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悪魔の装飾品  作者: 風木 冬芽
第二章
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第十話

第十話


おや?と三人仲良く首を傾げた。もっとも、この変態とは仲良くないんだけれど。

「一本道、だったよな」

「ああそんな、どこへ消えてしまったんだ天使よー」

どうやら相当悔しかったのか、嘆いている、いや、もうすでに泣いている。

「あなた、結構引くレベルで変態ね。それと、私の足にしがみつくのはやめなさい。気持ち悪いわ」

「そんなこと言わないでくれよぉ。うわああああん」

どうやら俺たちは、妖怪よりもよっぽど怪な変態女子高生と遭遇したようだ。

「私のスカートで涙を拭かないで」

「水玉か、今日の私とお揃いだな」

「近くに思春期真っ盛りの男子高校生がいるのに人のスカートを勝手にめくって下着の柄を大っぴらに大声で言わないでちょうだい。近所でも噂になってしまうでしょ、あの可愛い毒舌の女の子水玉なんだって。って。私はこのキャラで頑張っていきたいの。邪魔しないでくれる。いや待って、意外とギャップ萌えしたりして」

こいつもこいつで本当にご近所さんやそれでなくとも通行人に聞かれかねないのによくもまあこんな下品な話ができるな。最早感心するよ。

二人には是が非でも改心して頂きたい。

「確かに、萌えるな。よし!もう少しだけ拝ませてくれ」

「はあ、仕方ないわね。もうすぐそこに、私たちが働いているオシャレ可愛いカフェがあるからそこで。って言うわけないでしょ。まあでも、談笑くらいならしてあげても構わないわ」

断固拒否したい。にしても明日間は妙なところで優しさを発揮してくるから、いよいよ方向性が分からない。

さしずめ、ツンデレキャラを目指そうとでも考えているんだろう。

…割と似合ってるよ。

おっさん不在の今、残念なことに学生のアルバイト三人が学校帰りに店を開けざるを得ないため営業時間が短くなり赤字続きだが、あのおっさんはどこで稼いでいるのか相当持っているようで、どれだけ赤字だろうと営業自体に全く支障がない。どころか給料は相当いい方だろうし、おまけにアパートまで貸してくれるんだから相当気前がいい。

そして、そこがまた胡散臭い。

「あれっ!なな先輩じゃないか。もしかしてなな先輩もここでバイトしているのか?これは驚いた。学園のスターである水面ななが、まさかこんなにもオシャレかっこいいカフェでバイトしているだなんて、みんなが知ったら驚くだろうなあ。ふふふ、私に見つかったからにはタダでは返さないぞ」

と、カウンターで作業をするななとどうやら知り合いらしい様子で、元気ハツラツに変態淑女は話しかけた。

「あら、あなた達知り合いだったの。へえ、ななさんあなたそういう友達がいたのね。なるほどなるほど、今後の接し方について考えさせてください。それとタダで帰れないのはあなたの方よ。たっぷりと飲んでもらうわ」

「なんだかよく分からないけど、仁火斗、どういうこと?」

俺は懇切丁寧に一連の出来事をななに説明した。

「ああそうだ、私の自己紹介がまだだった。私は花晴女子学園1年C組陸上部所属の 神前 陽だ!ここであったのも何かの縁と言うもの。よろしく頼むぞ」

「私は景影高校一年二組 明日間 美来 よ。好きな風に読んでちょうだい、できれば敬称に様とつけて欲しいわ」

「お前、それ毒舌ツンデレキャラじゃなくてただの鬱陶しいモブキャラみたいになってるぞ。お前の読者からの好感度はきっと下降の一途を辿っているところだぜ」

「嘘、私ったら、ああー恥ずかしい。でもね、あなたにさえ好感を持ってもらえれば私は他の誰からも嫌われる覚悟よ」

「俺からの好感度なんて最早底辺だよ。行き着くところまで行き着いたよ」

「明日間ちゃんもなかなかの変わり者だな。はっはっはっ!」

「陽に言われたらおしまいだね」

ななは笑顔でケーキを作りながらそう言った。

器用な人だ。

「俺は波空 仁火斗、明日間とは同じクラスだ。よろしくな」

「うむ。こちらこそよろしく頼むぞ」

幸いにもまだお客さんが来ていないので、ある程度大きい声で会話していても大丈夫だが、果たして客が来ていないことを幸いと言っていいのだろうか。

「なあ、学校でのななってどういう感じなんだ?さっきスターとか言ってたけど」

「ああ、水面先輩はスポーツ万能成績優秀、おまけに超美人だからな。全生徒の憧れなのだ。ファンクラブもあって、他校の男子生徒はもちろん、うちの女子生徒からも告白されるほどの女神だ」

女神とか天使とか、こいつなんでもかんでも神格化するのかよ。

「買いかぶりすぎだよ。私は普通の高校生だし、そんな女神だなんて言われるほどじゃないよ」

すごい嬉しそうな顔してるじゃん。満更でもないどころか、ご満悦じゃん。

それに、普通の高校生っていうのは流石に嘘だ。

なぜなら俺たちは悪魔だからだ。

「いやいや、謙遜することはないぞ水面先輩。何を隠そうこの私もファンクラブの一員であるからな。もっと言うならば私がファンクラブを設立した張本人だ。激レアなお宝生写真だって持ってるぞ。はっはっはっ!」

「あなたとんでもない趣味してるわね。ご家族の方は心配にならないの?」

「疾病な、じゃなくて失敬な!」

「そんなに可愛くない噛み方があるか!」

「またまたそんなこと言って、本当は仁火斗くんだって欲しいんじゃないのか、激レアお宝生写真。友好の証に差し上げよう」

頂戴したのはあられもない格好で、それでもなお格好つけている神前陽のサイン入りの写真だった。

「って、これお前の写真じゃねえか!少しでも期待してしまった俺のドキドキワクワクを返せよ!」

「仁火斗、さすがに今のは擁護できないし、普通に引くわ」

「仁火斗もそういう年頃かー」

ななにまでこの対応をされるなんて、とんでもないキャラ設定の女子高生が現れたもんだ。

あーあ、神前陽のせいで俺のイメージがダウンした。

よし、イメージチェンジしよう。



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