第十話
エシマ村にやってきた。
お祭り騒ぎだった。
「どうしたんですか?」
ハルが興味ありげに聞く。
「酋長を裏で脅してる雀の闇のベルダーシュが居なくなったからお祭りになった」
「あ、それ俺たちが前の村で倒しました」
ロインが淡々という。
「マジか!?」
「勇者だ!!」
「『ベルダーシュの勇者』がこの村にお越しくださったぞ!!」
こうして四人は村人総出で酋長の前に強制的に(?)連れて来られた。
「おお! 勇者よ」
「大げさに言わないでください」
ロインは恥ずかしそうだ。
「闇のベルダーシュを倒してくださいましてありがとうございます」
「酋長、ところで我々は水道というものを作っておるのですが」
「何だね? その水道というのは」
ロインはまたもや概略で説明した。
「皆の者!! 今日は盛大にお祭りじゃあ!」
酋長の号令と共に村人は火を囲んでダンスなどを行った。
もちろん、ハーレムも……。
翌日、四人は建設の前にこの村のベルダーシュの家に寄る。
壁に飾ってあるのは人の仮面であった。ただし白く塗られている。
「人……」
ハルは嫌悪感を露わにする。
「骸骨を模したものだね」
男→女の中年ベルダーシュが答える。小太りでもう女装しても男の雰囲気丸出しだ。
「サミラだ。よろしく」
ロインは無言で頭を下げる。
「骸骨に化けると化けている間は死なない」
「へ?」
ロインはいまいち理解できなかった。
「だって、元から死んでるし」
へえ、とカズヤが驚く。
「僕の魔法は先祖様と会話する死霊術という」
ロインはびくっとなった。興味ありげに前のめりになる。
「場合によっては短時間だけど死体を動かせる」
「怖っ!」
ハルはますます嫌がった。
「闇魔法の中でも特殊な上級魔法だな。骸骨になってる間は死なない」
ゾイは淡々と説明する。
「おっ! よく知ってるね」
「このゾイさんは闇魔法の使い手なんですよ」
「骸骨を亡ぼすにはコアを壊すか浄化するかだ。だから案外強くない」
「なんだ……残念」
カズヤは残念そうだ。それでもロインは興味ありげだ。
「じゃあ、水道建設と行こうかね」
「ちょっとロイン~! あなたの仕事なのよ~」
ハルの言葉を無視してロインはそっと聞いた。
「師、降霊術は知ってますか?」
「なんじゃそんなことか。知ってるよ。それを覚えてどうするのだね?」
「実は……」
ロインの真剣さに三人は言葉を掛けるのを躊躇った。
ロインがようやくサミラの家を出た。
「悪い、悪い。それじゃ建設始めようか!」
サミラはロインを見て泣いていた。
こうして彼らは四日後に水道を完成させた。
「はあ……出来立ての風呂に入るのは最高だね」
「もう文句なしだね」
「あとは調理器具を一台だけ作ってこの村を去るか」
◆◇◆◇
――これが水道
――ではこの物質を水道に投げ込めば
「あれ? なんか眠くなってきた」
カズヤが眠たそうだ。
「お疲れなんじゃないの?」
ロインがからかう。
「水の色が緑色になってる」
ゾイが異変に気が付いた。
「まずい……もしかして」
「「大……ピンチ?」」
三人はそのまま浴槽で寝てしまった。
一方のハルも……。
「湯上りの牛乳って最高よね」
(ちょっと歯磨き)
ハルは口をゆすぐ。
蛇口から緑色の水が出てきた。
「なに……これ」
水に触ったとたんハルは強烈な眠りに襲われた。
「主人……」
しかし緑の煙に覆われて主人は返事が出来ずそのまま寝てしまった。
「バカな奴らめ」
「さて、こいつがゾイか」
闇色の鷹の仮面が口元に布を抑えながら冷酷にゾイを見下ろす。
「ゾイは頂いた」
闇色の鷹の仮面は浴槽に浸かっているゾイの手を握りしめてそのまま転移呪文を唱えた。闇色の鷹の仮面とゾイは闇色の渦を巻き、そしてこの場から消え去った。