第十話
「はい、今日も終わり」
「ありがとうございます」
子供もミルとレインは10歳と8歳になっていた。まだ重労働は出来ないが農場で働くには十分だ。
ベルダーシュ同士の結婚は珍しいのかミルとレインの2人だけだ。片親がベルダーシュというのはありふれているが。このためベルダーシュじゃない者は農業や商店を営むのである。
「あらあら、今日もこんなに汚れちゃって」
洗濯も今や分業体制になってきている。洗濯は今や非ベルダーシュの稼業だ。ロインは1階に洗濯工場まで作ったのだ。
「この子たち、いよいよ試練の年齢まであと二歳、四歳だな」
「この子、ちゃんと試練を超えられるのかな?」
ゾイ?
「うちの子はベルダーシュになることを望んでるよ」
「へえ」
「やっぱ魔法はあこがれるって」
「それにここフォークロアキャッスルは暖房器具や調理器具売って儲けてるしな」
工員は呪文を掘る工程があるため非ベルダーシュはなれない。もっともローテーション制だ。ずっと工場従業員というわけでもない。楽師団は工場の従業員になるだけの存在じゃない。それ以前に土魔法が出来ないと工場にかかわることも出来ない。もっともほぼ全員が土魔法の初歩は習得できるが。
「レイン君はどうするの?」
「俺の子かあ……まだ何も決めてないよ」
「そろそろ聞いておいた方がいいよ」
◆◇◆◇
食堂で食事を終えて四天王の部屋に戻る三人。居室に入ってくつろいだ。
「ねえ、レイン。君はベルダーシュになりたい?」
ロインははじめて聞いた。
メイは驚いた。
「う~ん」
「……」
「なりたい」
「いいのか? お前、女装するんだぞ?」
「女装、嫌がる人だっているんだぞ。女装すること嫌がったらベルダーシュ失格になって元の男に戻るんだぞ?」
「だって、かっこいいもん。お父さんみたいに呪文でどっかーんと岩を壊したい」
「そっか」
我が子は試練受けることが決定か。
平和な日々が続いたロイン一家とフォークロアキャッスル。ロインはこの時30歳になっていた。
楽師団がフォークロアキャッスルに戻って来た。音楽の余韻からか入り口の広場で音楽を披露しながら踊っていた。いつもの光景がそこにはあった。