2話 エルミナ視点
次の日。この人を助けるのは何だろうと考えつつ、自分の利益にもなることは何だろうと考えました。すると一つの結論が出ます。
「パーティを組む...」
私もエルフの国で冒険者を少しやっていました。そのため冒険者ではあります。だからこの人とパーティを組んだらお金は入るし、この人にもお礼ができると思いました。ギルドに向かい昨日の人を見かけたので話しかけます。
「昨日はありがとうございました!」
「気にしないでください」
「もしよろしければパーティを組みませんか?」
「え?」
普通こんな反応をされるでしょう。昨日助けたばかりの人にパーティを誘われたら驚くのは当然です。私だったら断っているでしょう。非常識なことをしているのはわかっています。それでも今はこの選択しかないと思いました。すると思いもよらない返答が返ってきました。
「俺の職業は預言者ですけど?」
それを聞いて唖然としました。預言者? 聞かない職業...。でも昨日助けてもらって思いました。この人は強いし、信用できる人かもしれない。だから...。
「職業なんて関係ありません! 昨日助けてもらえたことが嬉しかったのです! それに前衛としてちゃんと動けてましたから、私は職業とかは気にしません!」
「その申し出はありがたいのですが、遠慮しておきます」
「なんでですか?」
「俺はあなたを信用していません。もしパーティを組んで俺を置いて一人で逃げだされてしまったら? もし俺が大けがをして戦闘ができない体になったらパーティ解散されたら? そう考えると、一人で冒険者をやった方がいいと思いましたので」
「...」
その一言で私がやっている非常識なことをやっと理解します。私のことばかり考えてこの人のことは考えていない。何をやっているんだろう...。
私はやっと自分の立場を理解したので、明日もう一度会う約束を取り付けて宿に帰りました。私の身分を言うべきか...。言ってしまったらこの人も私の問題にかかわってしまう。でもこの人とパーティを組みたい。今でも自己中心的なことをかんがえているのはわかっています。それでも。それでもこの人ならって考えてしまう。
次の日になり、私の身分を明かします。王族しか持てないネックレス。それと王族しか持てない身分証明書。それを見せるとその人は納得してくれて、パーティを組んでもらえることになります。パーティなのに名前は知らない。そして敬語は今後の影響になると思ったので言います。
すると少しクリスが私に対して少し引き気味に会話できるようになりました。少し不満ですが最初だからしょうがないと思いつつ明日から冒険を一緒にします。
翌日アンデット退治を行く際も敬語を使われたので、私が少し威圧的に言うとクリスが言葉を崩して話してくれて嬉しかった。こんな気持ち初めて。対等に話せる友達が今までいなかったから。誰でも私に対して敬語。そんな人生で暮らしていたのでクリスの言葉一つ一つが新鮮です。
でもそううまくも行きません。クリスが私に過去を問いかけてきます。なんて答えていいか分かりません。もし話してしまったらクリスを危険にさらす。クリスがパーティ解散を言うかもしれない。でも話さなくてもパーティ解散といわれて決意して、今までのことを言います。そしてパーティは組まなくていいとも言いました。
ここまで話してクリスはパーティを組んでくれると言ってくれて嬉しかった。私を信用してくれた。それに応えなくちゃと感じます。
アンデット退治で実力を発揮しなくちゃと思いましたが、はっきり言ってクリスは化け物です。スケルトンをあんなに簡単に倒しつつ、リッチの警戒も怠らない。私が援護しきれないところはクリスの魔法でカバーしている。
(本当は私いらないんじゃない?)
休憩をはさんでいる時、クリスが私に早くここから出るぞと言ってくる。そんなこと言われてもすぐはい、分かりましたとはいきません。ですがクリスの言葉一つが心に刺さります。
「俺を信じろ」
クリスを信じてその場を去ると数分後にはその場はスケルトンの大群になっています。あの場に居たら...。そう思うとゾッとします。クリスに感謝しているのと同時にクリスのことをどんどん知っていきたいと思い始めます。
ギルドでクエストの報告をして帰ろうとしたら、クリスの知り合い? と会います。クリスは下を向いたまま何も言いません。
(これがクリスの問題...)
私はそう思い、この人を守りたい。そう思い、その女の人と討論します。すると勇者と名乗る人にパーティの申請をされます。直感が言っています。この人はやばい。何か人が人じゃない...。昔の私ならすぐに了承していたかも。それでも今はクリスがいる。だからこの申請も断るとクリスが不安そうに言います。
「なんで。なんでアメリアのパーティに行かなかったの?」
アメリアって言葉を聞いて少し胸がチクりとします。クリスが抱えている問題の女性はアメリア。何があったんだろう? でも今は聞けない。人の気持ちに土足で踏み込むようなもの。そのようなことをして今の関係を崩すのは嫌。
クリスの疑問の回答は簡単。クリスと一緒に冒険したいから。初めての仲間といっぱい話したい。それにあんな顔をされてあっちのパーティに行った後のクリスを考える。クリスの立場なら私は耐えられない。だけど今のことを言うのは恥ずかしい。だから今の部分以外の本音を言う。するとクリスからお礼が言われる。
お礼は私が言いたいよ。私の方こそありがとう。私がエルフの姫ってわかっても普通に接してくれてありがとう。パーティを組んでくれてありがとう。クリスには感謝しかない。だから私はこの人を裏切れない。いや、裏切らない。この人こそいいパートナーになってくれると思うから...。
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