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ベルダーシュの勇者  作者: らんた
第二章 ラディア
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第一話

 屋根に少々雪が残っている家が並ぶ村に入ったロインは村人の注目を一気に浴びた。


 美少年とも美少女とも見える姿。流し目でもされようなら思わず魅入るほどの美しさ。人はそれを魅惑とも邪視とも受け止める。だからベルダーシュはおそれられるのだ。人によっては邪視返しのペンダントを持ち顔は伏せるぐらいだ。なんせベルダーシュが睨みつけるだけで農作物を枯らすことが出来るなどという迷信を本気で信じているくらいなのだ。まあ、凄腕のベルダーシュともなると睨んだだけで人を催眠状態にするというから「ベルダーシュは邪眼の持ち主」というのはある意味事実だが。心の病にかかった者への対処はハーブ療法だけでなく催眠にかけることまで出来るののが凄腕のベルダーシュなのだ。ロインはもちろんそんなこと出来ないが。


 ロインは酋長に挨拶に行く。すると酋長が魅惑に憑りつかれてしまった。おいおい。


 「ロイン様……なんと美しいお方だ」


 「恐縮です」


 「ここは魔石が取れる炭鉱の近くだ。ゆえに様々な商人が居る」


 「本当ですね、豊かな村です」


 ロインは家具などでこの村が豊なことが分かった。


 「魔法の補助具も多数ある」


 魔導具でも豊かさが分かる。


 「今日はどちらに泊まるのかの?」


 「宿屋はありますか?」


 ロインがいま最も欲しいのは寝床だ。早く寝たい。

 

 「もちろんだとも。風呂もある。しかも温泉だ。ゆっくりしていきたまえ」


 「ベルダーシュには会えますか?」


 「会えるが今日は遅い。明日にするがよい」


 こうしてロインは旅で初めて宿屋に泊まった。久方ぶりの風呂であった。ロインは更衣室で化粧を落とし胸のパッドを外しタオル一枚で露天風呂に行く。ロインは「男」に戻った。


 風呂は露天であった。


 村人がこっそりのぞく。本当にベルダーシュなのかと。


 間違いなく男のあれがある。胸のふくらみが無い!! 明らかに第三の性を持つベルダーシュであった。


 「何奴!」


 ロインは柵の向こうに人の気配を感じ初歩的な氷魔法を唱えた。


 村人の悲鳴があちこち響く。村人は逃げ惑っていた。


 「やれやれ」


 空を見上げると雪がまた降って来た。


◆◇◆◇


 翌日ロインは町に出る前に化粧を久しぶりに塗った。まさに「化ける」とはこのこと。そして化粧するたび己の下半身が「自分が男である」ということを主張する。ロインは自分がベルダーシュであることを再確認する。ロインは再び美少年にも美少女にもなった。


 幸い、雪は積もるほどの量ではなかったようだ。移動に不便はない。


 魔石を買った。魔力の増幅度が違う。ついでにサークレットにはめ込む魔石を交換した。汗まみれのパットを捨て新しい胸のパッドを買った。また化粧も買った。


 そして姿を整えてからこの村のベルダーシュに会った。名はムエンという。


 一七歳の若者で男としての魅力が出せないまま逆に女としての魅力が出ているベルダーシュであった。


 仮面を見ると犬の仮面だ。壁に飾ってある仮面は一つだけだ。


 「犬か~」


 「そうなの。犬ってあんまり強くないよね」


 旅のベルダーシュにとって仮面の確認と仮面の呪文を覚えることは戦力増強につながる。この村は外れのようだ。


 「ところで君は風の刃の魔法で簡単な家まで作っちゃうんだよね?」


 「そうだよ。凄いだろ!」


 「その力で水道って作れないのかな?」


 「でも傾斜とかあるから途中までしか引けないぞ」


 「そこでポンプなんだよ」


 「ポンプ?」


 「雷の魔法を使って水車を動かす。すると傾斜があっても全然水を運ぶことが出来るんだ」


 そこでロインは樹を切り倒し管を作った。


 水汲みは重労働である。


この村初の水道が完成した。


 村人は大喜びであった。


 「風の刃の呪文教えてくれ!!」


 「いいけど簡単に習得できるものじゃないぞ」


 翌日ロインはムエンに教えたが一日で習得できるはずがなかった。


 「私、風の刃の呪文覚える。ロイン様。村のあちこちで『水道』というものがあることを伝授してください!!」


 「もちろん!!」


 ロインはこの時攻撃魔法以外で人々に恩恵を与える術を身に着けた。


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