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その57 ゲットだぜ!



 <火曜の日>


 「ふあ……さて、今日も仕入れからかなぁ……よいしょっと」


 「むにゃむにゃ……」


 「鍵をかけても入ってくるエリィって実は凄腕のシーフではなかろうか……?」


 僕の横でいつの間にか寝息を立てているエリィに嘆息し、僕はゆっくり指を外してから顔を洗い着替えると、コーヒーでも貰おうかと食堂へと向かう。エリィはもう少し寝かせていてもいいだろうし。


 「ルビア」


 「おはよー。エリィはそっち?」


 だよね? と、目で訴えてくるルビアに余裕で頷く僕。


 「うん。一体どうやって侵入してくるのか正直怖いんだけど」


 「気にしたらダメよ」


 身もふたもないことを言いながらルビアはコーヒーに口をつける。僕ももらって席に着く。

 

 「ふあー、美味しいね」


 「あんたコーヒー飲めなかった気がするけど……」


 「ふふふ、僕も大人になったんだよ」


 ふぁさ、と前髪をかき上げるしぐさをすると、


 「ふむ」


 と、ルビアが僕の横に来た。


 「な、なに? うわ!?」


 急にルビアに抱きしめられ、僕は豊かな胸に顔を挟まれてしまい、慌てて引きはがす。


 「何するんだよ!? 窒息すると思ったよ……」


 「鼻血出てるわよー。まだまだねレオス!」


 「もう16歳なんだけど……」


 くそ、からかわれていると思い鼻血を拭いて無言でコーヒーを飲んでいると、黒スーツの男が入ってきた。もちろんバンデイルさんである。


 「おう、居たか。足取り掴めたぜ。あ、コーヒーをくれ。砂糖多めでな」


 「流石、早かったですね! それで?」


 「魔族はちっと分からねぇが、公王様は奴隷商から数人奴隷を買って戻ったらしい。裏の件があった次の日……つまり昨日に町を出たと報告があった」


 「止めなかったの? あの魔族との繋がりを聞くべきだと思ったけど」


 するとバンデイルさんが声を潜めて僕達に言う。


 「……一応、俺の部下に見かけたら止めるように言っておいたんだ。気さくな人だから止めるくらいで怒ったりしないんだが、酷く冷たい目で『邪魔をするなら殺すぞ』と言われたそうだ。お付きの騎士も殺気立っていたから仕方なく通したって訳よ」


 顔を知っている俺でも無理だったろうな、と付け加えてコーヒーを口に運ぶバンデイルさん。僕はそれを見ながら訪ねる。

 

