第6話
席替えから2週目の
とある数学の時間。
一番前の席にもかかわらず
眠気を誘ってくる授業。
黒板には呪文ともとれる
解読不可能な数字と
アルファベットが並ぶ。
教師の必死の説明にもかかわらず、
全くもって意味が分からない。
こういう時間って、
何故かチャイムが鳴らない。
何度時計を見ても
大して針は動いていなかったりして。
ついには眠気に負けて、
チャイムが目覚ましになってしまう。
今日もチャイムで目を覚まし、
教科書とコンパスを机にしまう。
休み時間になると、
珍しく親友から手紙を渡された。
「あのさ、一応書いたけど、
見るか見ないかはどっちでもいいから。
見たくなければそのまま捨てて」
手紙を渡されたときに言われた
その言葉について私はしばらく考えていた。
休み時間が終わってしまい、
その次の授業である理科の時間も、ずっと。
意味が分からない。
読まなくてもいい手紙、か。
私にとって悪いことでも
書いてあるのだろうか。
そんな風に言われると、怖い。
なんだか、開けてはいけない
パンドラの箱みたいな気がする。
でも、せっかく書いてくれたのだから、
読まないで捨ててしまうのはもったいない。
それに、そういうのは
絶対に読みたくなる性分だ。
一体何が書いてあるのだろう。
読みたくなければ捨てろ、
なんて言うくらいだから、
雑談とか面白い話ではないんだろう。
一番可能性があるのは、
私に対する不満とか、かな。
でも、手紙を渡された後、
いつも通り普通に話していた。
あれが私に対する不満を綴った
手紙を渡した後の顔だったら、
多分私はもう誰の笑顔も信用できない。
だとしたら何だろう。
ダメだ、全く想像がつかない。
というか、さっきから考えすぎて、
全然授業の内容が入ってこないし。
あ、もう一つ考えられるのは、
恋愛関係の内容。
それなら、読みたくなければ
捨てる、というのも分かる気がする。
うわ、もっと怖くなってきたかも。
でも、やっぱり気になるし。
っていうか、たかが手紙1枚、
なにそんなにビビッているんだろう。
何が書いてあるか分からないって言ったって、
私に不利益な何かが書いてあるって
決まったわけじゃないのに。
「はい、じゃあ今日はここまで」
理科教師の言葉でふと我にかえる。
あ、50分間無駄にしてしまった。
でも、結論は出た。
やっぱり、気になるから読もう。
私はポケットから
器用にリボンの形に折られた
手紙を取り出して、そっと開いた。
一度深呼吸をして、
女子特有の丸っこい文字が
並べられた手紙をゆっくりと読んでいった。
けれど、チェリーピンクのペンで、
可愛らしく書かれた見掛けとは裏腹に、
内容は思わず落としそうになってしまうほど、
私にとってショックなものだった。