第六話
「あれ、生贄の心臓が」
「あれ、うまく取れない?」
ロインは屋上の祭壇で悪戦苦闘していた。
もうロインの服は血まみれだ……
――みちっ、みちっ、ぐちゅっ!
腐肉と血の音が屋上に木霊する。もはやロインは傍から見ると邪悪な神官の姿そのものであった。
「ロイン、ちゃんと音楽の神に贄をささげたか?」
「なんだこれは!?」
祭壇は血まみれだった。羊が肉片と化している。
「ロイン!?」
「ごめん、僕……不器用で……」
それは見るも無残なスプラッタな光景になっていた……。
「ロインもしかして……」
「生贄の儀式は初めてか?」
「それもあるけど……」
苦笑いするロイン。
「にしてもひどい……」
「だれか替わりの生贄と清めの水を!!」
従者が慌てて清掃し、従者の一人が転移魔法で羊を連れてきた。
替わりにゾイが呼ばれ、ゾイが生贄の儀式を行う。
ゾイは羊を屠り、羊の心臓を黄金の皿に載せ呪文を唱える……。
すると蒼い珠が次々羊の体から飛び出し、ゾイが浮遊すると珠がゾイの体に入っていく。
「楽師長、生贄を捧げました」
「それじゃあ羊の皮を楽器に使うか」
「ロイン、落ち込むなよ。生贄の儀式は四天王か副官の誰かがやればいいんだから」
ゾイがなだめる。
「念のために言うけど前のダークキャッスルの時みたいに人身御供は厳禁だからな」
「分かってる」
「ロイン、もしかして不器用なのか?」
「……」
こうしてロイン伝説が新たに加わってしまった。