そして、彼女と出会った
届け!現代社会人!
ドアを開けると、風が強く吹き込んできた。
押し返されそうになるが、肩を扉に押し当てて外にでる。
まだ深夜と呼ぶには早い時間だが、周囲のネオンに照らされた屋上は薄暗く、なんとなく寂しさを感じた。
四方を金網のフェンスで囲まれた屋上の正面奥、少女が立っていた。
いや、少女というには大人びており、女性というには若すぎた。
はっきりとは見えないがおそらくセーラー服を着ているのだろう、風にスカートとリボンがなびいている。
どうにも弱った。先手を取られた。
セーラー服の女に近づくと、彼女が振り返った。
「こんばんは、キャンディはお好き?」
彼女はそう言って、ポケットから飴を取り出した。
今時の娘は飴を常備しているのだろうか? 若い子の流行などわかる気がしない。
「あ~、――こんばんは、甘いものはそんなに好きじゃないんだ」
遠回しに断ると彼女は「そう」とだけ呟いて、取り出した飴を自らの口に含んだ。
彼女の隣に立って、金網のフェンス越しに街を見下ろす。
街はまだ賑わいを見せており、ときおり笑い声や誰かを呼ぶ声が聞こえる。
にぎやかで、明るくて、こちらとあちらでは別世界だ。
「いつからここに?」
「そうね、大体30分前くらいかしら」
こんな風の吹き荒ぶ何もない所での30分、彼女には長かったのだろうか? 短かったのだろうか?
横をみると、明かりに照らされた彼女の顔が見えた。
正直驚いた、思ったよりも、いや、正直俺の想像を遥かに超えて彼女は美しかった。
滑らかできめ細やかな肌、マッチが何本も乗りそうな長いまつげ、髪型は黒のロングで前髪をぱっつんにしている。
妙に赤い唇が、やけに目に刺さる。
「聞かないのか?」
主語のない言葉だが、不思議と彼女には通じる気がした。
「ええ、だってあなたも私と同じでしょう?」
――ああ、やはり、彼女は俺と同じ。
「死ぬためにここへ来たんでしょう?」
飛び降り自殺が目的だった。
本小説は連載の形をとりますが、1万字程度の予定です。
本来は書き上げてから投稿するべきとも思いますが、私のモチベーションの為、連載の形を取らせて頂きます。(書き上げてから投稿しようとすると私のPC内でエタります、ました)
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