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第3話

密かに芽生えた

『好き』という気持ちに

気づくきっかけは夏休みだった。



地域の色々な公園で毎週催される、

毎年恒例の夏祭り。


同じ部活の先輩や同級生達と

みんなで浴衣を来ていった時のこと。


会場となっている公園の

入り口の所で友達と会った私は、

バスケ部とサッカー部の2年生、

そして『好きな人』が来ていることを聞いた。


その時はまだ、

君の事を『好き』だとは自覚していない。


そして、『好きな人』が

『好きだった人』になっているのも

まだ自覚しては居なかった。


入り口で友達と少し喋った後、

分かれて夏祭り会場に入った私達。


みんなで色々な屋台を回り、

色々な友達と会って少し喋りながら、

私は無意識の内に探していたんだと思う。


バスケ部の中の一人である、君を。


『好きな人』じゃなくて、君。


今まで探していたのは

『好きな人』だったはずなのに、

探すのはいつの間にか君になっていた。


そしてしばらくして、

とあるたこ焼き屋の屋台の前の

バスケ部の集団の中で、君を見つけた。


その時、私は気づいてしまった。


この人ごみの中で会える確率なんて、

どのくらいか分からないはずだった。


大体、バスケ部が来ているといっても、

全員がそろっているとも限らなかった。


そんな、低い確率の中で

探していたのは君だった。


私が探していたのは、君。


私が会いたかったのは、君だった。


名指しで言われ、この場に

居ることが確実だった『好きな人』。


バスケ部というひとくくりの中で、

居るかどうかもわからない君。


そんな、会える確率に差があっても、

探していたのは君ひとりだった。


その時、多分私は気づいてしまった。


『好きな人』は、多分もうかなり前から、

『好きだった人』になっていたんだろう事。


そして、君が『好きな人』になってしまった事。


でも、その時同時になんとなくわかった。


根拠はないけれど、この恋は叶わない。


きっと君を好きでいる事は、

未来の私をひどく苦しめる。


もしかしたら、今みたいに

もう仲良くすることも出来なくなる。


そんな気がした。


けれど、気づいてしまった

この気持ちは止めることは出来なかった。


そうして私は、近い未来に起こる、

絶望と苦しみ、悲しみへの坂を

ゆっくりと転がり始めた。


坂を転がる小石は、

どんどんとスピードを増して、

最後は落ちて砕け散ってしまうことを、

私はまだ知らなかったんだと思う。

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