第八話
「この棒をフォークロアキャッスルに転移できるよう意識を集中させて……」
しかし何度も渦巻いただけで棒を転移させることが出来ない。
スミトは初級魔法である炎、風の刃の初歩、氷、魔石探しと魔石磨きを身に付けることは出来た。
しかし、初級魔法習得だけではベルダーシュとして認められない!!
「もう一回フォークロアキャッスルに行くかい?」
「はい、師匠」
こうして二人は何度もフォークロアキャッスルに行っては戻った。
そして訓練すること数か月。
ついにスミトは棒を転移させることができた。
「じゃあ今度は僕を転移させてみて。大丈夫。万が一転移事故が起きてもスミトを元の世界に戻ることだ出来るよう転移魔法は俺も習得済みだから」
スミトはロインの手を握りしめて転移魔法を唱えた!
渦を巻いて二人は消える。その行先は……
フォークロアキャッスルの入り口だった!!
「やったぞ~! 先生!!やりました!!」
「おい、この棒はお前らか。あ、ロイン様!!」
町の入り口にある宿屋の店主だった。
「あ、いえ。この棒は私達が掃除しますので…‥」
「あ、ごめんなさい」
スミトも謝った。二人で掃除をする。ロインの風魔法なら掃除もあっという間だ。
掃除が終わった。
「さあ、もう一回俺の手を握りしめて転移魔法を唱えてご覧?」
「はい、師匠!」
スミトはもう一回転移魔法を唱えた。その行先は……サムル村の入り口だった!!
「やったぞ!今日からお前は本物のベルダーシュだ!」
「先生!!ありがとうございます!!」
最後にスミトを連れて行って仮面を選ばさせた。
蟲の仮面と鷲の仮面、熊の仮面が飾ってある。
「ごめんよ、俺は仮面の作り方が分からない。だからこの竜の仮面はそのまま僕がもらったんだ」
ロインは懐から竜の仮面を取り出す。
(今思えば本当に竜の仮面を選んで本当によかった。空を飛べるし)
「残りの仮面は三つだ。どれにする?」
スミトは鷲の仮面を選んだ。
「本当にこれでいいんだね?」
「あとから基本的に変えられないからね。酋長の許可が必要だ。だからと言ってほかの仮面の呪文を忘れるってこともNGだ。そうしないと仮面に化身する呪文を後世に伝授できなくなる。その時点でこの仮面はただの飾りだ」
「はい、師匠」
スミトは鷲の仮面を身に付けて呪文を唱えるとばきばき音を立てながら巨大な鷲になった。
大空を飛ぶスミト……。
そして地上に降り立つと化身の姿を解いた。
「もうこれで教えることはもうないよ」
「師匠、ありがとうぎざいます」
酋長に終了の報告する。
酋長はただ「そうか」とだけ言った。
宴が始まった。ロインとハルは明日、この村を去らねばならない。
「荷物取りに何度も転移魔法使って着ていいかな?」
「明日中ならかまわないぞ」
「スミト、明日から君は親の家じゃなくて今日まで僕が住んでいた家に住むんだ。もう一人前なんだからな」
「はい」
こうして、ロインにとって本当に故郷暮らしの最後の夜を過ごした……。
翌日ロインとハルは転移魔法を使ってなんども荷物を運ぶ。
そしてすべての物をフォークロアキャッスルの入り口に運び終えた。
「酋長、お世話になりました」
「長生きはするもんだな。まさか三代もベルダーシュ交代を見られるなんて」
「はい、本当にお世話になりました」
「行くよ」
メイはレインを背負っていた。
「みなさん、お元気で!!」
ロインはメイの手を握りしめると転移魔法を唱えた。
闇の渦が巻き三人は消えた。
「さみしくなるのお」