第八話
宿賃が無くなった……
とうとう二人は体がボロボロなのに外に出された。
杖を突きながら酋長の家にやってきた。
「まあ二人が居なかったらこの村は焼け野原だったし感謝するよ。ところで宿賃がないそうだな」
「……」
「この地にも農業用水道を作ってくれないかの?」
(どこまでがめついんだ)
「『ラディア』を無くすための旅なのだろう? ならばこのような大規模な村に農業用水道は不可欠。飢えで人がバタバタ死ぬ事もなくなる。その代わり、我が宿賃を支払おう。明日から仕事にとりかかってくれないかの?」
「ゾイ、転移魔法は出来るか?」
木材を運ぶには遠すぎるのだ。ここは大平原に位置する。
「いや、今はもう出来ない」
だよな……。
「酋長、お言葉はありがたいのですが今の我々には無理です」
ロインはこのセリフが精一杯だった。
「そうか。ならば早々に立ち去れ。そうそう……無銭飲食などやったら即捕まえるからな」
こうして二人はよろよろの状態で村を後にした。
「くそっ! くそっ!」
悪態をつきながら二人の旅が始まった。
――最後の樹が倒されたとき……最後の魚を食べた時……お金は食べられないと身に染みる時が来るだろう
「ロイ……ン止めなよ。酋長が死ぬかも」
それは呪詛である。ネイティブアメリカンの間で有名な呪文。金の亡者に対して呪う呪文であった。
二人はテントを張るのもままららない。
薬を飲みながらの移動であった。
カサタ村に来たときは村の全員が驚いた。
「勇者様!!」
ハルも駆け寄った。
「どうしたの!? それにカズヤは!?」
「死んだよ……。四天王ザイロに、討たれた」
二人は村の入り口で倒れた。
「だれか!勇者様の手当てを!!」
「ゾイも手当てするのかよ!」
「当たり前でしょ!!」
ハルは怒鳴った。
なおこのネイティブアメリカンの呪詛は本当に実在し後にノルウェーのアーティスト「オーロラ」が"The seed"という曲で2019年に現したことで有名です。今では環境問題でよく使われる言葉です。"The seed"は『Sky 星を紡ぐ子どもたち』のオーロラコンサートにも登場した曲です。