第六話
「俺の故郷……!」
宿敵を前に戸惑うカズヤ。
「カズヤ。心配することない。だが村がまるで変ってるとすれば転移魔法は……使えない。それこそエラーで異世界に飛ばされる」
ゾイの力では転移できない。
「じゃあ、どうすればいい!」
「ザーカ村だ! そこから俺は……馬に乗ってコミギ村まで行った」
ロインの提案は的確だった。
「最初ザーカ村で……俺……初めて簡易な水道を作って……自分は水道建設で世の役に立てられることを知ったんだ」
「ザーカ村なら転移できるか?」
カズヤは必死だった。
「出来る。出来るけど……僕たち体力がもうないよ」
ゾイはもう限界だった。
「転移事故起こすかも……」
それでも行くしかない。
「転移した後に二人だけここに戻ることは出来るか?」
ゾイはかぶりを振った。
「難しい」
この声に村人は一斉に悲鳴の声を上げた。
「「なんとかしろ! 勇者!!」」
「お前が戦わないとこの村は火の海なんだぞ!!」
「もし、何もしないというのなら俺たちがあいつに突き出すぞ」
なんという掌返しなのだろうか。
「わかった……」
「ゾイ、やっ……てくれ」
カズヤは申し訳なさそうに言う。
「いく……ぞ。手を……繋いだか? 転移事故は覚悟しろよ」
「ああ」
ゾイは転移魔法を唱えた。
数分後……
二人は無事戻ってきた。
「戻れた……ぞ」
そのままゾイは意識をまた失った。
「だれか!! ベルダーシュをもう一回呼んできてくれ!!」
◆◇◆◇
カズヤはザーカ村から急いで馬を借りた。
この時ロインが失ってしまった分の馬の代金まで要求された。
カズヤが代金を払うと急いでコミギ村を目指した。
コミギ村に着いた頃には夕方になっていた。
村の様子は全く変わっていた。
中央に祭壇があり、立派な木材で家が建てられている。しかし家の塗料が闇色だ。
「来たな……」
ザイロは闇色の鴉の仮面を外す。家から続々と闇のベルダーシュが出てくる。
「我は四天王の一人ザイロ! ロインの師! お前に一騎打ちを改めて申し込む!」
そしてもう一回闇色の鴉の仮面をつけた。
「お前ら、手出しするなよ」
闇のベルダーシュ達は黙ってうなずく。
「いいだろう!」
カズヤがそう言うと、互いがばきばき音を鳴らしながらカズヤは巨大な梟に、ザイロは巨大な闇色の鴉となった。
互いの怪鳥が咆哮を上げた。戦いの合図となった。