第二話
「まずは金棒を転移させるんだ」
「はい!!」
ハルは金棒に向かって転移魔法を唱えた黒い渦が生じ金棒が消える。
「よし、今度は俺が転移魔法を唱えるぞ。みんな、手をつないだか!」
「うん!」「おう!」
「行くぞ!!」
ゾイは転移魔法を唱えた。
四人はカサタ村に転移した。
ちゃんと巨大な金棒がある。転移魔法は成功だ。
村人たちは驚いてる。なにせ巨大な鉄製の棍棒にベルターシュが来たのだ。
「転移魔法、成功だ!!」
「ハル様!」
村人が集まって来る。
「みんな……ただいま。一年修業して戻りました」
ゾイが来ると村人は沈黙した。やはりゾイを畏れている。
「酋長に用事がある。二人と酋長だけにしてほしい」
「わかった」
こうしてゾイとハルは酋長の家に入った。
「酋長、ただいま戻りました」
「おお! ハルよ!!」
が酋長が隣に眼をやると途端に険しくなる。
「新しい闇のベルダーシュが居るみたいだな」
ゾイが酋長に言う。
「そうだ。お前さんはもしかして」
酋長がそう言うとゾイは闇の狼の仮面を被った。もっとも闇の僧衣は着ていないが……。口調で分かってしまったのだ。
「そうだ。俺は元・闇のベルダーシュ。ハルに闇魔法を伝授した者」
酋長は憎しみの顔となったがはっとして元に戻った。
「一騎打ちを申し込む。そしてハルが勝ったら俺もここを去る」
「いいだろう!」
ゾイは酋長の声を聴くと己の仮面を取ってから外に出た。
「闇のベルダーシュよ、一騎打ちを申し込む!」
ハルの声を聴くと闇の僧衣を着た者が外に出た。
「お前がハルか。裏切り者に伝授された魔法の威力なんぞたかが知れてるわ! 我はカミル。闇の狐のベルダーシュ! 村の外に出よ!」
「望むところ」
こうしてハルも蒼鬼の仮面を被った。
二人はばきばき音をならしながら変化した。
闇色の狐が飛びかかって蒼鬼を攻撃する。いとも簡単に切り裂く巨大な爪を持っている。
「ダークヒール!」
蒼鬼が言うとなんと黒き珠が闇色の狐からどんどん飛び出し蒼鬼に吸収されていく。蒼鬼は傷を修復していく。
「マグネット!」
そういうと巨大な金棒が蒼鬼の手に渡った。そして金棒を巨大な闇色の狐に振り下ろす。
しかし狐は素早く攻撃を避ける。
「ならば……隕石飛来!!」
そう言って覚えたての呪文を唱えると突如闇の空間が現れ次々闇の狐に隕石が降り注ぐ
「ぐぎゃああ!」
「今だ!!」
巨大な金棒を蒼鬼は振り下ろした。
闇色の狐の背骨を折った。狐の断末魔が響く。そして今度は闇色の狐の頭に棍棒を振り下ろした。
果物が砕けるような音がした。
終わった。
ハルは変化を解いた。ハルは金棒を持ちきれなくなって手放す。大きな金属の音がする。
「勝った!!」
闇色の狐の死骸の前にハルが言う。
「勝ったぞ~!」
ハルが雄たけびを上げる。
そして蒼鬼の仮面の者だけが村に戻った。
酋長に報告する。
「この村はベルダーシュの支配から抜けました。改めて今日からハルはこの村のベルダーシュになります」
そう言ってハルは仮面を取る。
村人が一斉に雄たけびを上げる。
――ハール! ハール! ハール! ハール!
そんなさなかロインが水道建設の提案を酋長にする。
「今日はなんて日だ! 皆の者!! 今日は祭りじゃ!!」
こうして宴会が始まり四人は歓迎を受けた。もちろん、ハーレムも。
五日後、水道は完成した。
「ハル、お別れだ」
ロインが別れを告げる。
「一年間、ありがとう」
カズヤも礼を言う。
「お別れなんて言わないで。それに水道のポンプに必要な雷の魔石が必要でしょ。だからいつでもこの村によって買ってね。いつでも待ってるから」
「そっか。じゃあこれからも寄って行くよ」
ロインは約束した。別れではないと。
「お前ら、また来いよ~」
「魔石は安くするからな~」
「ゾイさん!!」
「なんだハル?」
「いえ……何でもありません」
「そうか。じゃあ達者でな」
こうして一行は三人となった。
ハルは一人前のベルダーシュとなった。
村が視界から消えると……。
「なんか寂しいな」
「ロインが泣いてる」
「お前だって!! カズヤ」
「あ、これは目にゴミが」
三人は笑った。
いつまでも、いつまでも……。
旅はまだまだ続く……。