亡フラグ回避ですね。クナイはそのままですが。
「……………だから、ねぇ?」
喉に当てられたクナイがおろされました。それを見て、やっと身体の強張りが解けました。これで一安心ですね。
「………なに見てんの?」
周りの温度が急激に下がった気がして、気がつけば、再び喉にはクナイがありました。いつの間に。
「………こっち向けよ」
急に町娘さんの声が低くなり、顎を掴まれ顔をあげさせられました。情けないですが、目からは涙が溢れてきました。それ程までに彼女は怖かったのです。
「……………ぁぁ、ぃぃ」
彼女の整った唇が動きましたが、何を言ったのかはわかりませんでした。もしかして、今ので私の未来が決まったのでしょうか。
「…………楚々られる」
………はい?
町娘さんがなにか言ったと同時に世界が反転し、後頭部を強く打ちつけました。ぐらぐらと脳味噌が揺れているように感じます。痛みに悶える私に彼女は顔を近づけます。
耳元で彼女は囁きました。
「僕の物になってよ、裕香」
私はその日、誰も見たことのない、スカートの中身を見てしまいました。




