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その60 ちょっとだけ本気



 あと一息でセーレを捕まえてめでたしめでたしを目論んでいた僕の前に現れたレオバール。逃げ去る馬車を魔法で攻撃しようと思ったけど公王様に何かあっても困ると思い見逃すことにした。


 そんなレオバールと僕は――


 「さあ、アレンの装備を出せ!」


 「ちょっ!? それが人のものを頼む態度かい?」


 カン! ヒュ! ビュン! 


 「うるさい!」


 右袈裟、突き、回転しながらの胴への斬撃、と。速いけど見えないほどじゃないので、僕は致命傷を避けて最後の一撃をセブン・デイズで受け止めると魔法を放つ。


 ガキィン!


 「くそ、なぜ当たらない!?」


 「なんでだろうね! <ファイアアロー>!」


 「何!? チッ!」


 レオバールはすぐに僕の狙いに気づき、距離を取ってファイアアローを剣で振り払って打ち消した。


 「おお、レオスさんの魔法をかわしましたよ! やりますね」


 「剣聖は伊達じゃないってことね。一対一で戦うのは正直避けたい相手だもの」


 「……」


 ルビアはバス子に解説をし、エリィは黙って僕達の戦いを見ていた。レオバールが剣を構えなおして僕に訪ねてきた。


 「ここに来るまでの間レオスのことを色々聞いていたが、本当にお前だったとはな。俺の剣を防ぐとは正直、驚いた」


 「レオバールがそんなことを言うのは珍しいね? 手を休ませてくれたところでもう一度言うけど、さっきの公王様は魔族に操られている可能性が高いんだ。さっき僕が戦っていた白いローブの男、あいつの仲間は冥王が生きていると言ったんだ。そっちの事情は分からないけど、アレンの装備は持って帰っていいから、先に進ませてくれないかな?」


 カバンから光の剣を含めた装備を全部レオバールの足元の投げると、レオバールは構えを解かずに口を開いた。


 「……これはこれで返してもらう。だが、俺はエリィも連れて帰るつもりでここに来た。お前を倒して無様な姿を見せればエリィも考えが変わるだろう?」


 「へえ……」


 と、僕が目を細めて言い返そうとした時、ルビアが本気で怒った声でレオバールに詰め寄ってきた。


 「あんた、いい加減にしなさいよ! エリィはあんたのことが嫌いだって言ったでしょうが。それをいつまでもぐちぐちと……」


 「そうですよ。もしレオス君に何かあったら一生許しませんからね」


 「よくわからないですけど、面白そうなんであなたを馬鹿にしていいですか? 気持ち悪いし」


 「ふん!」


 ブオォン!


 「わわ!?」

 

 「ハッ!」


 レオバールは急に剣を振るい、剣圧がバス子を襲い、それをルビアがかき消した。


 「そのガキは魔族だな? レオスの話は半疑になったな。お前達も魔族に操られているんじゃないか? レオスがこんなに強いのもおかしい。……正体を現せ!」


 「レオバール!」

 

 ルビアが叫ぶもレオバールは止まらない。


 ガッ! ガキン! ガン!


 先ほどよりも強い攻撃を繰り出してくる!


 「”オーガスラッシュ”! ”炎荒斬”!」


 「結局こうなるんだね」


 「うるさいと言ったぞ!」


 僕も斬り返すが、伊達に剣聖を授かっているわけではないので、こちらの攻撃はあっさり受け止めてくれる。それならと、僕はセブン・デイズに魔力を込める。


 「”クリムゾンエッジ”!」


 「くっ! 国王からもらった魔剣か! そんなことができるとは!」


 今日は火曜の日なので火セブン・デイズから属性の技が発現し、レオバールが炎に飲まれる。そこへ、


 「《フレイム》!」


 エリィのフレイムがレオバールを追撃し、レオバールはごろごろと転がりながら炎を消してエリィを睨む。


 「ぬ! エリィ、何のつもりだ!」


 「何のつもりではありません、剣を収めてください! 公王様が城に戻ったら簡単に手を出せなくなるんですよ? 取り返しのつかないことになったら――」


 「俺に指図をするな! ”空刃”」」


 「きゃあ!?」


 「危ないエリィさん! 痛っ」


 「エリィ! バス子!」


 レオバールの技がエリィを襲い、バス子が抱えて空へと逃れた。だが、バス子は足から血を流し、エリィも腕がぱっくり切れていた。


 その瞬間、僕の中で何かが沸き上がる。


 「そこで大人しくしていろ。回復魔法で治せるだろうが。レオスを片づけたら――」


 「僕が何だって?」


 「!?」


 ゴッ!


