第五話 廃鉱の罠
カズミとトムソンは、保安官の事務所の前に移動していた。用心棒がシルバー・ボンを名乗っているのは、表の顔を隠すためだった。
「保安官が、用心棒の表の顔だったとはね」
「ああ、この町はギャングに支配されつつある。町長がなんとか頑張っているが、時間の問題だろう」
この町の命運なんていう大きなものとは、カズミは関わりあうつもりは無かった。しかし、偽者を倒す為にはギャング達とは一戦交える必要はあった。
トムソンが望遠鏡を持っていたので、今度の見張りは距離がとれて安全だった。
「何か、動きがあったぞ」
トムソンから渡された望遠鏡で、カズミも事務所を覗いてみた。
チンピラ風の男達が、縛られた少女を抱えて事務所に駆けて来た。少女の方は、さるぐつわのせいで声が出せないでいる。
「誘拐?」
しかし、少女の服は何日も洗っていないようにみすぼらしく、あまり誘拐するメリットが無いように見える。
「ここのギャングは地上げが主で、営利誘拐なんてしてないはずだ。人身売買だとしても、用心棒のとこに運ぶのがおかしいな」
事情を探ろうとしばらく様子を見ると、少女を連れて用心棒達が事務所から出てきた。
二三人はアジトの方に向かったが、殆どは用心棒に同行していた。
「あっちの方は、閉鎖した鉱山があるだけだぞ。ますます判んないな」
トムソンが首をかしげていると、既にカズミは走り出していた。
「おい、何をするつもりだ」
アジトへ向かっているチンピラを、カズミが追っていた。あいつらから力ずくで聞き出すつもりだと判って、トムソンも慌ててカズミを追いかけた。
町の西側の鉱山は、早い段階で水晶が枯渇して閉山されていた。
岩しかない荒地の真ん中に、マヤは来ていた。
「あのガキ達なんて赤の他人なのに、どうしてこんな所に来てるのよ」
ぶつぶつと文句を言いながらも、マヤはちゃんとビルからの伝言通りの事をしていた。
「そこにいるのは、判ってる! 出てきなさいっ!」
露天掘りで出来たくぼ地の中央まで来ると、くぼ地の上にある岩の陰から用心棒達がミリを抱えて現れた。その上馬まで一頭いた。用心棒の馬なのだろう。
「約束どおり、丸腰で来たようだな」
細身で長身の、荒野のサボテンみたいなシルエットの男が一歩前に進み出た。
後ろにいるチンピラの一人が、ミリを小脇に抱えていた。
「うー、うー!」
ミリが何か言いたそうだったが、さるぐつわのせいで言葉にならなかった。
「あんたが、偽者のシルバー・ボンね!」
マヤが、用心棒に向かって、指を突き立てた。
「そうさ、確かに俺はシルバー・ボンではない」
あっさりと用心棒は偽者である事を認めた。
「どうしてシルバー・ボンを名乗ってるのよ?」
「別に誰の名前でも良かったから、大した問題ではない」
用心棒達は、どうでもいい質問をされている事に気付いていなかった。全ては時間を稼ぐ為のマヤの作戦だったのだ。
「そのシルバー・ボンを名乗ったのが、あんたの一番の失敗ね」
「何? 失敗だと?」
「本物のシルバー・ボンは、偽者の存在を絶対に見逃さないんだから!」
本物のシルバー・ボンと聞いて、チンピラ達がにわかにざわめいた。
「黙れ黙れ! そんなもん、すぐに改名すればいいだけだろうが!」
用心棒が、チンピラ達に振り返って落ち着くように言った。
「戯言は終わりだ。とっとと片付けるぞ」
ようやく用心棒達は、本題に戻った。
「あら、できるかしら。言っとくけど、わたしは丸腰でも強いからね」
「そんな減らず口が、いつまで続くかな」
用心棒達は、全員ライフルを取り出した。
「ガキどもの味方になった事を後悔しながら、死ねっ!」
用心棒達が、一斉にライフルを構えた。
バン! ババン!