 「公王様、豹変しているってことですか?」


 「恐らく……ってことくらいしか分からねえ。あの人がこの町に来ていたのを知ったのは変装してからだし、話していないんだ」


 「あまりいい状況じゃなさそうね。今からなら間に合うかな? 追いかけましょう」


 「この前のセーレとかいう魔族も合流しているかもしれないしね。それに城へ入られたら迂闊に手が出せないし、さっさと追うのが正解だと僕も思う」


 「俺はこの町を離れるわけにはいかないから済まないが頼む。馬車はこっちで用意するから、昼までに出立の用意をしておいてくれ。熱っ!?」


 一気にコーヒーを飲み干し、舌をやけどしながら外へ出て行く。馬車が手に入るのはありがたいなあ。


 「それじゃ、みんなを起こしましょうか」


 「ベルゼラは大丈夫かな?」


 部屋へ戻り、僕はエリィを起こし、ルビアはベルゼラとバス子を起こしに行き、即座に準備をする。心配だったベルゼラは少し顔が青かったけど、何とか持ち直したようだ。


 僕はそれほど準備に時間がかからないので、この間に旅の準備を行うため市場に出ていく。


 そしてお昼前、宿の入口で僕達はバンデイルさんを待つ。


 「ば、馬車ですね……が、頑張ります……」


 「えっへっへ、歩かなくていいのは楽ですねえ。これも姐さんたちのおかげですね」


 「いや、ちゃんと働いてもらうからね?」


 「え!?」


 「御者はレオス君がやるんですか?」


 「うん。女の子にさせられないからね。あ、来たみたい、だ、よ……?」


 ガラガラガラ……


 僕は思わず言葉を詰まらせるなぜなら、


 「待たせたな! 馬は若い奴を選んできたから急げば追いつけるはずだ」


 「あ、はい、助かりますけど、荷台は……」


 僕が言うと、バンデイルさんは似合わない愛想笑いを浮かべながら頭を掻いた。


 「いやあ、ちゃんとしたヤツがなくてな。間に合わせで用意できたのがこれだったんだ」


 「ま、まあ、乗れるから大丈夫よ、うん」


 ルビアは冷や汗を出しながら屋根はあるけどサイドは破れた幌、全体的にくすんだ荷台を見ながらなんとか口を開く。


 「可愛いお馬さんですね! ちょっときついかもしれないけど頑張ってくださいね」


 ひひーん


 と、エリィに撫でられ喜ぶ馬。


 「こりゃ酷いですねえ。ま、でも楽させてもらいますよー。お馬さんもよろしくねー」


 ぶるるる


 もう一頭の馬がバス子の言葉に反応し鳴き声を上げた。


 「出発よ!」


 ルビアの声で女性陣が乗り込むと、僕は御者台に座り手綱を握る。するとバンデイルさんがタバコに火をつけて見上げながら言う。


 「馬車はお前たちにやるから返さなくていいぜ。公王様のこと、頼んだ。何かあればギルド経由で教えてくれ」


 「ありがとうございます! それじゃ!」


 ガタゴト……


 馬を歩かせて進みだす。


 バンデイルさんは見えなくなるまで見送ってくれ、僕達はコントラクトの町を出立した。


 次は公国都市かあ。父さんと母さん元気にしてるかな? 四年も姿を見てないし、心配しているだろうなきっと。そんなことを考えているとルビアがベルゼラに何やら訪ねていた。


 「ねえ、あのセーレとかいう魔族、ベルゼラは知らない? バス子を「高位魔族」って言ったんだけど、大魔王の娘であるあなたなら何か知ってるんじゃない? それと冥王。あいつが暗躍している可能性があるわ」


 単刀直入ー!? 様子見とかそういうの無しで聞いちゃったルビア。ちょっとドキドキしながら聞き耳を立てていると、


 「すみません、私はお父様と違って魔王や他の魔族と顔を合わせる機会が無かったのでちょっと分かりません。名前も聞き覚えがありませんね」


 「えっへっへ、わたしも知りませんねえ。向こうはわたしを知っていたみたいですが、まったくもって見たことも聞いたこともありません。でも戦っていて分かったのは、恐らくあいつの能力って転移系の上位魔法っぽかったですけどね。空間へ消えたのは驚きましたけど」


 バス子が手を広げてそんなことを言い、エリィが続けた。


 「そうですか……何かわかれば対策が立てられると思ったんですけど……」


 「すみません、お役に立てず」


 ベルゼラが困惑した表情で俯くと、エリィが元気づけていた。まあ分からないものは仕方ないと、馬車で装備のチェックなどを始めるリビア達。新しく買ったベルゼラの装備もきちんとつけていた。


 しばらく進んでいると、目の前に狼が飛び出してきた。


 「おおう!? どうどう!」


 ひひーん


 ぶるるる


 「ど、どうしたの急に!? 魔物!?」

 

 「い、いや、狼が急に……あ!」


 狼がくるりと一回転すると、見慣れた姿に変化した。背中には子狼が乗っていた。


 「レジナさん!」


 「ああ、追いついた……! 匂いであんた達だと分かったよ。あんた達シロップを知らないかい、昨日の夜、急に居なくなったんだ!」


 「ええ!?」


 レジナさんの悲痛な叫びに僕達は驚愕した。








 ◆ ◇ ◆




 <レオスの故郷>



 「……もう一か月くらい経つのにレオスが帰ってこないじゃないか!」


 「ははは、僕と一緒で顔がいいからね。もしかしたら女の子といちゃいちゃしているかもしれないよ」


 「あんたと一緒にするな! ちゃんと乗合馬車で帰ってくるのかな……いっそこっちから迎えに行くべきか……」


 優秀な冒険者でもあったレオスの母、グロリアは心配のあまり家を飛び出そうとした。それを父であるアシミレートが笑いながら制する。


 「大丈夫だよ。僕達の息子だし、案外四年間の旅で強くなっているんじゃないかな? グロリアの血を引いていたら剣技は優れていると思うし」


 「そ、そうかな? へへ……」


 「僕の血を引いているからハーレムも考えられるけどね」


 「レオスはそんな子じゃない!」


 


 「またやってるのかい? 懲りないなあの夫婦……」


 「今日は買い物できそうにねぇ、明日にしようぜ」


 

 しかしグロリアの思いとは裏腹に、果たして父の言葉が当てはまっているレオスであった。

移動手段をゲットしたレオス達一行。彼らを待ち受けるものとは……?


いつも読んでいただきありがとうございます!


【あとがき劇場】


『ここで移動手段か。レオバールはどのあたりかしらね』


実はもう結構近いので、そろそろかな? あの男も結構キーマンなんだよね


『それよりワイン頂戴ワイン。休みでしょ?』


お前に休みなどない……


『え!?』

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