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2019年 女子会とコイバナは続く(1)

 




「さきなちゃんあたしそれめっちゃ興味ある。いったいどこで知り合ったの?」

 真亜子はぐっと体を前に突き出して咲菜の方に体を乗り出した。

 着物を着た小柄なおばさまがた二人が店に入って周囲を見回す。普段から着物で生活している人でなければ出せない物腰でレジに向かった。

「知り合ったのは普通に友達の友達だよ。一緒に遊んでる子たち」

 その彼はお世辞にも整った顔立ちとは言えず背丈もないが、女子に嫌われている様子はなかった。

「あたしそのころ、やけになってて…律くんにふられたばかりで」

 真亜子がのどかに首をかしげる。

「あれ?でも彼、ずっと前から彼女いるって言ってなかった?」

「違うの、いないって言ってたの!その時は確かにいないって言ってたの!」


 多少むきになるのはかつてあった恋心を正当化したいのか、咲菜はその時好きだった男の子の顔を思い出そうとしたが、既にぼんやりとくすんだ霧に包まれていた。

「それでやけになって、慰めてもらってるときに僕だったら良かったのにって言われて…勢いでいいよ付き合ってもって言っちゃったんだけど…」

 彼はお笑い芸人ばりに笑わせるが人の悪い冗談は決して口にしなかった。

 腰が軽いから皆には何かと便利に使われている。気もきいた。


「そのまんが見られるの?」

 咲菜が下をむいて携帯をいじると、トイレから戻ってきたれいらが後ろからひょいとのぞいた。声を出して読む。

「『ちびブタ野郎に彼女が出来た』?何これ?」

「やめてー!れいらちゃんー!!!」


 咲菜は便宜上彼と一応付き合うことになった後、自室のベッドの上をゴロゴロ寝返りをうちながら考えた。何度も自問自答してみた。

(ちょっと無理。さすがに無理!生理的にどうしても好きになれない顔だし、すごくいい人だけどタイプ真逆だしぜったいありえない)


 れいらが席に付いて興奮もおさまったので、真亜子は尋問を続ける。

「それでどうしたの?」

「どこかで言わないと、言わないと…ってずるずる続いたの。でも、会うたびにすっごい嬉しそうで言えないの。そ、そしたら…」

「そしたら!?」

「だんだん、自信満々になってきた」

「やぁだ!」

「でも…あんまり…いやな気しなかった。ちょっと、前よりだんだんかっこよくなってきたかも…なんて」

「えー!」

 後ろに反り返って笑い出したれいらを抑えて、真亜子がさらにぐぐっと前に乗り出す。

「いいじゃんいいじゃん、それで?」

「ちらっとよ?ちらっとだけ…」


 彼はメッセージのやりとりがうまかった。

 連絡事項は手短で的確、なのに事務的にはならない。

 咲菜はあまりメッセージを送りすぎないように、みずからに規制を義務づけて我慢するくせがついていた。

 律くんがうざいって思うから。

 しかし律くんとは違って、ちびブタ野郎の彼は既読無視など全くなかった。まめに返事を返してくる。忙しい時には忙しいと言う。

 咲菜はさびしい思いをすることが減った。





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