 アクセラレータでスッとレオバールの横に剣を持った手でレオバールの頬を裏拳で殴ると、派手に吹っ飛んで木に激突する。

 

 「がはあ!? 何だと!? いつの間に――」


 「近づいてきたか、って? 嫌だなあレオバール、僕はずっと近くにいるじゃないか」


 「ごふ!?」


 剣の柄でレオバールのお腹を殴ると、ビシッっと鎧が砕けてその場に蹲る。


 「レオバールはエリィのことが好きなんだよね? どうしてケガをさせるんだい? 理解ができないんだけど?」


 ブン!


 「くっ!」


 ガキン!


 「手加減したとはいえよく止めたね?」


 「て、手加減だと……? 馬鹿にしやがって、もういい死ね! “獅子の牙”! この距離で神速の剣はかわせまい!」


 レオバールが持っている手持ちでは最強の技がゼロ距離で繰り出された。神速、神ね……


 「ははは! もらった!」


 「<インフェルノブラスト>」


 ズン……


 「ぐおおおお!?」


 必殺剣をすいっとかわし爆炎を叩きつけてやる。地面に転がるレオバールに僕は声をかける。


 「自分勝手な理屈で女の子をモノにしようだなんて、昔、僕がそそのかした人間が聖女を手に入れようとした時と同じだね。なるほど、あいつが怒るのも無理はないと思ったよ」


 「昔? 聖女? ごほ……何を言っている……う!?」


 レオバールが剣を杖にして立とうとするので、剣をセブン・デイズで弾きまた転がす。


 「昔、本当に大昔さ。かつて悪神と呼ばれていた存在が居てね? 世界を混乱に陥れたんだ。ここではないどこかで。そいつは倒され、自分のしてきたことを大層反省した。だから力があってもそれを振りかざすことはしないと決めていた――」


 「……レオス?」


 ルビアが冷や汗をかきながら僕を呼ぶ。大丈夫、ルビア達は心配しないで。僕はルビアへにっこりと笑いながらレオバールに告げる。


 「ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ本気を出してあげるよ。エクスィレオスと呼ばれていた悪神の本気ってやつを――」


 ゴゴゴゴ……


 僕の影が別の形を成していく。あまり思い出したくない姿だけど、これも元々の僕だ。目を背けるわけにはいかない。


 「な、何だ!? じ、地面が震えて……お前の仕業かレオス!」


 「それを言う必要はないよね? 徹底的に叩きのめしていあげるから反省しなよ! “ロスト・ジャッジ(必要のない審判)ロスト・ジャッジ”!」


 キィィン……


 僕の両手に光が収束し、それを放つ。

 

 レーザーとも言えるエネルギーが拡散し、レオバールへ直撃した!


 ドドドドドド!


 「ぐあああああああ! レオスゥゥゥゥ!」


 威力は相当下げているけど、無数のレーザーがレオバールの鎧を粉々にし、レオバールは全身から血しぶきを上げて前のめりに倒れた。


 「ば、かな……この俺がレオスなんぞに……」


 ドサリと倒れてそれっきり動かなくなった。


 「ふう……死なれても寝覚めが悪いから後で治してあげるよ」


 白目を剥いたレオバールを見て僕はそう呟いていた。こんなやつでも殺すわけにはいかないからね。

60話なのでちょっとだけ昔の話をば。


いつも読んでいただきありがとうございます!


【あとがき劇場】


『まあ勝てないよね』


100%無理だからね。あれで万分の一くらいだし。


『サクヤが勝てたのはベティちゃんもいたし、油断もあったからねえ。今のレオスは反省をしているから、こと戦闘においてはおいそれと崩せないわ』


おお、流石初代私の作品の女神。ちゃんと喋る時は喋るな


『何だと思ってんのよ!?』

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