第十八話
「ここが玉座かあ」
「なんからしくねえんだよな」
「まあ、慣れだよ、慣れ」
ロインはとうとう楽師長になった。
「ゾギオが座っていた場所に俺が座るのは複雑だな」
ロインがちょこんと座る。勇者ロインはこの時初めて玉座に座ったのだ。
「慰霊祭で引っ越しもままならなったぜ」
「お疲れ様」
「楽師長の部屋って玉座の後ろなんだな」
「つまり四天王としての仕事をするときは3階、妻に戻るときは後ろの部屋なんだよな」
「あまりメイに負担かけさせないようにしようね」
「うん」
「それは漆黒の竜、クロノスドラゴンなんだけど」
「元はダークキャッスルの至宝の宝なんだって!?」
「らしい」
「じゃあ戻って来たって感じなんだね」
「呪文、本当に正しいか1階に行って確かめてくる」
そう言ってロインは一階の広場まで降りた。
漆黒の竜の仮面を被って呪文を唱える。
するとばきばき音を立てながら変化したやはり蝙蝠の翼がばさっと降り咆哮する。尾が生じ口は裂け牙と爪が伸びる。鱗の色に若干差がある物のゾギオのダークドラゴンにそっくりだ。
周りが畏れおののく。
化身を解除すると元の姿に戻った。
「みんな、ごめんよ。脅かせて」
そう言って四階まで戻る
(やはりロイン様は楽師長なのだ)
(竜だ。竜王だ…‥)
「ちゃんとこの仮面の呪文は正しい姿に化身できたよ」
「今のうちにゾイに教えておこう」
「なんで?」
「俺には昔からの竜のほうがいい」
「あ、そうか」
「ごめんこのいつも使ってる竜の分の呪文もいいかい?」
「あ、あと幻惑の術も」
「いいよ」
こうしてロインは副官になったゾイに漆黒の竜の仮面の呪文と幻惑の術の呪文を教えたという。また竜の仮面の呪文も教えたと言う。
二つの竜の仮面は新しい住居となる部屋の壁に飾られた。