第十三話
レインの番がやって来た。レインは十二歳となった。
三階に行き幻惑魔法をかける。
四階で楽師長、副官、四天王が水晶を通して試練を見る。
「さて、レインはどうかな?」
「十分経過」
レインは何度も同じ場所に行くだけだ。
「二十分経過」
(レイン……)
そしてなんとレインは違う方向に行ってしまう。
かつて旧ダークキャッスル時代にゾイが閉じ込められた場所。
今でもベルダーシュが極悪な犯罪を犯した場合当人を閉じ込める場所へ行こうとしてるのである。もっともそんなバカは出たためしがないが。
「だめだ!!行くなレイン!!」
しかし水晶に呼びかけても無駄である。レインは閉じ込められた。
「レイン!!」
「あと八分。もちろん不合格ですが、ロインあと八分待ってください」
「レインがかわいそうよ!!」
メイが言う。
「だめだ。これは試練なんだ!!」
楽師長が言う。
そして三十分経過。砂時計が三つもとも時を告げるのを終えた。
「行くぞ、助けるんだ」
そしてセヤが果物をなぜか持ってまず幻惑の術を解除し、次にカル楽師長が施錠術を魔法で解除した。セヤは壁に埋め込まれている水晶を撤去した。
「怖いよう!! 怖いよう!!」
扉の向こうには泣くレインの姿が。
「レイン。君を失格とする」
カル楽師長が言う。
「もう一回チャンスを与えてください」
レインが言う。
「だめだ。これが本番なら君は死んでいた」
セヤが言う。
「この幻惑の術を作っているこの水晶は……」
セヤが果物を置き、呪文を唱えるとなんと緑色の水晶から光線を発し果物を真っ二つに割った。
「このように君も真っ二つだ」
「光線は最大四本出せる」
「これは模擬だから君は生きているのであって、本当はこの光線の餌食になって君は死んでいた……」
「さあ、明日からも普通の生活していくんだよ」
泣き崩れるレイン。両親はレインを抱えながら自分の部屋に連れていく。
翌日……。
レインは四つの職業を選ぶ必要があった。
商店、農業、洗濯従業員、食堂従業員である。
「今までレインがしてきたのは農業従業員補助だからね。同じ農業と思わないでほしい」
レインはうわのそらだった。
「職業は勝手に変えられない」
「一生このお城とその周辺以外出られないの?」
「そんなことないんじゃないかなあ?」
メイが予想外の事を言った。
「なんで? 出来ないでしょ?」
ロインが言う。
「最近大陸中を旅する楽師団はここの村の味と同じ料理を出してくれっていうよ。だから転移魔法を唱えられる術者とともに旅行して覚えてくる。特に最近はスイーツね!」
「へえ」
「じゃあ、ぼく、食堂やりたい」
「一番厳しい仕事だぞ」
「それでも、構わない」
「皿洗いだけで五年かかるかもしれない。お父さんその間に死ぬかも」
「え? セヤおじいちゃんは長生きしてるよ」
「セヤは特別だよ。ほかにおじいちゃんって呼べるベルダーシュ居たかい?」
「あ……」
「僕は衛生事情も食糧事情もよくしてきた。それでも寿命を延ばせたのは十年程度だよ」
「ロイン……こんな時だけどちょっといいかな」
「ああ」
呼ばれてロインは四階に行った。
「もうこの手の試練は使えない」
「ネタばれになるからな」
「新たな試練方法を考えないといけないんだ」
「幽霊を出して恐怖におびえないかという方法に変えるんだ。それも地下の墓場でね」
「そう……」
ロインは上の空だった。
ロイン、この時三六歳である。