第4話
猛暑で暑苦しい夏休みも
あっという間に走り去り、
2学期に突入したある日。
残念なことに、
席替えをすることになってしまった。
授業中は2つ前の席に、
給食のときは隣の席に居た君とは、
この席替えで離れてしまうんだろうか。
今回の席替えで授業中、
隣の席になれる確率も
ないわけではないけれど、
そんな15分の1を信じるほど
ポジティブシンキングではなかった。
隣の席にならなくても、
同じ班になれなくてもいい。
だから、せめて私のほうが
君より後ろの席になってほしい。
そうすれば、授業中気づかれずに、
そっと見ることも出来るから。
そんな願いをこめて、
順に席替えのくじを引いていった。
全員がくじを引き終わったら
係りの合図で一斉にくじを開ける。
そして、女子から順に
新しい席を確認していく。
くじを開け、黒板の図で確認をして、
私は危なくくじを落としそうになる絶望を感じた。
真ん中の列の、一番前の席、
教卓の目の前。
寝ることも、おしゃべりすることも、
友達に手紙を書くことも出来ない最悪の席。
その席になれば多少なりとも
成績が上がるという噂はあるけれど、
やっぱり一番人気のない席。
先生の目の前だからノートも見られるし、
指名される確率も格段にあがる。
忘れ物をするとすぐにバレる。
前回の掃除担当に引き続き、
また貧乏くじを引いてしまった。
これで授業中眠れなくなってしまった。
今までは上手に寝ていたのに。
それに、まだ男子の席は分からないけれど、
これでもう授業中にこっそり見る事はできない。
両隣のどちらかになるしかないのか。
でも、それを願うという事は、
人気のない席になるように願うということ。
じゃあ、もういっか。
たかだか1ヵ月半の期間だし、
次の席替えに期待、かな。
「はい。じゃあ女子はこれで決定。
次は男子、順番に席言っていって」
係りの指示で、今度は男子が順に
席の位置を確認していき、
それが終わると同時に授業も終わった。
後でそっと確認してみると、
私の席の3つ後ろ、1つ右が君の席。
君の隣の席は、私の一番の親友。
親友は、私の『好きな人』を
唯一知っている人。
とは言っても、
結構噂になってしまっているけれど。
いつも否定しているから、
ちゃんと教えたのは親友ただ1人。
「隣の席になっちゃってゴメン。
でも協力するし、
絶対あいつを好きになる事はないから」
親友は席替えが終わった後の休み時間、
私のところへ来てそう言った。
「謝らないでよ。
協力はしなくていいからさ」
私は笑ってそう答えた。
わかってる。
誰のせいでもない。
隣になったから親友を恨むなんて、
そんなのただの醜い嫉妬。
でも、それでもやっぱり、
少しだけ悲しい気持ちになった。
君の隣が親友だったことなんて、
正直どうでもよかった。
ただ、あの楽しかった給食や
掃除の時間が終わってしまったことが
少しだけ、悲しく思えた。
「そうだ!休み時間とかさ、
私の席のところに来てよ。
そうしたら喋れるかもよ?」
親友が明るい表情で提案する。
私は笑顔で「ありがとう」と言いながら、
多分心の中では泣いていた。
親友の気遣いも嬉しかったけれど、
やっぱりあの時間が終わってしまって、
もったいなく思えた。
この頃から・・・
いやもっと前からかもしれないけれど、
私は自分の気持ちを隠すことが
得意になってしまった。




