第七話
ロインは新たなベルダーシュであるスミトに女装を施す。化粧の塗り方なども伝授した。
スミトは正直言って魔力の素質があるとはとても言えなかった。
もっとも勇者様と言われる自分と比べたらいけないということはよくわかる。
しかし、このままスミトがまともに習得できないと一年後にベルダーシュ解除となってしまう。それどころか俺もメイも部族追放になってしまう。
メイもこの村のベルダーシュである。魔石の探し方と作り方の魔法を伝授した。
土魔法の初歩の魔法のため、これはどうにかスミトは習得した。
(最悪、これでここは魔石を売ることが出来る。しかし「こんなの土魔法の初歩だ」と言われたら危険だ)
そんな時、ゾイとハルがやって来た。
「ロイン! もしかして! お前もとーちゃんか!」
「照れるな」
ロインは照れていた。
「ほら、挨拶」
ハルが子供に言う。
「ぼくはミルです」
「何歳かな?」
メイが尋ねる。
「二歳!」
「よく言えたな」
「それはそうと実はな、俺たち夫婦はフォークロアキャッスルに移ったんだ」
「へ?」
「新しいベルダーシュが誕生したんだ」
「不思議なもんだよ。村を追われて闇のベルダーシュになって、闇のベルダーシュをやめてお前と旅して捕囚の身になって、解放されて……そんな一度囚われの身になった城にもう一回俺は住むって言うんだからな。俺も変わり者だよな。今度は四天王の部屋に」
「えっ!? 本当!!」
これは運命なのだろうか。
「ロインが使っていた部屋もそのままだから。そうそう……実は俺もあと数か月後にこの村を去らなければいけなくて。ベルダーシュ夫婦の場合は夫婦ともに去る掟だし。だから君にも挨拶をって思ってね」
ゾイの意見にぐっときた。
「そっか、フォークロアキャッスルか……」
ロインはスミトを呼んだ。
「スミトと言います。皆さんよろしく」
「ねえ、君は転移魔法って覚えた?」
ゾイがスミトに聞く。
「まだです。というかこの村から離れたことなくて。他の村のイメージを焼き付けたら転移するポイントが出来るって師匠に教わったんだけど」
「じゃあ、転移先教えてあげる」
「ロイン、この子を一時的にフォークロアキャッスルに転移させていいかな?」
「いいよ。すぐ戻って来いよ」
そう言うとゾイはスミトの手を繋いで転移魔法を唱えた。闇の渦が生じ二人が渦とともにける。
数分後村の入り口に渦とともに二人が現れて、戻って来た。
「お待たせ~」
「これでこの子は転移ポイントを覚えたよ。あとは素質だな! じゃあ、俺たち夫婦は一足先にフォークロアキャッスルに居るからな。ちゃんと来いよ!!」
「ありがとう!ゾイ、ハル!!」
感謝の声を確認すると二人は闇の渦とともに消えた……。
「俺、転移魔法もゾイに教わったんだ。やってみるぞ!」
「はい、師匠!」