第十二話
「三人はここで待ってくれ」
「だめだ。村の外からこっそりうかがう」
「……分かった」
そう言って闇のベルダーシュは村に入った。
みんな威圧感からか畏れを抱いている。誰も語り掛けない。
そして酋長の家に入った。
「酋長、話がある」
「なんでございましょう」
「奴を、ハルを試練の旅に出した」
「ええ!? そんな……」
「別に戦力になってないからいいだろう? 奴は闇のベルダーシュとしてさらに修業させるのだ。期間は一年。酋長、奴に試練の旅の許可を」
「わ……分かった」
「分かっているのならいい。ハルがこの村に戻ってきたときには闇の魔法を覚えていることだろう」
闇の者は酋長を見下ろしながら鉛色の声で嗤い出す。
「酋長、心配するな。この村は安泰だ。我が居る限り」
「はい、存じております」
「では許可はもらったぞ」
そう言うとゾイは家を後にする。
そしてゾイは三人のところに戻ってきた。仮面を取る。
「お待たせ」
「君に正式に旅の許可が出たよ。一年な」
「本当?」
「これで君は『抜け』じゃない。この村に戻ってきても殺されない」
「ゾイ、ありがとう」
「もっとも闇魔法を覚えるという名目での旅だから闇魔法は覚えてもらうぞ」
「少し、お前の事を信頼するぜ。少しだけな」
「ありがとう」
「じゃあ、旅を続けるか」
「もっとも次の村で服装を変えるぞ。俺は闇のベルダーシュであることを辞めたんだからな」
「おうよ!」
「了解!」
こうして旅の仲間はいつのまにか四人となった。彼らが向かうのはロッキー山脈、そこに闇のベルダーシュの本山がある。彼らに待ち受けているのは果たして何なのか。それはまだ誰もこの時点では分からない。
<第二章 終了>