第十話
「あ! 見ろ!! ロインと裏切り者のゾイが来たぞ!!」
見張り小屋の兵士が叫ぶ。
「みんな戦闘準備!!」
宿屋や道具屋、八百屋や肉屋、洋服屋の主人までずらっ並ぶ!
「お前らを死なせたくない。どけ!」
ロインはもう王者の風格を持っていた。
「何を!! ダークキャッスルの恐ろしさを知れ!!」
そう言って一斉に魔法で攻撃する。しかし見事に跳ね返された。
そして逆襲とばかりにロインの風の刃が次々炸裂した。
残ったのは数々の肉片であった。
見張り小屋の横にある牢屋を念のために確かめる。
「大丈夫だった。誰も居ない」
ロインは虜囚の者が居ないか確かめたのだ。
「よし。行くぞ、ゾイ!」
「おう!」
「ま、まずい!!」
ビーバーの闇の仮面の者は工場の門を閉め、そのまま魔石貯蔵庫となっている地下室に逃亡した。敵が逃げた魔石貯蔵庫へ深追いするのは得策ではない。危険物の塊である。爆発に巻き込まれる危険性が高い。
「工場は無視するぞ。このまま突撃だ!」
次に来たのは道場で学んでいる生徒と師範であった。
「実践訓練を行う!」
「「おう!」」
「やめろ! 君たちを死なせたくない」
しかしロインに対する返事は闇魔法であった。
ロインたちの手前で闇魔法がはじき返される。ロインはまたも光魔法でバリアを作ったのだった。
生徒に魔法が跳ね返っていった。生徒の阿鼻叫喚が響く。
「広域風の刃!!」
ロインは広範囲に風の刃を出した。次々首、手、足を切断されていく生徒……。
「覚悟はいいな?」
ロインは両腕を失っている師範に言った。
「我が……人生……に……悔いなし」
ロインは言葉を聞き遂げると風の刃で師範の首を切断した。
「行くぞダークキャッスルの内部へ!」
ロインは死体を見下ろした。
「おう!」
◇◆◇◆
「いよいよ来たようだな。ロインが」
帝王が窓から様子を見ている。しかし仮面を被っているため顔の表情は分からない。
「はい」
「あれほど警戒せよと言ったのにまるで役に立ちません」
ザイロは嬉しそうに言った。
「逃げた者も居ます」
「逃げた者は重罪とせよ」
「カイ!」
「はっ!」
「我の前の部屋を死守せよ」
「はっ!」
「ザイロ!」
「はっ!」
「三階の廊下で奴らと闘え……城は壊すなよ?」
それを聞くと闇の鴉の仮面は顔を伏せ小刻みに震えた。
「ふふふ、くくく」
ザイロは笑っていた。
「御意」
「それでは捕らえた少女を生贄に捧げ食らってもよろしいですかな」
「もちろんだ。存分に食うがよい」
「ふふふ、くくく、くくく」
洞窟の中で笑い声が響く。
最後の決戦が始まった。
<第五章 終了>