第十一話
「セヤ、話って何?」
「また賭け事教えたって話はなしね」
「違いますよ」
「もうそろそろお子さんが試練を受けるでしょう」
「その前にもういい加減に言わないとって思いまして」
「……」
「私は南のソミタ村のベルダーシュでした」
「よく暴風雨が起きるので、暴風雨が起きるのはお前の邪術のせいとされたのです」
「そんな私を救ったのがザイロ様です」
「私は以来闇のベルダーシュになります」
「無限回廊を作るとき、この緑の魔石を壁にはめ込み呪文を唱えます」
「ザイロ様の侵入を阻むときにやったこの術……」
「実は光線を出して人間を真っ二つ、いやコマ切れに出来ます」
「え?」
「まさかうちの子にもそんなことしないだろうな」
「しません」
「よかった」
「けど模擬戦の試練はともかく本当はあなたたちも光線を食らっていたんです」
「でも私は出来なかった。逃亡したんです」
「ロイン様のようにバリアを作れる者はこの光線を跳ね返し、術者のほうに向かっていきます」
「最も壁はすり抜けられので消えます。しかしまっすぐ跳ね返った場合はザイロ様に向かいます」
「……」
「でもそんな理由ではなく私は単純に我が身だけをまもるために逃亡したんです」
「そして私は地下一階に逃げ、奥で幻惑の術をかけ壁があるように見せかけて自分は震えながらうずくまっていました」
「数日後、私はキャッスルの中をのぞくとカル様がいました」
「そして私にこう言ったのです」
「その力、今度は人のために使え」
「我々とともに来い」
「でないと、殺す」
「……」
「漆黒の竜の仮面を被って凍る声で言ったカル様を畏れて私は、従いました」
「そうだったんだ」
「以来私に付いたあだ名が『恥のベルダーシュ』です」
「そんな私がサムル村でこの術で残党になった闇のベルダーシュを駆逐したのです」
「三十人ほど、細切の肉にしました」
「この術は本当は残酷なものです」
「幻惑の術を規定以内の時間に破ることが出来なかったら、お子さんは別の道に歩まれた方が幸せです」
「でないとまた戦乱が起きた時、この程度の魔法も見抜けないと、光線の餌食になります」
「……」
「人間、ベルダーシュになるだけが幸せじゃない」
「商店や農家のほうが幸せだと思う」
「我々ネイティブアメリカンは決定権以外ベルダーシュと一般人に身分差なんてないのだから」
「そうだね」
「覚えておくよ」
「ありがとう、セヤ」
「ロイン、セヤ、あのね」
「なんだいメイ」
「私だってあなたから逃げたことあったの」
「闇のビーバーの仮面をかぶって戦えと言う命令を無視して厨房機器作ってる工場を閉じて自分だけ地下に逃げたの」
「あのときの闇のビーバーの仮面は君だったんだね」
「そう。今でこそ闇色の仮面を塗り潰したけどね。私はあなたと結ばれて本当によかったと思うよ」
「恥のベルダーシュはあなただけでじゃない」
「メイ、ありがとう」
「それとロイン様、無限回廊の呪文を教えます。これが無いと試練が出来ません」
「ありがとう」




