第十九話
「敵対部族の魔術師が来ました」
「通せ」
ロインが言ったとき、やって来たのは明らかに我々とは違う服装の魔術師。杖の先端部分には宝石がある。
「この度は和平が成立し互いの生活が尊重されたのは喜ばしき限り」
「うむ」
四天王も副官もただただ見つめている。
「そなたらはどこから来たのじゃ」
「アイスランドから出発し、グリーンランドに植民した我々はここまでたどり着きました」
「もうスクレリング族との抗争はおやめいただきたい」
「お詫びの品がこちらです」
「カレンダーの石板か」
「たしかに受けとる」
「帰りは従者の転移魔法で帰るのだろう」
「はい」
「ヒミト」
「はっ」
「帰りも慎重に送ってあげよ」
「はっ」
こうして魔術師は去って行った。
「ふむ、これが異国のカレンダーか」
「石板だから、紙と違って後世に伝えられるね」
「何も魔法の類は掛かってないな?」
「はい。何も反応しませんでした」
「この絵は何だろう?」
「さあ?」
「まあいいや。俺の部屋に飾ろう」
ロインがもらった石板のカレンダー。ここに実はルーン文字が刻まれていた。
これによりロインたちが生きた時代が特定できた。ロインたちは西暦一〇一〇年頃に王となっていたことが分かっている。
カレンダーは曜日ごとに北欧の神々が掘られていたがネイティブアメリカンは誰も意味が分からなかったようである。
それだけではなかった。ネイティブアメリカンは当時のヴァイキングから西洋の武器を伝授されていたのだ。そしてその埋葬場所まで刻まれていた。
そして……。
「これが、異国の鎧!」
そう、ロインは異国の鎧を……つまり西洋の鎧に触れることまで出来たのだ。鎖帷子という初歩的な鎧であったが。南方のアステカ諸部族の鎧とも異なる。
「この鎧を宝物庫に入れておけ」
「はっ!」
「この杖はどうかな?」
「魔法を唱えて見ては?」
側近の意見に従い魔法を出してみると結構な威力の魔法を出せた。
「これは興味あるな」
「お前ら、ヴィンランドの奴らと交易するのだ」
「御意」
「レイン」
「はい」
「お前、一回植民地見てきたら?」
「えっ?」
「異国の食事を教わりに行くんだよ」
スクレリング族とヴァイキングは戦い、ヴァイキング側が負けたためヴァイキングは北米大陸の拠点を失ってしまうのです。これがもっと平和的に行われていたら北米の歴史は変わっていたのかもしれません。それどころか北欧神話の神々が今でも北米で信仰されていたのかもしれません。