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前世は悪神でしたので今世は商人として慎ましく生きたいと思います  作者: 八神 凪
第四章:オークション

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~Side4~ レオバール



 「……どういうことだ? レオスがあちこちで持ち上げられている話ばかりが出てくるとは」



 ――ここはフォーアネームの町にある宿。

 

 馬車を使ってここまで一気に来たが、腑に落ちないことが多々あり、酒を飲みながら独り呟く。



 城を出たレオバールはまず、一番近いミドラの町に立ち寄り情報収集をするためギルドに立ち寄ると、


 「ああん? またレオスか! あいつは実家に帰るって出て行っちまったよ。そういや拳聖と賢聖二人もあいつのことを聞いて来たな。お前さん、剣聖だって? 商人のあいつに用があるのか?」


 「エリィとルビア、やはり追いかけているのか……」


 レオバールが目を細めていると、横に居たミュールが大げさに手を上げながら言う。


 「フフフ、違いますよギルドマスター。きっとレオスさんのスカウトじゃないですか? あれだけの素質、剣でも魔法でも大成しますし! マスターだってウチで働いてほしかったんでしょ?」


 「まあな。ああ、だからあの二人も追いかけているのか……今はCランクだけどAは絶対になれるしな」


 「A……!? ちょ、ちょっと待ってください、レオスですよね? ……こう、髪の毛を後ろで縛って小柄な……」


 レオバールは茶を吹き出しながら聞き返すと、ギルドマスターのヒューリは気にした風もなく口を開く。


 「そいつで間違いないな。何でレオスを知っているのか分からないが、あいつやっぱり有名人なのか? 聖職がこぞって追いかけるなんてやっぱりタダ者じゃないんだな」


 「……どこへ行ったか分かりますか?」


 「実家に帰るとしか聞いてねぇな」


 「ラーヴァ国出身ですし、フォーアネームの町経由じゃないですかね?」


 ミューレがそういうと、援護をするように男女混合のパーティが会話に紛れてきた。


 「あいつは凄いですが、ちょっと抜けているところがありますからね。剣聖様のようにしっかりした人がついていた方がいいかもしれませんね」

 

 「お、エコール。戻ったのか」


 「そうですよー。セラなんて、エリィさんが居なければレオス君についていくつもりだったんだしね」


 「ちょっとリラ……」


 レオバールが眉をピクリと動かし、勤めて冷静に、笑いながら訪ねる。


 「君達もレオスを?」


 「は、はい……試験で一緒でした。とても強くて、レオスさんがいなければ私は今ここに居ないと思います……」


 「なるほど……色々ありがとうございます、俺はこれで」


 「レオス君をよろしくね~」


 能天気なミューレの声を背に受け、レオバールはギルドを後にした。


 「レオス、どうなっている? 間違いなくあいつはただのガキだったはずだが……」



 ◆ ◇ ◆



 「あーあ、これでアタシ達の出番も終わりかあ」


 「何いっとるとね!? ……レオスもこれから大変だろうなあ」


 「まあ、国に仕えるとかそういう道もあるし、勧誘も凄いだろうな。あーやっぱり引き留めるべきだったか……」


 「まあまあ、エコールさんやリラさん、セラさんも頑張っていますしいいじゃありませんか!」


 「任せてください! レオスとパーティを組んでから調子がいいんですよ。明日もマスターフロッグを軽く倒してきますって!」


 「毒があるから気を付けてくださいねー♪ あら? いらっしゃいませ!」


 「すみません、少しレオス、という人についてお伺いしたいんですけど……」


 「またか。あいつ、どうなっちまうんだろうなあ」


 「い、今からでも追いかけますか?」


 「そんなことをしても出番は増えないってセラ」


 「だから何をいっとるとやリラは!?」



 ◆ ◇ ◆



 レオバールはさらに馬車を走らせ、すぐにフォーアネームの町へと辿り着く。


 「冒険者になっているならやはりギルド、か。すまんが、待っていてくれ」


 「は」


 随伴してくれている騎士へ一言声をかけてギルドへと入っていくと、人が集まりざわざわとしているところだった。うるさいな、と思いつつもレオバールは受付に声をかけた。


 「すまない、レオスという少年について少し訪ねたい」


 「おや、レオスさんのお知り合いですか? マスター、レオスさんのことを聞きたいって人が来ていますよ」


 「(名前を出しただけで分かるのか……? あいつは一体何をしている?)」


 「俺はダッツだ、見かけない顔だがどちら様で?」


 「俺はレオバールと言います。大魔王討伐をした剣聖と言えばお判りになりますか? 身分はこれで――」


 と、ダッツへギルドカードを出し、ダッツは頷きテーブルへ案内した。


 「それで――」


 と、レオバールが聞きたいことを1聞くと10返ってくるという状態でさらなる驚愕な話を聞くことになった。掻い摘んで説明された時は流石のレオバールも冷や汗をかく。


 「魔族が領主を殺そうとしてそれをレオスが撃退した」


 「(短すぎる……! もっと詳細を聞かせてくれ!)」


 「まあ、そんなわけでようやく回復した領主が救出に駆け付けた俺達に晩餐会を開いてくれる手はずになってるんだ。レオスの知り合いなら参加しないか? あいつさっさと出ていきやがってな……剣聖なら大歓迎だ」


 どうする? と、レオバールは考える。領主とかかわりがあるなら話を聞ける可能性は高い。レオスが死のうがどうでもいいが、大魔王を倒しているのに魔族が事件に絡んでいるのも気がかりだ。


 しかし――


 「いえ、俺は先を急ぎたいので今回は遠慮をさせていただきます」


 「そうか。レオスに会ったらまた遊びに来るように伝えてくれ」


 「ええ」


 にこりと笑い、レオバールは立ち去ると、馬車に戻りながら考える。


 「(どこに行ってもレオスレオスともてはやされているとは。魔族を撃退したのもおかしい。あいつはスライム一匹倒せないどんくさいやつだったのに、まるで別人……)」


 そこでレオバールはあることを考える。


 「もしや本当に別人だったりしないか? 魔族が化けているとか……いや、なら仲間の魔族を撃退は……いや、カモフラージュで」


 疑心暗鬼になりすぎたレオバールはぶつぶつと推論を呟きながら馬車へ戻る。


 「レオバール様、レオス殿はすでに町を出ているようです。コントラクトの町へ向かったという情報が乗合馬車の男から聞けました」


 「助かる。というかもうこの国を出ているのか」


 「そのようです。エリィ様やルビア様も目撃されていました」


 「分かった。では、ここから先は俺一人で行く。他国まで行く予定はないだろう?」


 「そうですね……申し訳ありません。もし国を出るなら馬車は渡すように言われているので、お持ちください」


 「ああ、そうなのか。国王にお礼を言っておいてくれ」


 「では、私はこれで! ゴブ運、いえ、ご武運を!」


 「さっさと行け!」


 なんだゴブ運って……とイラ立ちながらレオバールはコントラクトの町へと向かうのだった。

レオバール、久々に出番が!


いつも読んでいただきありがとうございます!


【あとがき劇場】


『おお、ストーリー男が出てきた……』


ストーカーな。お察しだと思うけど、公国都市でそこそこ決戦かな?


『レオバールがエリィに汚く罵られぼろ雑巾のようになるのね』


どうしてそれでワクワクできるんだお前は……?

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