宝石の鏡
学校からの帰り道、いつもはなかった筈の小さな店が目に入る。雰囲気も良さそうでついつい覗きたくなってしまった。
-チリンチリンー
木製のドアを押すと可愛らしくベルの音がなった。店内には誰もいないみたいだ。
「すみませーん」
と声をあげるが応答がないため恐る恐る店内に足を踏み入れた。店の中に入った途端、胸が高まり笑みが溢れる。
店内には頑丈に鍵の掛けられた本にカタカタと動くトランク。どれもこれも見たことのないようなものばかりが置いてある。
目に入ってきたのは縁が宝石で装飾された美しい鏡だ。表面には傷一つない。窓からの光に照らされ、店内には色とりどりの光がばらまかれたようになっている。
思わず吸い込まれるように鏡に触れる。指紋とかつかないかな……。
そんな心配をしながら本当に吸い込まれちゃったりしてなんて少しわくわくする。
「なんてね…………え?!」
本当に吸い込まれているのだ。いや、冗談抜きで。優しく触れたつもりがもう手首まで鏡に飲み込まれている。
「ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って!!」
人を呼ぼうとしたとたん鏡に飲み込まれている手首が誰かに引っ張られ、バランスを崩し頭から鏡に突っ込み、飲み込まれてしまった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「という訳なんですよ」
今までにあった出来事を目の前の美少年に話す。
こちらの美少年は僕が倒れていた所を起こしてくれたのだ。
「なるほどのぉ……それでこんないつモンスターに喰われても仕方がない草原のど真ん中に寝ておったのか」
後ろに束ねている髪を揺らしながらウンウンと頷く。
いや、モンスターに喰われるって……怖!
「ところで少年。この後どうするつもりじゃ?」
この後…………この後!!どうしよう?
「ホォッホォホォ、宛はないようじゃな。それならばまずは魔宝石を取りに行くがよい。異世界から来たとて16歳ならばなんとかもらえる筈じゃ」
魔宝石か~!中二心がくすぐられるな。
「それじゃあの。少年!」
颯爽と去っていこうとする美少年。一つだけ聞いておきたいことがあったんだ。
「すみません。何歳ですか?」
「……秘密じゃ♡」