第5話
それから、私の幸せな
1週間が始まった。
席替えをして、
席が離れたのにも関わらず、
1週間の間毎日話すことが出来た。
それも、半分は君の方から
話しかけてくれた。
とある美術の授業のとき。
その日の課題は写真だった。
以前の課外学習で撮ってきた
自然の写真の中から、
コンクールに出す写真を選ぶ。
自分で撮影したたくさんの写真から、
一番良い5枚を選び、
タイトルをつける。
絵や彫刻などが苦手な私にとって、
鑑賞と写真は成績稼ぎの課題。
私が写真を選んでいると、
斜め後ろの席から君に名前を呼ばれた。
君は、選ばなければいけない5枚のうち、
残りの2枚を選んで欲しいと私に言った。
私は君の撮った写真の中から
心惹かれる写真を2枚選んだ。
「これと、これがいいんじゃない?」
私は君の写真のリストの中の
2枚の写真を指差してそう言うと、
自分の机に戻って作業を再開した。
自分の写真から5枚選ぶと、
今度は応募用紙にタイトルを記入する。
写真も勿論評価されるらしいけれど、
タイトルも評価に入るらしい。
私の唯一の取り柄である
想像力を駆使して考えを絞る。
ようやく3枚目のタイトルを
応募用紙に書き終わったとき、
さっきと同じようにまた名前を呼ばれる。
振り返ると、今度はタイトルを
考えて欲しいと頼まれた。
不思議と、君の撮った写真は
すぐにタイトルが出てきた。
多分、すごく嬉しかったんだと思う。
右や左の席の女子ではなく、
前や後ろの席の男子でもなく、
わざわざ斜め前の私に
声をかけてくれたことが。
なんで私だったのかは、わからない。
でも、すごく嬉しかった。
周りに居る人は私だけじゃないのに、
その中から私を選んでくれたこと。
君にとっては、
たいした理由じゃないかもしれない。
両隣や前後の席の人が、
話しにくかっただけかもしれない。
忙しそうに見える中で、
私だけが暇そうに見えたのかもしれない。
適当に目に付いた人物が、
たまたま私だっただけなのかも。
それでも、選択肢の中から
私を選んでくれたことが嬉しかった。
君にとっては、
きっと些細なことだった。
でも、それは私にとって、
すごく大きな出来事だった。
本当に、すごく嬉しかった。
私と君が、友達として
接することの出来る最後の日。
でも、これが最後だった。
私にとって最高に幸せだった
1週間の最後だった。
まるで、これからの幸せを
全て1週間に凝縮したような感じ。
出来ることなら、
幸せすぎる1週間でなくていいから、
このまま普通の日々が続いて欲しかった。
いや、もし1週間で終わってしまうのでも、
それが分かっていたのなら、
もう少し何か違う過ごし方が
あったんじゃないかと思った。
けれど、私に未来を読む力などあるわけなく、
私はただ、この楽しい日々が
毎日続くのだと信じ、願っていた。