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第七話 黒い敵

 マヤは、カズミを背負っていた。

「全く、そんな身体なのに今まで無茶していたのね」

 昨日の敗走から、まだ一日しか経っていないのに、カズミは走り回ったり戦ったりしたのだ。悪化まではしていないが、怪我の治りは遅くなりそうだった。

 しかもリボルバーストは、三発の弾丸を一気に発射するために火薬の量を増やしてあった。本来なら反動を地面に逃がすように両足を地面に完全につける必要があるのに、馬上でそれをやってしまったのだ。右手は、ひじが全然上がらなくなっていた。

「また、迷惑かけた。御免なさい、マヤ」

「そんな事ないわよ。今回はカズミに助けてもらったし。実を言うとね、カズミが助けにきてくれるんじゃないかって、わたしは期待してたんだ」

「マヤ……」

 カズミは左手に力を込めて、背後から強くマヤを抱きしめた。

「痛つつつ」

「あら、マヤだって怪我してるんじゃないの」

 教会の屋根から落ちた時に、マヤも全身を強く打っていたのだ。

「あらら、判っちゃった?」

 マヤは、にっこりと笑った。

「お母さん、ありがとう」

 マヤの頭上から、ミリの声がした。

 子供達は、助け出したミリを含めて全部で六人。用心棒の馬とトムソンの馬にそれぞれ三人ずつ乗せていたのだ。

「わたし、全然怖く無かったよ。お母さんが助けてくれるって、信じていたから」

 そう言ってミリは、天使のような笑顔を見せた。

「うふふ、ミリったら。こっちおいで」

 マヤは、馬からミリを下ろして抱きかかえた。

「お母さん、大好き!」

 ミリは、マヤの胸に顔をうずめた。

「おい、俺の馬をまた勝手に使いやがって」

 トムソンは、自分の馬に子供達を乗せられて不満そうだった。

 マヤはカズミを背負いながら馬の面倒も見なければいけないので、縄で縛ったチンピラ達は、トムソンが相手しなければいけなかったのだ。

「大体、お前が本当の実力を発揮すれば、そんな怪我はハンデにもならないし、姑息な小細工したりガキを使ったりする必要もないだろうが」

「シルバー・ボンは、わたしではなくカズミなの。だからこれでいいのよ」

 マヤは、そう言ってカズミの頭を撫でた。カズミの笑顔は、幸せそうだった。


 一行は、町に戻って来た。

 ここで、問題になったのが、捕らえたチンピラ達だった。

 何しろ、保安官が用心棒をしているくらいなので、チンピラ達はどこにも突き出せなかった。

 ミリを馬上に戻したマヤは、用心棒の襟をつかんで頭上に持ち上げた。

「約束しなさい。あんたのボスに、子供達には本物のシルバー・ボンがついてるって伝えるのよ。いいわねっ!」

 マヤに凄まれて、用心棒は何度も首を縦に振った。

「うん、よろしい。わたしは、子供達を家に送るから、あんたはチンピラをアジトにでも送り返しといて」

 馬だけは返してもらったものの、トムソンは一方的にマヤに役割分担されてしまった。

「まったく、どうして俺が……」

 グチりながら用心棒をアジトにまで引っ張っていくトムソンだったが、アジトに近付くにつれて異変に気がついてきた。

「ありゃ、火事か?」

 アジトから、煙が噴き上がっていたのだ。

 ギャングのメンバーだと思われる男が逃げ惑っていたのだ、トムソンは声をかけた。

「おい、何があった?」

「何って、シルバー・ボンを名乗る奴が押しかけて……。あっシルバー・ボン様。どうして縛られているんで?」

 男がシルバー・ボンと言った瞬間、頭から血を出して倒れた。

「あら、そいつもシルバー・ボンって言うのね」

 倒れた男の背後には、見知らぬ女が立っていた。黒い服に黒いジーンズ、口に巻いてあるマフラーの覆面や目が見えないくらい深く被ったベレー帽までもが黒かった。

「シルバー・ボンは二人もいらない!」

 トムソンの横を影が通り過ぎたと思った瞬間、用心棒の胸にY形の傷がつき、渦を巻くように血が噴出した。

「まさか、本物のウインドミル!?」

 辺りを見回したが、既にトムソンは女を見失っていた。

「逃げた? いや、この町に用が無くなっただけか」

 本物のシルバー・ボンがこの町に来ていると知っていれば、わざわざギャングのアジトを襲う必要は無い。彼女は、偽者を一人退治しただけで満足したはずだ。

「どうやら命拾いしたようだな。俺も、本物の方も」

 トムソンは、用心棒の死体を放って町を出る事にした。

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