第十話
エルとイルはサムル村を訪れた。部下もつれてmだ。
ただし村人を刺激しないよう闇の僧衣ではなく普通の服を着て……。
「旅の者ですがベルダーシュはいますか?」
「あら? あなたもベルダーシュ? 顧問になったベルダーシュならいますよ。ほら、あそこ」
畑でなにか弄っていた。ハーブ園のようだ。
「カル……」
その声にカルは振り向くと驚いた。
「やはり…カル」
イルが畏れながら言った。
「ダークキャッスルの宝を奪いし楽師」
「お前たちはダークキャッスルから来たのか。やめておけ。命を落とすぞ。勧誘も辞めておけ。副官の地位も要らんぞ」
突如黒き炎がイルを襲った。イルの目の前で炎が止まる。
「我が欲しいの自由。組織などまっぴらだ」
エルとイルと部下は無言でサムル村を去った。
◆◇◆◇
ザイロは炎の中に居た。
男児の生贄を捧げ、闇の力をもらい受けたザイロはなすべき事をすべて終えていた。
「三日三晩……いいや一月ほど燃えるがよい。悪しきものは炎が全て浄化してくれる」
空に向かって両手を掲げる。
「ふふふ、くくく」
そう言って闇の鴉の仮面を被った者は闇の渦の中に消えた……。
◆◇◆◇
「あれ……」
ハルがが指を指す。
「炎だ!!」
ロインはびっくりする。
「森が燃えてるぞ!!」
「みんな変化して逃げるんだ!!」
そう言って四人はばきばき音を立てながら変化した
またしても蒼鬼を手で掬う竜。
「なんて広範囲な火災なんだ」
ロインはこんな焔の地獄絵図を見たことが無かった。
「森林火災だ」
ゾイは必死に炎のエリアを抜け出そうとする。
「このエリアを抜けるぞ」
そして梟が抜けた先に見たものとは……。
「見ろ!! 海だ!!」
果てまで来たのだ。
「本当だ!! 海だ」
蒼鬼がはしゃぐ。
「海!?」
ロインのサムル村は東海岸にほど近い。とうとう世界を横断したのだ。
「これがこの大地の端」
ロインはついに大地の端に来たことを実感する。
「ここが世界の終わり」
ハルは感慨深く言う。
「この先には島どころか何もない。海だけだ。本当に世界の端っこなんだ……」
ゾイも初めて見た。
「炎はもうここまで来ないな」
梟は目がいい。周りを確認する。
「海岸に降りるぞ!!」
こうしてロインたちは海岸に降りて変化を解いた。
「やった……」
「やった~!」
「世界のはじっこだ~!」
互いが抱き合って喜ぶ。
「証明するもの持って行こうぜ!!」
カズヤがロインに向かって言う。
「待って!? 証明つったて、何を?」
ゾイははっとなった。
「反対側の海には居ない魚とか、貝とか拾うんだよ!! そうしないと俺、ここに来た証明にならないよ」
ロインは嬉しそうだ。
「魚じゃ腐る。貝がいいだろ」
「ねえ、この小さい貝、いっぱいあるけど見たことないよ」
ナイス、ハル!
「本当だ。こんな貝見たことない!!」
ロインは貝に見とれていた。これが旅の成果になる。
「拾うぞ!!」
ゾイが早速拾う。
「私の旅も終わっちゃう」
「え?」
「だって私の旅は一年間だよ?」
「そっか、ハルの旅の期間は三年じゃない。一年だ」
ロインが旅して一年半。とうとう彼らは世界の端の海まで到達した。
<第四章 終了>




