第三話
一頭の馬に乗った人が村にやってきた。
「助けてくれ!! ここに勇者が居ると聞いて!!」
「どうした?」
「私ははるか北方の部族です。しかし、今年はあまりに異常な寒波で……『ラディア』が行われています。勇者様、助けてください!!」
「酋長~!ロイン~!」
村人の声を聴いてロインは村の中央に来た。旅人の名前はシマラ。ベルダーシュは既に殺されてしまったとのこと。
「酋長、この大陸の北方ってどんな感じなんだ?」
「氷の魔界だ。人が居られる世界ではない」
「え?」
「それ以外よくわからないのだ。陸が続くのかそれとも海になるのか。巨大な湖が五つあってそれより北は寒冷な大地になる」
「酋長、俺にはもう代行者が居ない。つまり旅に出られないぞ」
「酋長様。ところでこれは?」
シマラが珍しそうに指を指す。
「ああ、これは水道と言って……」
「これはスゴイ。水汲みの仕事がなくなる。でも私たちの村じゃ水が冬季には凍ってしまう」
「そっか~」
ロインの水道敷設は北方では利かないようだ。
「これは?」
「これは調理器具で、よく見てて」
ロインがコックをひねると簡単に炎が出た。
「これもすごい!!」
「だろ!」
「これって二つ足すと温水作れませんか?」
「温水?」
「私たちの村々でベルダーシュが迫害されている原因は寒波です。ならば冬の寒さに打ち勝つものを作ればいいのでは? ……寒波が起きるのはベルダーシュの邪術のせいだと。でもこれならベルダーシュの術なら人間の恩恵になる」
「問題はもう一回この村に顧問になるベルダーシュを置く必要があることじゃ」
酋長の言うとおりだ。
「ごめんよ……この村から勝手に離れられないんだ」
ロインは困惑しながら言った。
「私たちを難民として受け入れることは可能ですか? もちろん開拓はします!!」
「酋長!」
ロインが詰め寄る。
「無理じゃ」
「ええ?」
「やっとこの村は生活が安定したんじゃ。こちらも飢餓になってしまう」
「そうですか……おじゃましました」
そう言ってシマラは去ってしまった。